1998年に発売された『バイオハザード2』。ラクーンシティで繰り広げられる惨劇の背後には、ある天才科学者の存在があった。
悪いが、私の人生そのものとも言える研究を、そう簡単に渡すわけにはいかない……。
その名は――ウィリアム・バーキン。
アンブレラ社で「Gウィルス」を生み出した彼は、科学者としての野心と歪んだ執念によって、物語を大きく狂わせる存在となる。本記事では、彼の人物像や物語に与えた影響を改めて掘り下げていきたい。
かつてアンブレラ社に所属していた天才研究者。15歳という若さでアンブレラ社に入社し、博士号を取得するほどの天才児であった。
研究分野はウイルス学・生物兵器開発。シリーズ1〜3作目のキーパーソンとなる「t-ウイルス」の研究に加えて、自らが中心となり「G-ウイルス」の開発に関わっている。
研究施設では、アルバート・ウェスカー(友人かつライバル関係にあった模様)と共に“T-ウイルス”プロジェクトに参加しており、組織内での期待値・重責も大きかったことが推察される。
この“天才”という設定が、後述する「プライド」「野心」「転落」の起点になっている。“才覚=自分の価値”と捉えてしまった研究者は、たとえ組織に迎えられても、組織の歯車として扱われることに葛藤を抱えやすくなる。
ウィリアムは、自分の研究が組織(アンブレラ社)から正当に評価されていないと感じ、昇進を拒まれたことを契機に反発し、対立が表面化する。
研究においてはプライドが非常に強く、ライバル研究者(アレクシア・アシュフォード等)に焦りや嫉妬を感じていたともされる。
組織の意図(ウイルスの軍事転用・利益追求)と、研究者としての“自分の成果”への執着が交錯し、ウィリアムは「自分の研究を守る、自分の名前を残す」という方向へ傾いて行く。
ウィリアムは妻 アネット・バーキンと娘シェリー・バーキンを持つ一人の父親という側面もあった。
しかし、“研究成果第一”の姿勢ゆえに、娘を研究・実験対象とすることをためらわなかった・ためらえなかったという側面もあったといい、家庭も顧みなかったと言う。
少なくとも、娘がG-ウイルスのキーパーソンとなる存在として扱われ、父としての“守る役割”と、研究者としての“犠牲にする役割”の狭間に立たされることになる。
ウィリアムは既存のT-ウイルス研究が限界に達していたと感じ、より強力な変異ウイルス(G-ウイルス)を模索する。
この過程で、『免疫が備わる個体』=研究における“難関”を克服するため、ヒト卵子・爬虫類DNAなどの異種融合実験を行った記録が残っている。要するに人体実験も厭わなかった。
研究が停滞し、「自分が優れている」という誇りを守るために倫理を逸脱する道を選ぶ。これは「科学の暴走」「人間としての限界を越える試み」の象徴とも言える。
そしてついには、自らが注射して変異体となり、“自分の発明の犠牲者”となるという究極の選択を取ります。
注射後、ウィリアムはG-ウイルスの変異により次第に人としての形を失って行く。最終形態では巨大化・多腕化・眼球構造の異常など、もはや人間とは言えない姿へ。
その一方で、変異体へと進行する過程で「シェリー」という断片的な人間の言葉・感情も残っていたとする考察も。 つまり、「ウィリアム=怪物」ではなく「ウィリアムが怪物へ落ちていった存在」であることが、彼をただの“悪役”以上に印象深くしている。
1998年
誰にもGウイルスを渡しはしない。これは夫が残した“遺産”なのだから!
ウィリアムの妻。バーキンの家族として重要な人物であり、ウイルス研究者としても活動している。
アネットはアンブレラ社の研究者で、ウィリアムとは同じウイルス研究の現場で出会ったとされる。
家庭的な関わりだけでなく、ウィリアムの研究(特にGウイルス)に深く関与しており、「夫の成果を守る立場」でもある一方、ウィリアムが変異を起こした後には彼を止めようとする動きも見せる。
夫を愛していながらも、すでに人ではなくなったウィリアムを「止めなければならない」と覚悟する姿勢が描かれおり、家族愛と科学者としての責務の二面性が出ているキャラクターである。
また、ウィリアムとアイアンズ間の連絡役も担っていた。
ウィリアムとアネットの間に産まれた一人娘。
シェリーはウィリアムの研究成果(Gウイルス)に巻き込まれる形となり、父の変異体・事件の中で重大な役割を果たす。
アンブレラ研究員かつS.T.A.R.S.アルファチーム隊長。ウィリアムとは研究面での同僚・ライバル・友人関係にあったとされる。
ウェスカーもまた同じ研修施設/アークレイ研究所に配属された若き研究者で、ウィリアムと同時期に研究体制に組み込まれていた。
二人ともウイルス研究(t-ウィルス)という重大プロジェクトに関わっており、ウェスカーはウィリアムの成果を利用・あるいは継承しようとする動機を持っている。
また、ウェスカーがアークレイ研究所にてタイラントの攻撃によって重傷負った際に、自身に投与したウィルスはウィリアムから託されたものである。
黙れ! ……アンブレラの怪物どもが、私の美しい街を滅茶苦茶にしやがった……! 俺がこれまでどれだけ尽くしてきたと思ってるんだ!? それでこの仕打ちかよ!
ラクーン警察署長。
ウィリアムの研究所・アンブレラ社と深く繋がる警察署長として、ウィリアムやアンブレラの活動を裏から支えていた疑惑がある人物。
アンブレラ社との癒着・賄賂関係が描かれており、ウィリアムの研究の“隠蔽”あるいは“調整役”としての機能を果たしていた。
アイアンズは毎月一定額の賄賂を口座から受け取り、研究施設(NEST への通路・下水道警備)に警察官を割り当てるなどの便宜を図っていたとされている。
科学が人間を超えた瞬間、そして親が子を守れなかった瞬間――
ウィリアム・バーキンの悲劇は、ただの“怪物化”ではなく、才能・野心・家族・倫理が一気に崩れた結果である。
研究が生み出したものが、創造者自身を蝕むという皮肉。
『もしあなたがあの場にいたら、どこで歯止めをかけられただろうか?』