【ポケモン赤緑】ニビシティとは?タケシのジム・博物館・街の特徴を詳しく解説!

ポケットモンスター 赤・緑
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ポケモン赤・緑の「ニビシティ」を徹底解説

ポケットモンスター 赤・緑』(初代ポケモン)に登場するニビシティは、物語序盤で主人公が訪れる重要な街である。

カントー地方の北西部、大きな岩でできた山のふもとに広がる静かな石造りの街であり 、ここで主人公は初めてポケモンジムに挑戦することになる。

ニビシティは冒険の転機となる場所であり、その地理構造から演出、登場人物や音楽に至るまで、数多くの魅力と意義が込められている。

本記事では、ニビシティをあらゆる観点から掘り下げて解説して行く。

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地理的位置と街の構造

ニビシティはカントー地方マサラタウン・トキワシティを北に進み、トキワの森を抜けた先に位置する街。街の南側入口付近にはポケモンセンターとショップが並び、旅人を迎え入れる配置。

街全体の構造はシンプルで、建物の数も多くはない。その分、初めてのジム戦に集中しやすいレイアウトになっている。

主要な施設としてはポケモンセンター、フレンドリィショップ(どうぐ屋)、そしてジムリーダー・タケシが構えるニビジムがある。

街全体は灰色がかった岩石のイメージで統一されており、建物の屋根も落ち着いた灰色でデザインされている。これは街の名前「ニビ(鈍色=灰色)」を反映したものでもある。実際に、街の周囲は大きな岩山(おつきみ山)に囲まれており、町全体が石造りの地面に根付いているかのような雰囲気を醸し出している。

ニビ科学博物館

街の北側には『ニビ科学博物館』があり、化石や宇宙に関する展示が行われている。ゲーム内でも珍しく入館料(50円)が必要な施設となっている。

館内ではプテラカブトプスの化石標本、月の石の模型、宇宙ロケットの模型などが展示されており、訪れたプレイヤーにポケモン世界の科学的側面を垣間見せてくれる。

博物館では父子連れのNPCが「いつか月に行きたい」と語るなど、宇宙への夢を語るセリフもあり、序盤にしてロマンを感じさせるスポット。

また博物館の裏には小さな木が生えており、物語後半で秘伝技『いあいぎり』を習得すると裏口から無料で入ることもできる。

街の名産品としては「ニビあられ」というあられ餅(米菓子)があり、ゲーム『ピカブイ』(Let’s Go ピカチュウ・イーブイ)ではポケモンセンターで1日1個限定で購入できる小ネタもある。

このようにニビシティは、小ぢんまりとしながらも博物館やジムといった特徴的な施設が集まり、冒険の要所としてプレイヤーを迎え入れる構造になっている。

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初のジム戦と主人公にとっての冒険の転機

ニビシティ最大のイベントは、何と言っても主人公にとって初めてのジム戦が行われること。ポケモンリーグへの挑戦には各地のジムバッジを集める必要があるが、その第一歩となるのがこのニビジムでの勝利。

ジムリーダーのタケシはいわタイプのポケモン使いとして知られており、イシツブテイワークといった堅牢なポケモンを繰り出してくる。序盤に手に入るポケモン達にとって岩タイプは高い防御力とタイプ相性から手強い相手であり、プレイヤーはここで初めて本格的な試練に直面する。

特に、最初に選べるパートナー(いわゆる御三家)のうちヒトカゲを選んだ場合、タケシ戦は大きな壁として立ちはだかることで有名。ヒトカゲのほのお技は岩タイプに効果が薄く、敵のこうげきにも耐えにくいため、このままでは苦戦は必至。

そこでプレイヤーはトキワの森やその先の草むらで新たなポケモンを捕まえたり、レベル上げや進化によって突破口を探ることになる。

例えば、バタフリーに進化したキャタピーでエスパー技「ねんりき」を使ったり、ニドラン♀に「にどげり」(かくとう技)を覚えさせるなど、タイプ相性を意識した戦略が必要になってくる。

この過程で、プレイヤーは「岩には水や草タイプが有効」といった基本的な相性の概念や戦術を学ぶことになる。実際、ゲームボーイ版『ピカチュウ版』では主人公のピカチュウが岩タイプに苦戦するため、近くの草むらでナゾノクサ(くさタイプ)やマンキー(かくとうタイプ)を捕まえて対策するプレイヤーも多くいた。

このようにニビジムでのタケシ戦は、冒険における最初の難関であり、プレイヤーの成長を促す転機となっている。

初めてジムリーダーに勝利し「グレーバッジ」を獲得すると、主人公は公式に実力を認められたトレーナーとして一歩踏み出したことになる。

タケシからは賞品としてわざマシン「がまん(相手の攻撃に耐えた後倍返しする技)も手渡され、ジム戦を制した達成感とともにポケモンバトルの奥深さを実感できる。

まさにニビシティは、冒険の序盤における大きなターニングポイントと言える。

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ゲーム進行上の役割と仕掛け

ゲームデザインの面でも、ニビシティは重要な役割を担っている。初代『赤・緑』では、ニビジムのタケシに勝利しなければ次のエリアへ進むことができない仕掛けが施されていた。

具体的には、街の東側から3番道路に抜けておつきみ山方面へ向かおうとすると、ジム戦をクリアしていない段階では見知らぬ男性NPCが道を塞ぎ、「まずはポケモンジムに行かないといけないよ!」といった趣旨で主人公をジムまで連れて行ってしまう。このNPCによって半ば強制的にジム戦へ誘導される仕掛けは、当時のプレイヤーには印象深い演出だった。

結果として、ニビシティはプレイヤーの旅の方向性を示す関門のような役割を果たしている。

タケシを撃破してバッジを得ると、先ほどまで通れなかった3番道路への道が晴れて解放される。これはゲーム上、プレイヤーが一定の課題(ジム戦)をクリアしたことによって次のステージに進む資格を得たことを示す巧みなデザイン。

また、ニビシティの博物館もゲーム進行に絡む興味深いポイント。一見ストーリーには直接関係のない施設ですが、ここで展示されている古代ポケモンの化石は後に物語後半で重要アイテムとなる「ひみつのコハク」(プテラの化石)入手や、グレンタウン研究所での化石復元イベントへの伏線となっている。

初代およびFRLGでは博物館内にプテラカブトプスの化石が飾られており、プレイヤーは「化石からポケモンを復元できるかも」という世界観を想起させられる。

実際、数年後を描いた『金・銀・クリスタル』ではニビシティの博物館は改装中で閉鎖されているが、その代わりタケシの手持ちポケモンにオムスターカブトプスといった化石由来のポケモンが加わっている。これは博物館の存在や化石ポケモンとの関連性を、ゲーム内で間接的に表現したものと言えるだろう。

更にリメイク版の『ハートゴールド・ソウルシルバー』では、改装を終えたニビ博物館でプレイヤー自身が化石復元を行えるようになるなど 、シリーズを通じてニビシティ博物館の扱いにも変化が見られます。

このように、ニビシティはゲーム進行上プレイヤーの腕試しの場であると同時に、先の展開を示唆する設定や仕掛けが散りばめられた街でもある。プレイヤーはニビシティを境にして、本格的な旅路へと踏み出していくことになる。

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関連人物

タケシ

ニビシティを語る上で欠かせないのが、ここで出会う人々。まず何と言っても中心人物はニビジムのリーダー・タケシだろう。

タケシは「強くて硬い石の男」とも称される岩タイプ使いの青年で、寡黙で真面目そうな外見ながら根は面倒見の良い人格者。ゲーム中では初のジムリーダーらしく堂々とした態度で主人公にバトルを挑んで来る。

手持ちポケモンはイシツブテイワークで、いずれも高い防御力と岩・じめんタイプの組み合わせによる耐性が特徴。

タケシとの会話シーンは短いながら、「俺は岩タイプのポケモンで世界一を目指す!」(意訳)といった趣旨の発言から、彼の信念と誇りが感じられる。勝負に敗れると潔く主人公の実力を称え、グレーバッジと技マシンを授けてくれるあたり、ジムリーダーとしての器の大きさもうかがえる。

“100万光年”の男

ジム内部にはタケシの他に1人、ジムトレーナー(キャンプボーイ)が配置されている。彼は挑戦者にいきなり戦いを挑んでくるのだが、その際に発するセリフがシリーズファンの間で有名。

お前がタケシさんに挑むには10万光年早いぜ!」といった内容になっており、後のリメイク版でも修正された「ライトイヤー」ネタとして知られている。初見プレイヤーには「光年」というワードのインパクトが強かったことだろう。

この青年トレーナーとの戦い自体は比較的容易だが、彼とのバトルを経てジムリーダー戦に臨む流れは緊張感を高めてくれる。

ニビ科学博物館にいる人たち

ニビシティで出会う他の人物としては、前述のニビ科学博物館のスタッフや見学者たちが挙げられる。

博物館の入口では受付係の研究員が「入館料50円だよ」と声をかけ、さらに裏口から入ろうとすると「ちゃっかり者だね」と冗談めかして注意してくる。

館内では白衣を着た科学者が化石の説明をしていたり、親子連れのNPCが月面着陸の話題に触れたりしている。

中でも印象的なのは、おそらくアポロ計画をモデルにした「1969年7月20日、アメリカの宇宙飛行士が月面に立った」という趣旨のセリフで、現実の人類初の月面着陸を示唆する内容(初代英語版では父親NPCが「そのニュースを見るためにカラーテレビを買ったんだ」と語る場面もあるらしい)。

こうした細かな台詞回しによって、ポケモン世界にも我々の現実と地続きの歴史や科学技術が存在することが示唆され、プレイヤーに驚きを与えた。(多分)

博物館2階ではプテラカブトプスの大きな化石模型が展示されており、説明員が「太古のポケモンだが今は絶滅している」と解説している。子どもNPCは「僕も大人になったら宇宙へ行きたいな」と夢を語っている。

これら博物館の人々との会話は物語の本筋には絡まないものの、ゲーム世界の奥行きを感じさせてくれる名脇役たちと言える。

フレンドリィショップの少年

最後に、ニビシティのフレンドリィショップにいる少年NPCにも触れておこう。初代およびFRLG、ピカブイでは、ショップ内の少年が「インチキくさいおじさんから500円でポケモンを買ったけど弱かったよ…」とボヤいている。

これはこの先の4番道路にいるオヤジが500円でコイキングを売りつけてくるイベント(通称コイキング商法)を示唆したもの。

彼の嘆きは「安物買いの銭失い」を体現したエピソードだが、『金・銀』および『HGSS』では同じ少年が立派にそのコイキングを育て上げ、ギャラドスに進化させていたという微笑ましい後日談もある。

ニビシティではこのようにモブキャラクターにも小さなストーリーが用意されており、街全体に息遣いを与えている。

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ニビシティのBGM:音楽の特徴と印象

ニビシティで流れる街のBGMは、初代ポケモンを語る上で欠かせない名曲の一つ。

公式サウンドトラックでは「ニビシティのテーマ」と題されているこの楽曲は、穏やかで落ち着いた旋律が特徴的。テンポはゆったりとしており、序盤の緑豊かなマサラタウンやトキワシティから一転、少し寂しげで幻想的な雰囲気を醸し出している。

これは大都会でも田舎村でもない山あいの静かな町というニビシティの情景によくマッチしており、プレイヤーに「ここで一息つける安堵感」と「これから先の冒険への期待感」を同時に抱かせる不思議な曲調である。

実際、ゲーム中でもトキワシティからニビシティに足を踏み入れた瞬間、BGMがこのメロディに切り替わることで「新しい町に来たんだ」という実感が湧くもの。

興味深いのは、この「ニビシティのテーマ」はニビシティ専用ではなく、カントー地方の複数の街で共通して使用されている点。初代『赤・緑・青・ピカチュウ』では、ニビシティのほかトキワシティ(序盤の町)やヤマブキシティ(中盤の大都市)でも同じBGMが流れる。

さらに、一部のゲート(道路と道路を繋ぐ関所)や殿堂入り直前の部屋でも、この曲のバリエーション(テンポを落としたスローver.など)が使用されている。

当時のゲーム容量の都合もあり一つの曲が複数箇所で使い回されていたが、結果としてこのメロディは「カントー地方の静かな町」を象徴する汎用テーマとしてプレイヤーの記憶に刻まれることになった。

例えばヤマブキシティは大都会でありながらロケット団支配下で沈鬱としている場面でこの曲が流れるため、「活気を失った街の寂しさ」を演出する効果もあった。一方でニビシティやトキワシティのように穏やかな町では、その静けさや素朴さを表現している。

このように、同じBGMでも場所や状況によって様々な聞こえ方をする点は、ゲーム音楽の奥深さと言えるだろう。

音楽的な特徴として、ニビシティのテーマは短いイントロの後に哀愁漂う主旋律が流れる構成で、どこかノスタルジックな印象を与える。作曲者は増田順一氏で、ゲームボーイの限られた音源チャンネルでありながら豊かな和音を奏でる名曲に仕上がっている。

特に、メインメロディの後半で繰り返されるフレーズは心に残りやすく、プレイヤーによっては「いつまでも聴いていられる」「安心感がある」と評されることも多いようだ。初代をプレイした人にとっては、まさに序盤の旅情を思い出す郷愁の曲だろう。

シリーズが進む中で、この曲も様々にアレンジされて来た。たとえばリメイク版の『ファイアレッド・リーフグリーン』(第3世代)では、GBA音源用に原曲の雰囲気を崩さない形でややリッチな編曲が施されている。低音域が強調され、ドラムパートが追加されたことで、原曲よりも少し明るく勇ましい印象になった。

ハートゴールド・ソウルシルバー』(第4世代)ではDS音源で再アレンジされ、作曲家の一之瀬剛氏や橘田拓人氏らによってカントー地方の音楽がリメイクされている。ニビシティのテーマも音色が刷新され、ストリングス風のシンセや柔らかなフルート音で演奏されることで、より深みのあるサウンドになった。

さらに近年の『Let’s Go ピカチュウ・イーブイ』(第7世代)では、大幅な音質向上とともにオーケストラ調のアレンジへと生まれ変わった。木管楽器やピアノの音色が前面に出ており、原曲の持つ静謐さはそのままに、より壮大で美しい楽曲としてリスナーを魅了する。

またゲーム本編以外でも、この曲は公式・非公式問わず愛され続けている。アニメ版では背景音楽として頻繁に使われることはなかったものの、サウンドトラックにはインストゥルメンタル曲「ニビシティ」が収録されており、劇中でさりげなく流れる場面もある。

ポケモン関連のコンサートやイベントでも、カントー地方の楽曲メドレーの一部として演奏されることがある。ファンによるピアノやオーケストラアレンジ、果てはローファイリミックスまで多数のカバーが作られており、そのメロディラインの美しさが世代を超えて支持されていることが窺える。

総じて、ニビシティのBGMはシリーズ音楽の中でも象徴的な一曲であり、小さな街に流れる大きな思い出として、多くのプレイヤーの心に残り続けている。

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シリーズにおける象徴性と演出

ニビシティは、ポケモンシリーズ全体の文脈で見ても象徴的な意味を持つ街である。

まず第一に、「序盤のジム戦が行われる街」という位置付け自体がシリーズの基本フォーマットを確立した。以降の世代でも、第1ジムは序盤の関門として位置付けられることが多く、プレイヤーにタイプ相性の大切さや戦略性を教える場となっている。

例えば第5世代『ブラック・ホワイト』では最初のジムリーダーが主人公の選んだ御三家に対して有利なタイプを使う仕掛けになっていたが、それも元を辿れば初代でタケシ(岩)相手にヒトカゲ(炎)が不利になる構図から学んだ開発者の工夫とも言えるだろう。

ニビシティ=最初の試練の場という図式は、プレイヤーに「ここから本格的な冒険が始まる」という心構えをさせるシリーズ恒例の演出として定着して行った。

また、ニビシティは難易度調整の観点でも語られる街である。前述のように、手持ちによっては苦戦を強いられるタケシ戦は、当時のRPGとしては珍しく序盤から油断ならない難易度だった。

これはポケモンというゲームが単純なレベル上げだけでなく、「タイプ相性」や「仲間集め」によって道が開けることを雄弁に物語っている。

そしてタケシ戦を乗り越えたプレイヤーは以降の冒険でも「困ったらタイプ相性や戦術を見直す」ことを自然と覚えていく。最初の壁であり登竜門として、ニビシティはポケモンのゲームデザイン哲学を象徴しているとも言える。

街の構造自体にも演出的な意味が込められている。ニビシティは前後を森林と山岳に挟まれた小さな町であり、これはまさに「自然から文明への橋渡し点」を表現している。

マサラタウン〜トキワシティ〜トキワの森と、自然豊かなエリアを抜けてきた主人公は、ニビシティで初めて文明的な建物(博物館)や人々の営みを目にする。

博物館で宇宙や古代のロマンに触れ、ショップでは人々の日常会話を聞き、ジムでは公式なポケモンバトルに挑戦する――これは主人公が一人前のトレーナーの世界に踏み込んだことのメタファーでもある。

ニビシティの次に待つハナダシティ以降は街の規模も徐々に大きくなり、物語も複雑さを増して行く。そうした意味で、ニビシティはチュートリアルから本篇への移行点として機能し、ゲームの難易度曲線やシナリオ展開の節目を演出している。

シリーズにおけるニビシティの象徴性は、他メディアでの扱いにも現れている。例えばポケモンカードゲームの初期シリーズでは「ニビシティジム」「タケシの○○(ポケモン名)」といったカードが登場し、最初のジムリーダーであるタケシと彼の街がフィーチャーされた。

多くのプレイヤーにとってタケシとニビシティは「最初に倒したジムリーダーと街」という記憶として刷り込まれているため、シリーズ全体を見渡しても特別な存在感がある。

公式の攻略本やガイドブックでもニビシティの項目には「最初のバッジを手に入れよう!」などと強調されており、読者の気持ちを高める構成になっていた。言わばニビシティとは、プレイヤーの成長物語における第一章のクライマックスであり、その演出はゲーム内外で周到に準備されていたのである。

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他作品・メディアにおけるニビシティ

ニビシティとタケシは、ゲーム本編を飛び出して他のメディア展開でも広く扱われている。特に有名なのがテレビアニメ『ポケットモンスター』(無印編)での描写だろう。

アニメ第5話「ニビジムのたたかい!」にて、主人公サトシはニビジムでタケシに挑むが、ゲーム以上にドラマチックな展開が繰り広げられた。

アニメ版のタケシはゲーム同様岩タイプ使いのジムリーダーだが、その背景には大家族の長男としての苦労が描かれている。両親が家を空けてしまったため幼い弟妹たちの世話を一手に引き受けており、ジムリーダーである傍ら家事や育児に追われているという設定。

サトシとのジム戦でも当初は圧倒的な実力差でサトシのピカチュウを追い詰めたが、バトルの最中にジムのスプリンクラーが作動してイワークが水を浴びたことで形勢が逆転する。

サトシは勝機を得るも「こんな形で勝ってもいいのか」と葛藤し、一度勝負を中断した。その姿を見たタケシはサトシの優しさを認め、なんと自らバッジを手渡すのである。この時点で突然現れたのがタケシの父・ムノーだった。ムノーは長らく家出同然に不在でしたが改心して戻ってきたことが明かされ、タケシは彼にジムと弟妹たちを託す決意する。

こうしてタケシはサトシに同行する旅仲間となり、以降長年にわたりアニメシリーズのレギュラーキャラクターとして活躍することになる。このアニメ版ニビシティ編は、ゲームにはない家族愛や旅立ちの物語が加えられ、視聴者に強い印象を残した。

アニメシリーズではその後も折に触れてニビシティが登場する。例えば「バトルフロンティア」編ではバトルピラミッド(フロンティアブレーンの一人ジンダイが率いる施設)がニビシティ近郊に設置され、サトシたちが再びニビシティを訪れるエピソードがあった。

この際、久々に帰郷したタケシが弟のジロウ(英名フォレスト)や家族と再会し、ジロウが留守のジムを立派に守っている様子が描かれている(タケシの弟妹は9人もおり、それぞれ名前に「次郎・三郎…」のような数字が付いているという設定)。

ニビジムを舞台にしたエピソード「ニビジム・史上最大の危機!」では、ジロウがジムリーダー代理として奮闘する姿や、ジム乗っ取りを企む敵との戦いが描かれ、ニビジムへの思い入れが強いタケシの心情が丁寧に描かれた。このようにアニメでは、タケシの故郷としてのニビシティが度々フィーチャーされ、ジムや家族に関する物語が掘り下げられている。

リメイクゲーム作品でもニビシティは新たな表情を見せています。第3世代リメイク『ファイアレッド・リーフグリーン』では基本的な町並みは原作を踏襲しつつ、グラフィックが向上したことで博物館内の展示物がより詳細に描かれた。

例えば、プテラの化石模型が画面いっぱいに表示され、化石復元マニアのNPCが「グレン島で復元できるらしいぞ」と教えてくれるなど、オリジナル版で暗示的だった情報が明確に示されるようになっている。

第4世代『ハートゴールド・ソウルシルバー』では前述のとおり博物館がリニューアルオープンし、直接化石復活を体験できる場となった。

さらに第7世代『Let’s Go ピカチュウ・イーブイ』では、現代的なゲームデザインに合わせた新要素として、ジムに挑戦するための条件が導入されている。

ニビジムの場合、入口で受付の男性から「手持ちにみずタイプかくさタイプのポケモンを連れていること」を示すよう求められ、条件を満たして初めて挑戦が認められる。

これは初代でタイプ相性を知らずに苦戦した初心者への配慮であり、ゲーム内で自然にヒントを与える仕組みと言える。このようにリメイク作品では、ニビシティは当時のプレイヤーへのノスタルジーを刺激しつつ、現代の遊びやすさに合わせた再構築がなされている。

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名前と都市デザインに込められたメタ的意義

ニビシティの「ニビ(ニビ色)」とは日本の伝統色で鈍色(にびいろ)、すなわち濃いグレーを指す言葉。

この名前には街のテーマである「岩・石・灰色」が端的に表現されている。実際、ジムリーダー・タケシが授けてくれるジムバッジの名前もグレーバッジといい、「グレーとは灰色のこと。ニビシティのニビも濃い灰色を表す鈍色のこと」であると公式に説明されている。

街の名称とジムバッジ名が直接リンクしているのはカントー地方ではニビシティ(灰色)とハナダシティ(ブルーバッジ=水色)くらいだが、実はカントーの各都市名はすべて色に由来している。

マサラタウン(真っ白)、ハナダシティ(縹色=水色)、クチバシティ(橙色)、ヤマブキシティ(山吹色=黄色)、タマムシシティ(玉虫色=緑がかった虹色)、セキチクシティ(石竹色=ピンク)、グレンタウン(紅蓮=赤)など、いずれもカラフルなカラー名が隠されている。

その中でニビシティは「灰色」という一見地味な色名だが、岩石タイプの第一ジムにふさわしい落ち着きと堅実さを感じさせるネーミングと言える。

他言語版でも、ニビシティは概ね灰色・岩石にちなんだ名前となっている。英語ではPewter City(ピューターシティ)と呼ばれているが、ピューターとはスズと鉛の合金=白鑞(しろめ)のことで、青みがかった灰色を指す言葉。ドイツ語版ではMarmoria City(Marmor=大理石)、フランス語版ではArgenta(Argent=銀)、スペイン語版ではCiudad Plateada(plateada=銀色)など、いずれも灰色の鉱物や金属を由来とした命名になっている。

このように各国版で表現は違えど、「グレー」「ロック」というコンセプトが共有されている点は興味深いところ。ニビシティという街は、名前から登場人物に至るまで岩石・鉱物モチーフが一貫しており、ゲーム全体のテーマカラーにも合致したメタ的デザインが貫かれている。

都市構造の観点でも、ニビシティには名前にちなんだ演出が見られる。例えば街の地面や建物の壁はどっしりとしたグレーで統一され、街路にはところどころ岩のオブジェクトが配置されている。

初代ではドット絵だったが、FRLG以降の作品でその様子がより明瞭になった。博物館の外観もレンガ調で、入り口にはまるで鉱山の入り口のような柱が立っている。ニビジム内部は岩だらけのフィールドになっており、天井からはスポットライトが差し込む演出がなされている(ピカブイではジムの床に大きな岩石模様が描かれ、観客スタンドも設けられて公式試合の雰囲気を高めている)。

こうした視覚的デザインは、単に「岩タイプの町ですよ」というだけでなく、プレイヤーに大地のエネルギーや堅牢さを感じさせる効果がある。実際、ニビシティから東に進めば岩山(おつきみ山)があり、そこではいわおとこという岩石採掘者のNPCが登場したり、化石争奪戦があったりと、岩・鉱物にまつわるイベントが続く。ニビシティ自体がひとつのテーマパークのように岩だらけの世界観を提示し、その先の冒険につなげているとも言える。

さらに、ニビシティのメタ的意義として見逃せないのがプレイヤー心理への影響。灰色という色は心理的に「安定」「堅実」「保守的」といった印象を与えるとされるが、一方で「地味」「停滞」という面も持ち合わせる。

物語序盤のニビシティは、旅の緊張感と一息つける安堵感が入り混じる場所だった。ここで一度腰を落ち着け、準備を整えてから次の目的地へ向かう——その意味で灰色のニビシティは旅の小休止の場でもあった。

博物館で星空を見上げ、ポケモンセンターで傷ついた仲間を癒やし、ショップで道具を買い足す。プレイヤーにとってニビシティは決して派手な街ではないが、冒険の土台を支える大切な拠点だった。

灰色の地味さは裏を返せば「基盤の色」であり、ニビシティが冒険の基盤を築く街であったことと重なる。

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最後に

ニビシティは初代ポケモンにおいて主人公が最初に乗り越えるべき試練の地であり、シリーズ全体にわたって様々な形でその存在感を示して来た。

ゲーム内では地理的な特徴からキャラクター配置、難易度バランスに至るまで計算され尽くした設計がなされており、プレイヤーに強い印象を残す街となった。

音楽や名前の由来など細部に込められたテーマ性も相まって、ニビシティはポケモン世界の中でも特別な意味を持つ場所となっている。

冒険の序盤、誰もがこの灰色の街で一度立ち止まり、自身の腕試しをし、そして新たな決意を胸に旅立っていったことだろう。

ニビシティは、ポケモントレーナーとしての第一歩を象徴する街なのです。その静かな佇まいと岩のような存在感は、これからも語り継がれていくに違いない。

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