
- 発売日:2023年1月20日
- ジャンル:シミュレーションRPG
- プラットフォーム:Nintendo Switch
- 開発:インテリジェントシステムズ
- 発売:任天堂
- シリーズ:ファイアーエムブレムシリーズ
ゲーム概要・基本情報
『ファイアーエムブレム エンゲージ』は、2023年1月にNintendo Switch向けに発売されたシミュレーションRPG。
1990年発売の初代から数えてシリーズ本編18作目にあたり、過去作の英雄キャラクターが登場することでも話題となった。
プレイヤーは長き眠りから目覚めた神竜の血を引く主人公リュールとなり、邪竜復活の危機に瀕したエレオス大陸を救う旅に出る。本作最大の特徴は「エンゲージ」システムで、過去シリーズの英雄「紋章士」が宿る指輪の力を借りて戦って行く。
シリーズ30周年(※初代から約33年)を経て制作された本作は、歴代作品へのオマージュを込めつつ、新規ファンにも遊びやすい作りが追求されている。
💬ちなみに筆者は50時間プレイしました(笑)本記事はその上での客観的な解説でございます!
ストーリーの流れ(※ネタバレ注意)
『エンゲージ』の物語は千年前の戦いに端を発し、主人公リュールと仲間たちが大陸各地を巡り邪竜復活を阻止する王道ファンタジーとなっている。
シリーズ経験者向けに、章ごとの主な展開と物語の核心(重大なネタバレ)を交えながらストーリーを追って行く。

遥か昔、邪竜ソンブルが人々を苦しめていたが、「神竜王」ルミエル率いる軍と異界の英雄「紋章士」たちの活躍によって封印された。
千年後――邪竜の復活が迫る中、封印戦争で勇戦して眠りについた神竜の子リュール(プレイヤーの分身)がついに目覚める。リュールは長い眠りの間に記憶を失っており、自らが神竜王ルミエルの息子/娘であること、そして邪竜復活に対抗する力を持つ唯一の存在だと知らされる。
目覚めの地リトス城で親衛隊(ヴァンドレ、クラン、フラン)に迎えられたリュールは、母ルミエルと再会を果たし、邪竜封印に用いられた12の「紋章士の指輪」について教えられる。
その矢先、邪竜の眷属である異形兵が城に襲来し、リュールはルミエルや紋章士マルスの助けを得て応戦する。しかし戦いの中で致命的な危機が訪れ、ルミエルは身を挺してリュールを庇う。母ルミエルは瀕死の中、リュールに「指輪を集めて邪竜を倒してほしい」と最後の願いを託し、聖騎士(シグルド)の指輪を手渡して息絶える。
目の前で母を失ったリュールは悲しみに暮れるが、その遺志を胸に、大陸世界エレオスを巡る旅に出る決意を固めた。
リュール一行はエレオス大陸の四つの王国を訪ね歩き、各国に預けられた紋章士の指輪を回収して邪竜に備える使命を担う。
ゲームシステムの詳細
『エンゲージ』では、シリーズ伝統の戦略性を踏襲しつつ新要素が多数導入され、戦闘・育成システムが過去作より深化している。ここでは本作のゲームシステムを、シリーズ経験者にも分かりやすい観点で詳しく解説して行く。
戦闘システムの特徴 – 三すくみと新要素

本作の戦闘はマス目状のマップ上で自軍と敵軍がターン制で行動する、従来と同じタクティクスRPG方式。ユニット(キャラクター)ごとに移動・攻撃などのコマンドを選択し、自軍ターンが終われば敵軍の反撃ターンになる。
勝利条件は「敵の全滅」や「ボス撃破」などマップごとに設定され、場合によっては特定ターンの防衛などもある。
『エンゲージ』の戦闘で注目すべきは、従来作からの「三すくみ」システム復活と、新規導入の「ブレイク」等の要素である。武器の三すくみとは剣・槍・斧の3種がそれぞれ有利不利の関係を持つ相性システムで、剣は斧に強く、斧は槍に強く、槍は剣に強い関係になっている(さらに本作では体術(格闘武器)は弓・短剣・魔法に有利) 。
近年の『風花雪月』では三すくみが廃止になっていたが、本作で久々に明確な形で採用された。さらに従来作にあった「体格」(ビルド)等のステータス概念も復活し、加えてブレイクや連携攻撃など新要素も加わったため、戦術の幅は過去作以上に広がり複雑化している。
「ブレイク」は武器相性の有利を活かした新システム。有利武器で敵を攻撃してダメージを与えると敵をブレイク状態にでき、その敵は反撃不能になる。つまり一方的に追撃しやすくなる(敵もこちらをブレイク可能なので要注意) 。
重装ユニットなど一部ブレイク無効の敵もいるが、上手く使えば戦闘を優位に進められる爽快な新要素である。また、シリーズ経験者には懐かしい必殺(Critical)も当然健在で、3倍ダメージの爽快感は変らない。

「連携(チェイン)攻撃・ガード」も戦略のカギを握る新システム。特定の兵種(バックアップ系のユニット)が敵を挟撃できる位置にいると、味方の攻撃時に「チェインアタック」が自動発動し追加ダメージを与えてくれる。僅かなダメージでも積み重ねれば大きな差となり、強敵撃破の決め手になる可能性がある。
逆に僧侶系の拳士(氣功ユニット)は「チェインガード」を使用可能で、隣接味方への攻撃を一度だけ肩代わりできる。HP満タン時のみという条件つきだが、大技から仲間を守る盾役になれる頼もしい要素。
これらチェイン攻撃・防御を駆使すると、従来はできなかった多数vs一人の集中攻撃や要人の集団護衛などが可能となり、シリーズ新たな戦術の幅を感じられる。
そのほか、戦闘難易度はカジュアルから歯応えのあるものまで3段階(ノーマル・ハード・ルナティック)から選択できる。
クラシック・カジュアルモードの切替も可能で、クラシックでは従来通り戦闘不能ユニットがロスト(死亡扱い)するが、カジュアルではマップ終了後に復帰するため初心者でも安心。さらに過去作『Echoes』『風花雪月』に続く行動巻き戻し機能「竜の時水晶」も搭載され、一手ミスしても一定回数までターンを巻き戻せる。
以上のように、戦闘システム面では古き良き戦略性と新規ユーザーフレンドリーな要素が高いレベルで両立されている。
💬カジュアルモードでも油断するとキャラが即死することもあるので、絶妙なゲームバランスで戦闘が楽しめるぞ。戦闘は本当に楽しいからおすすめ。、
ユニット育成とクラスチェンジ

本作では各ユニットが戦闘で経験値を獲得し、レベルアップでステータス成長する。成長率はキャラごと・兵種ごとに異なり、シリーズ伝統のランダム成長が採用されている(レベルアップ時に能力値が上昇するかは一定確率)。
レベルが一定に達したユニットはクラスチェンジ(クラス昇格)が可能。今作のクラス(兵種)体系は大きく「基本兵種」から「上級兵種」への昇格が基本で、転職にはアイテムマスタープルフ(上級職への昇格)やチェンジプルフ(兵種変更)が必要。
たとえばソードファイター(剣歩兵)からソードマスターに、ペガサスナイトからドラゴンナイトに…といった具合。上級クラスに上がると能力限界が伸び、新たなスキルを習得するユニットもいる。

兵種ごとの特色もシリーズ経験者には興味深い点だろう。『エンゲージ』では兵種ごとに「戦闘スタイル」が設定されており、先述の連携攻撃が可能な連携(バックアップ)タイプ、チェインガード可能な氣功タイプ、ブレイク無効の重装タイプなどに分類されている。
例えば、アーマーナイト(重装歩兵)は足は遅いが防御力に優れ、さらにブレイクされないため真正面から敵の攻撃を受け止める壁役に最適。一方、シーフやアーチャーといった隠密タイプは必殺率が高い等のボーナスを持ち、また飛行タイプは地形無視移動などそれぞれ長所がある。
さらに各ユニット固有の個人スキルもあり、隣接者を強化する支援型や自己強化型など戦略に応じた起用が可能。
特筆すべきは、本作のクラスチェンジが「兵種適性(素質)」システムと結びついている点である。ユニットごとに習得している武器種が転職条件に影響するが「紋章士」との絆を深めることで新たな兵種適性を得ることが可能になっている。
例えば、本来は弓専門のユニットであっても、剣の紋章士マルスとの絆Lvを上げれば「剣の素質A取得」といった形で剣術適性を継承し、そのユニットを剣使いのクラスにクラスチェンジさせることができる。過去作では転職できなかったクラスにも就ける自由度が生まれており、自分好みのキャラビルドを追求できるのも魅力。

シリーズ伝統の支援会話も健在で、キャラ同士を隣接させて戦うことで支援値が上がり、支援Lvに応じて能力ボーナスや会話イベントが発生する。
支援会話を通じてキャラクターの背景や人間関係が掘り下げられ、物語世界への理解も深まる。また結婚システムのような要素は本作にはないが、その代わり特定キャラ同士で支援度最大に到達すると「絆の指輪」を渡せるイベントがあり、一種のエンディング後ペアエピローグが用意されている。
紋章士(エンブレム)とのエンゲージ

『エンゲージ』最大の特徴である紋章士との「エンゲージ」システムについて詳しく見て行こう。
物語に登場する12個の指輪には各「紋章士」(=過去FE作品の英雄)が宿っており、主人公リュールたちは指輪を装備するだけで紋章士とシンクロ(疑似的な同調)した状態になる。

シンクロ状態では紋章士ごとに設定された「シンクロスキル」(常時発動型能力)や専用武器が使えるようになり、能力値も上昇する。また戦闘中に蓄積するエンゲージカウント(3ターン分)を消費して「エンゲージ」コマンドを発動すると、紋章士とユニットが完全に一体化(融合)する。
このエンゲージ状態では紋章士の力を余すところなく引き出し、強力な専用武器(=エンゲージ武器)や固有スキル、そして各紋章士ごとの「エンゲージ技」(必殺級の奥義)を使用可能。
エンゲージ状態は3ターン経過で解除されるが、行動やアイテムでカウントを再チャージすれば再び発動できる。基本的に各ユニット1体につき1つの指輪しか装備できないが、指輪は付け替え自由なので「このマップはこの組み合わせで行こう」といった戦略的な組み換えも容易。
紋章士ごとに能力傾向やエンゲージ技は様々で、どの指輪を誰に装備させるかによって部隊の戦術は大きく変化する。たとえば、紋章士シグルドは「移動力+5」の恩恵を与え遠距離突撃を可能にし 、紋章士セリカは「ワープライナ」によるワープ魔法攻撃で瞬間殲滅力を発揮する。
アイクとエンゲージすれば守備と攻撃が劇的に上昇し、防御奥義で敵の攻撃を受け止められる。またリンは「残像」で分身を作り出す遠距離乱れ撃ちの達人で、ベレトは「師の導き」により周囲味方の獲得経験値をアップさせるサポート役である。
このように「紋章士×ユニット」の組み合わせにより千差万別の戦術が生まれるのが本作最大の醍醐味。実際、開発段階でも「シグルドで移動+5は強すぎて戦術が崩壊する」といった議論があったようだが、最終的には紋章士毎に尖った能力を持たせる方向で絶妙にバランス調整されている。

さらに紋章士は単なる「戦闘用アイテム」ではなくキャラクターとして描かれている点も注目だろう。
歴戦の英雄である彼らは、エンゲージ中だけでなく戦闘準備画面や拠点でも姿を現し、宿主のユニットとの「絆会話」が発生する。
支援会話に似たショートイベントで、たとえば紋章士マルスと主人公リュールが過去の約束について語り合う…といった内容が用意されている。会話は全編フルボイスで収録されており、総数は絆会話だけで約1300種類、キャラ同士の支援会話と合わせると実に約2000もの会話イベントが楽しめる。
絆会話や戦闘を重ね紋章士との絆レベルが上がると、「スキル継承」が可能になるのも重要なポイント。各紋章士が持つ特殊スキル(例:マルスの「回避+20」など)を、消費ポイント(SP)を使ってユニットに習得させることで、指輪を外した後もそのスキルを恒久的に使えるようになる。
全ユニットがあらゆる紋章士スキルを習得できるわけではないが、お気に入りのキャラに弱点を補うスキルを継がせたりと自由度の高いカスタマイズが可能。このスキル継承も組み合わせ次第で強力になるため、やり込み派には嬉しい育成要素となっている。
拠点ソラネルでのアドベンチャー要素

ソラネルと呼ばれる拠点(空中に浮かぶ小島)もゲームシステム上の重要な要素。マップ間のインターミッションで訪れるソラネルでは、武器鍛冶屋での武器鍛錬・合成、道具屋での買い物、紋章士との絆訓練や仲間同士の支援会話イベント、さらには料理や釣り、ミニゲームなど様々なコンテンツがある。
過去作『風花雪月』のような学級運営要素こそないが、広大な拠点内を歩き回って仲間と交流し、戦いの合間の憩いを楽しむことができる。
またソラネル内の闘技場では仲間を擬似戦闘で訓練させてレベル上げしたり、紋章士との訓練で絆Lvを上げることもできる。
これら拠点パートは必須ではないが、ユニットの強化や会話イベントの発生に直結するため戦力増強とストーリー理解の両面で有益。もちろん面倒な人は最低限の補給だけ済ませて次マップへ進むことも可能で、プレイヤーの好みに応じたペースで育成・交流を楽しめる。
開発秘話・舞台裏のエピソード


本作の開発は、老舗インテリジェントシステムズ社(以下IS)と任天堂の協力体制で行われた。本作ならではの企画意図や、開発者インタビューから語られた裏話をいくつか紹介しよう。
開発スタッフと制作体制
開発元はシリーズ従来作と同じくISで、販売元は任天堂。任天堂プロデューサーの横田健治氏のもと、IS側ディレクターとして鄭津萌(Tsutomu Tei)氏が起用された。
鄭氏にとってディレクター職は今作が初挑戦で、30年以上の歴史を持つ看板シリーズを率いることに当初は大きなプレッシャーを感じたと語っている。ISの樋口雅大氏(1996年『聖戦の系譜』から関わるベテラン開発者)はIS側プロデューサーとして鄭氏を支え、任天堂側からは横田Pに加え中西健太氏が任天堂ディレクターとして開発進行管理を担当した。
このようにIS開発チーム + 任天堂スタッフの合同体制で企画初期から綿密な方針策定が行われ、約3年程度の開発期間を経て完成に至ったようだ(※前作『風花雪月』発売直後の2019年頃から企画が進行していたと推測される)。
企画コンセプト:新旧ファンに届くゲームを目指して
本作の企画段階では「シリーズ未経験者にも遊んでもらいたい」という狙いが強く意識されたという。前作『風花雪月』がマルチシナリオの群像劇であったのに対し、『エンゲージ』ではストーリーをシンプルな勧善懲悪の冒険譚にすることで間口を広げ、戦術シミュレーション部分の面白さをよりじっくり味わってもらおうという方針が取られた。
ワールドマップ上を自由に旅しながら仲間を集める作りは、古典的なRPG的楽しさと近年のユーザーフレンドリーさを両立する意図があったと言う。
鄭ディレクターは「ストーリー分岐は面白いが全部遊ぶハードルは高い。今回は一本筋の物語にし、その代わり自分の育成次第でいくらでも戦術を楽しめるものにしたかった」と述べている。実際、前述したように支援会話やスキル継承によるキャラ育成の遊び込み要素は非常に充実しており、シナリオを一本道に絞ったぶん育成と戦略にリソースを注いだことが伺える。
の要となった「紋章士」の着想についても興味深いエピソードがある。任天堂ディレクターの中西氏によれば、当初ゲームの軸となる遊びを検討する中で旧作の「結婚システム」(ユニット同士の結婚で子世代を登場させるFE独自の育成システム)に話題が及んだそうだ。
『聖戦の系譜』や『覚醒』『if』で話題を呼んだ結婚システムは面白い反面、子世代に結果が反映されるまで時間がかかるという難点もあった。そこで「もっと気軽に組み合わせ遊びを楽しめないか」と発案されたのが「指輪による英雄召喚」のアイデアだった。
つまり結婚による子世代ではなく、指輪をはめればすぐ“他者と融合”できる仕組みとして紋章士が考案された。この発想転換により、ゲーム序盤から様々な組み合わせを試せる今作ならではの醍醐味が生まれた。
一方で過去作キャラを多数登場させることには制作上の懸念もあった。多くのクロスオーバー作品がそうであるように、ファンサービスは嬉しい反面ストーリーの独立性が損なわれる恐れがある。しかし本作では、紋章士たちをあくまで支える存在に徹しさせ、中心となる物語はリュール自身の成長譚として描く方針が貫かれた。
実際、公式キービジュアルでも主人公リュールを真正面に大きく据えた構図が取られており、横田Pは「主人公=プレイヤー自身が先頭に立つ王道ヒロイックファンタジーを表現したかった」と語っている。
そのうえで、古参ファンには歴代主人公との夢の共闘を、初心者プレイヤーには過去キャラの知識が無くても楽しめるストーリーを提供することに成功した。「神竜の子が過去英雄に導かれて成長する」という構図自体、シリーズファンが新規プレイヤーを指南する理想的な関係性をメタファー的に表現しているとも言える。
実際横田Pも「親子二世代で一緒に遊んでくれたら素敵」と発言しており、世代を繋ぐ作品というテーマが込められているようだ。
バトルシステム開発の裏側
新たなエンゲージシステムを戦術ゲームとして破綻なく組み込むには困難も伴った。最初の課題は「強力すぎる力をどう扱うか」である。紋章士と合体すれば一時的に無双できるわけだが、強すぎると戦略性が失われかねない。
そのため、レベルデザイナーからは「シグルドで移動+5マスは戦術が崩壊する!」と猛反対されたそうだ。しかし開発陣は爽快感も捨て難いと試行錯誤を重ね、紋章士ごとに個性を活かしつつもゲームバランスを保つ絶妙なラインを探った。
結果として、たとえばシグルドの機動力アップは実装しつつも「重装には相性不利」「突出しすぎると各個撃破される」などリスクも残し、上手く使えば強いが雑に使うと痛い目を見るという駆け引きが成立している。
実際にテストプレイした熟練者からも「思ったほど簡単ではない!」との声が上がったとのことで 、易しすぎず難しすぎずの調整に成功したことが伺える。
💬筆者はアルフレッド+シグルドで単騎突撃してて、しょっちゅうボコボコにされてました(笑)
難易度設定においても、ノーマルではゴリ押しでも進める一方、最高難度ルナティックではしっかり考えないと勝てないよう設計されており、初心者と古参の双方が満足できるさじ加減となっている。鄭D自身「実は自分もシミュレーションはあまり得意でなくて(笑)、だからこそ『できそう』ではなく『やってみたい』と思えるゲームにしたかった」と語っており、エンゲージの派手な必殺技を序盤から出し惜しみせず体験させることで「直感的な楽しさ」を演出したという。
このような設計思想は、従来シミュレーションRPGを敬遠しがちだった層にもアピールし、実際に今作からシリーズを始めた新規プレイヤーも多く見受けられた。
キャラクターデザインとビジュアル面のこだわり
本作のキャラクターデザインには、若手人気イラストレーターのMika Pikazo(ミカ ピカゾ)氏が起用された。開発初期に数名のデザイナー候補が検討されたが、「若い世代に受け入れられる絵柄」「多数のキャラを描き分ける画力」を条件に絞った結果、カラフルでポップな色使いが魅力的なMika Pikazo氏に満場一致で決定したそうだ。
中西Dは「彼女の絵はとても鮮やかでキラキラしていて、我々が目指す派手な演出にぴったりだった」と語っている。
実際、男女主人公リュールや王女セリーヌ等の初期ラフデザインからして非常にビビッドな配色が提案され、その特色を活かす形でキャラクターイメージが固められていった。
横田Pは「スーファミ時代のFEキャラは原色のイメージが強かったが、Mikaさんの色彩はどこかそれを彷彿とさせる」と述べ 、樋口Pも「昔はハードの制約で髪色など原色100%みたいなキャラも多く、それが逆に印象付けになっていた」と懐古している。
結果として、最新技術で再現された鮮烈な色彩とシリーズ回帰的なキャラ造形とが巧みに融合し、本作ならではのビジュアルが確立された。
もっとも、Mika Pikazo氏本人は当初「若いキャラばかり描いてきたのでおじさんや鎧・竜などは苦手かも…」と不安もあったそうだ。FEシリーズは渋い壮年キャラやペガサスなど特殊なモンスターも登場するため、「可愛い女の子やかっこいい貴族を描けるだけではダメなんです」と開発陣も懸念していた。
しかし氏は「新しい挑戦をしたい」と快諾し、見事に多種多様なキャラクターを描き分けている。例えば筋骨隆々の老将ヴァンドレや無骨な重装騎士、愛らしいマスコット竜ソラ等も自然にデザインされており、ファンタジー世界の多彩さが存分に表現されている。
ゲーム中の3Dモデルもキャラクターの魅力を活かすよう工夫されており、戦闘ではシリーズ屈指の派手な演出(必殺カットインやエンゲージ合体シーンなど)がプレイヤーの目を楽しませている。Switch向けとして前作比でグラフィックも強化され、キャラモデリングやモーションのクオリティは高評価を受けた。
音楽・音響面の制作秘話
音楽面でも『エンゲージ』はシリーズの集大成的な試みがなされている。
作曲陣にはシリーズ旧来の辻横由佳氏の監修のもと、森下弘生氏、馬場泰久氏、金﨑猛氏、和田貴史氏、川崎良介氏など多数のコンポーザーが参加した。バトルマップのBGMには各過去作品の名曲をアレンジしたものが散りばめられており、歴代ファンには思わずニヤリとする演出である。
実際、各紋章士のエンゲージ奥義発動時には、その紋章士が活躍した元作品の戦闘曲がアレンジで流れる場面もある。例えば、紋章士マルスの奥義時には『暗黒竜と光の剣』のテーマが、エーデルガルト(DLC紋章士)の奥義時には『風花雪月』の楽曲が流れるといった具合。
シリーズの歴史と音楽で紡ぐ演出に心躍った往年のプレイヤーも多かったことだろう。主題歌「Emblem, Engage!」もゲーム冒頭ムービーを彩っており、こちらはIS内製作曲・Ryoさん歌唱による力強いボーカル曲である。
歌詞には「絆」や「約束」といった本作のキーコンセプトが織り込まれており、エンディングでもインストゥルメンタル版が流れるなど物語を盛り上げている。
また、キャラクターボイスの豪華さも見逃せない。『覚醒』以降フルボイス傾向にあるFEだが、本作も例に漏れず主要キャラから雑魚兵士に至るまで豊富なボイスが収録されている。支援・絆会話も先述の通りすべてフルボイスで、総勢100名以上の声優陣による熱演が作品世界に命を吹き込んでいる。
過去作主人公の紋章士には当時と同じ声優が多数起用されており(例:マルス=緑川光、アイク=萩道彦、ルキナ=小林ゆう等)、懐かしさに胸が熱くなったシリーズファンも多かったことだろう。
開発者も「声優さんも豪華なので必聴です」と太鼓判を押しており 、ゲーム体験を彩る大きな要素となっている。
主人公『リュール』について
最後に、開発中の印象的なエピソードとして主人公リュールのキャラクター造形について触れておこう。
実は当初のシナリオでは、リュールは現代的な等身大ヒーロー像としてかなり気弱で臆病な一面が強調されていたそうだ。
鄭Dは「いきなり『世界を救え』と言われても今の時代共感しづらいのでは」と考え、敵を怖がったり弱音を吐いたりする描写を入れていた。しかしそれでは主人公への感情移入前にプレイヤーに嫌われかねない…と任天堂側から指摘が入り、一転して「頼りなさも少し残しつつ成長していく勇ましい主人公」に路線修正されたとのこと。
今作のストーリーは古典的な勇者譚でありながら随所に現代的な視点も感じられるが、そうした試行錯誤の跡がこのエピソードからもうかがえる。
結果的にリュールは素直で芯の強い好青年(または淑女)に仕上がり、発売後は男女問わず高い人気を博した。
💬ただし、今作の主人公は「喋り方などあまりにも良い子すぎて微妙」という声も上がっている。
最後に

以上、『ファイアーエムブレム エンゲージ』のストーリー・システム・開発秘話について詳しく解説しました!
シンプルで熱い物語、戦略性と爽快感を兼ね備えたゲームシステム、そしてシリーズ愛に満ちた数々の演出が融合した本作は、シリーズ経験者には懐かしさと新鮮さを同時に感じさせてくれる作品と言えるだろう。
発売当初は前作との作風の違いから賛否もあったが、発売から時間が経った現在では「ゲームプレイ(戦闘)の完成度はシリーズ屈指」と再評価する声も多く聞かれる。
歴代主人公たちとの夢の共演を実現した本作は、30年以上の歴史を持つFEシリーズのひとつの集大成であり、同時に新たな遊びの可能性を提示した意欲作でもある。
未プレイのシリーズファンの方もぜひ一度手に取って、“エンゲージ”がもたらす戦術シミュレーションの新境地を体験してみてはいかがだろうか。
