【特集】初代『クラッシュ・バンディクー1』徹底解説:ストーリー・ゲーム性・開発秘話まで完全ガイド

PlayStation
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1990年代半ば、家庭用ゲーム機において「3D時代」の波が押し寄せていた。

そんな中で1996年に登場した『クラッシュ・バンディクー(Crash Bandicoot)』は、3Dのプラットフォームゲームとして、またマスコットキャラクターを擁するタイトルとして、プレイステーションを象徴する存在のひとつになった。

この記事では、本作の「物語(ストーリー)」「ゲームシステム」「開発の舞台裏」という3つの柱から、「なぜこのゲームが生まれ、どうプレイされるのか」、さらに「製作者たちは何を考えていたのか」を整理していく。

ゲーム好きなあなたが、過去の名作を振り返る際の頼れる眼を養えるように書きますので、ぜひ楽しんで読んでみてね!

『クラッシュ・バンディクー』とは?

  • 発売日:(北米)1996年9月9日/(日本)1996年12月9日
  • 開発:Naughty Dog(ノーティドッグ) 
  • 発売:Sony Computer Entertainment(ソニー・コンピュータエンタテインメント)
  • ジャンル:アクション
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第1章:ストーリー

コルティックスたちに改造されるクラッシュ

ゲームの舞台は、オーストラリアにある架空の島々。そこに、狂気の科学者 ネオ・コルティックスが「Evolvo-Ray(エヴォルヴォレイ)」を使い、島に住んでいた野生動物を改造・洗脳を施して自らの動物兵士軍団に加え、世界征服を企んでいた。

しかし、動物たちは凶暴化し、コルティックスの言うことを聞かない危険な生物と化してしまった。

その改造された動物の中にいたのが暴れ者だったクラッシュ・バンディクー。クラッシュは何故かこの改造により逆に正義の心に目覚め、慌ててコルティックス城の窓から飛び降りて脱出。

しかし、恋人であるタウナはまだ捕まったままであった。

海を泳いで脱出するが、気がつくと見知らぬ浜辺で力尽き、倒れていたのだ。

クラッシュはタウナを救出すべく、再びコルティックス城へと向かうのであった。

登場キャラクター

  • クラッシュ・バンディクー
    • 主人公。改造された有袋類で、コルティックスに操られる側・脱走側という立場から物語が始まる。
  • アクアク
    • 魔法の仮面であり保護者的な存在。ステージ中に手に入れることでクラッシュにバリアを与える重要なアイテム。
  • タウナ・バンディクー
    • 実験対象となった女性バンディクー。救出対象でもあり、クラッシュとの絆も物語の動機のひとつ。
  • ネオ・コルティックス
    • 典型的な「吹き出物浮かぶ大悪党」ながらも、キャラクターとして非常に印象的。

シンプルながら分かりやすいストーリー

このゲームのストーリーが魅力的なのは、シンプルながらも「改造された動物が脱出して、自分の存在意義を取り戻す」「悪の科学者の城まで旅する」という王道構造を押さえていることである。

プレイヤーが自然に「次はあのボスだ」「ここを抜けたらコルティックスの本拠だ」という感覚をもって進める動機を与えている。

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第2章:ゲームシステム

基本操作と視点

本作は 3Dのプラットフォームゲームという位置付けだが、実際には「3Dキャラクター+制限付きカメラワーク」で、比較的線形(リニア)なステージ構成を採っている。

プレイヤーはクラッシュを操作し、ジャンプ・スピン攻撃(回転攻撃)・走る/歩くなどを駆使して、ステージをクリアして行く。

視点はキャラクターの背後から追いかけるタイプが多いが、場所によっては横スクロール・前方スクロールなどの演出ステージもある。

ステージ・構成・流れ

ステージは「ジャングル」「工場」「雪山」「ビーチ」といった環境テーマごとにまとまっており、各テーマで導入レベル→中盤レベル→ボスレベルという流れが基本。

開発者によれば、最初のレベルは「導入」「基本操作の習得」が目的で、後半ステージでは新ギミック・難易度アップ・ボス戦という構成が意識していたという。

また、ステージ中にはワンパフルーツ(リンゴ)🍎という収集アイテム(100個集めると1UP)や、クラッシュを守る仮面・アクアク、そして多数の箱(クレート)が配置されており、「破壊する」「回収する」「踏みつける」「避ける」というアクションの組み合わせが豊富。

木箱(クレート)システムの特徴

このゲームの最も特徴な要素が「箱(クレート)」のシステム。

落ちている箱を破壊するとアイテムが出たり、トラップだったりするので、ステージの読む力や記憶力が試される。

開発者の話では、プレイステーションの限られたポリゴン数・処理能力の中で、「空間がスカスカに見える」のをどう補うかを考えた結果、「箱をたくさん配置して破壊感を出そう」という発案が出たという。

箱には通常の破壊可能なもの、TNT箱(爆破箱)、?箱(隠しアイテム)、そして壊すとワンパフルーツが出る箱など種類があり、全箱破壊チャレンジというやり込み要素もある。箱を最後まで壊すと「100%クリア」に近づくという満足感もある。

チャレンジ構成・難易度

この作品は決して易しいゲームではなく、「ほどよい難しさ」が売りだった。

特に後半レベルでは落ちるギミック、多数の敵の配置、タイミング要素、また「何度もやり直す」ことを前提とした構成になっている。

開発者も「オープンワールドにするのではなく、線形にして、難易度調整を効かせたかった」と語っている。

また、ボス戦では単純な攻撃避けだけでなく、「見た目ではわからないギミック」を見つけ出して倒す、といった工夫もありました。これがプレイヤーに「次こそクリアしてやろう」というリトライ欲を生ませる構成になっている。(マジで悔しくて、勝てるまでやってしまう…)

視覚・技術的演出

当時の プレイステーション というハードの限界を逆手にとって、開発チームは様々なハックを仕掛けた。

例えば、キャラクターの背後からのカメラワーク、ポリゴン数を抑える代わりにテクスチャを活用、レベルデザインを通路型(コリドール型)にして「見せる」演出を強める、など。

また、視点が背後+固定カメラの場所や、横スクロールや前方スクロールになるステージを挿入することにより、3Dでありながらも「分かりやすいアクションゲーム」としての安心感を保っていた。

個人的に本作に感じる魅力

  • クラッシュは表情・見た目など何もかもが魅力的で、ゲーム開始直後から愛着が湧いてしまう。
  • 木箱を縦横無尽に破壊する・リンゴを食べた時の音など、爽快感がえげつない。
  • ステージごとにテーマが変わるので「次はどんな世界?」とワクワク感を感じる。
  • 箱をすべて壊すチャレンジや隠しエリアなど、やりこみ要素が良い。
  • ボス戦のギミックにもそれぞれ独特の個性があり、全く飽きない。
  • 視覚的・音響的にも、当時としては鮮やかで遊び応えがある。
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第3章:開発秘話

発端・契約、プラットフォーム選定

開発スタジオ『ノーティドッグ(Naughty Dog)』の創設者である アンディ・ギャビン(Andy Gavin)氏 ジェイソン・ルービン(Jason Rubin)氏 は、当初『Way of the Warrior』(3DO用)を手がけていた。

そして 1994年、彼らは新たな可能性を模索し、3D時代に適したアクション・プラットフォームゲームを作ろうと考えた。

その背景として、当時のアーケードゲームやコンソールゲームが2Dから3Dへ移行しつつあったこと、またプラットフォームゲームというジャンルが「マスコット×ジャンプ」という構造で認知されていたことがあります。そこで「プレイステーション向けに、マスコットキャラクターが活躍する3Dプラットフォームゲームを作ろう」という方針が立てられた。

プラットフォームとしてプレイステーションを選んだ理由には、「マスコットキャラクターがまだ定まっていない」「ハードウェア的に3D表現に挑戦できる環境」「Sony が新機軸に意欲的だった」という点が挙げられている。

キャラクターデザインと世界観構築

キャラクターおよび世界観については、アートディレクションに ジョー・ピアソン(Joe Pearson)氏チャールズ・ゼンビラス(Charles Zembillas)氏 が協力。

ピアソン氏がまず概念設計(「レムリアの残滓としてのワンパ諸島」「改造実験された動物たち」など)を作り、ゼンビラス氏がキャラクターのビジュアルを固めていったという。

クラッシュは、元のスケッチでは「ずんぐりむっくり」「しゃがみがち」といった印象だったそうだが、より躍動的・マンガ的に「鼻が大きめ」「動きがコミカル」として改変されていった。

また、仮面のアクアクのアイデアは「難易度をバランスさせる保護アイテム」が欲しかったこと。技術的に「半透明のシールド」が作りづらかったため、「少ポリゴンの浮遊仮面」というアイデアになった、という話もある。

レベルデザイン・技術的挑戦

技術面では、当時の プレイステーション が持つ限界(ポリゴン数、描画バジェット、カメラ制御など)が大きな制約だった。

しかし、ノーティドッグはそれを逆手に取り、見せ方・体験を徹底的に考えた。例えば、「キャラクター背後視点」「狭い通路型ステージ」「2.5D的なレベル構成」など。

開発者によれば、初期のデモ段階では「広い空間」「敵多数」「自由移動」といった要素も試されたが、これはポリゴン数や制御カメラの都合で断念されたそうだ。

代わりに「通路型」「キャラクターを見せる演出」「箱やフルーツを並べて空間を埋める」というアプローチを取ったという。

GOOL(Game Oriented Object LISP)というプログラミング言語も開発され、キャラクター制御・イベント制御のために活用されたという話もあった模様。

なお、木箱(クレート)の発案も印象的で、ある土曜日の午前中、ギャビン氏とルービン氏が「箱をたくさん置いたら動きが出せるね」と話して、たった数時間でプロトタイプを実装したという逸話がある。

箱ひとつで「壊す」「中から出る」「注意する」という波をつくることができ、視覚的にも楽しく、動的演出として機能した。

日本市場向けの調整

興味深いのは、北米・欧州向けだけでなく日本市場も視野に入れ、ローカライズ&調整がなされていた点である。

具体的には、クラッシュのデザインやカメラの角度、ステージの長さ、プラットフォームの幅、アクションの説明テキスト(特に日本版ではポップアップで「スピンわざ」「ジャンプわざ」などの説明を入れた)などが変更された。

例えば、日本の子どもたちが「箱に潰されるクラッシュ」の演出を怖がったため、そのカットを変更した、というエピソードもある。

こうした調整により、日本でも一定の成功を収めた。

発売と反響

本作は、北米では1996年9月9日、欧州では11月8日、日本では12月9日に発売されました。

商業的にも非常に成功を収め、全世界で数百万本を売り上げ、プレイステーション のマスコット的存在のひとつとなった。

2003年11月時点で、世界累計販売・出荷本数は約 680万本以上とされている。

逸話など

  • 実機(プレステの開発ユニット)を買うために $35,000 を払った、という話や、「当時我々は PlayStation の会社44番目・45番目のデベロッパーだった」といった話もインタビュー紙に残っている。
  • キャラクター名『クラッシュ・バンディクー』は、箱を次々壊す主人公のアクション(=クラッシュ=破壊)と種(バンディクー)から由来、開発初期は「Willy the Wombat」など別名も検討されていたそうです。
  • E3でのデモ映像制作など、「マーケティングにおける映像準備も自ら編集室に泊まり込んで2日で作った」という逸話もある。
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最後に

ただの昔のゲームではなく、遊べばすぐにその面白さを思い出させてくれる――それが初代『クラッシュ・バンディクー』。

ストーリーもシステムも、そして開発者たちの裏側の努力も知った今、きっと前より一歩深く楽しめるはず。

さあ、今日もどこかで箱がひとつ壊れる音とクラッシュが落ちる悲鳴が響いているはずだ。

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