ファイアーエムブレム エンゲージ — ストーリーガイド①

色鮮やかな髪を持つ主人公リュール(中央)と仲間たちが旅路で出会う英雄たち。戦乱の大地エリオスを舞台に、神竜と邪竜の宿命の物語が描かれる。
はじめに — 冒険へ誘う序章
『ファイアーエムブレム エンゲージ』は、シリーズ17作目にあたるシミュレーションRPG。
プレイヤーは千年の眠りから目覚めた神竜の血を引く主人公リュール(男女選択可)を操り、邪竜復活を目論む敵軍と戦うことになる。
物語の舞台はエリオス大陸。中央に神竜が統べる聖地リトスがあり、その周囲を四つの王国—平和を重んじるフィレネ王国、武を誇るブロディア王国、邪竜を崇めるイルシオン王国、自由と歌のソルム王国—が囲んでいる。それぞれの国が協調しつつも思惑が交錯する中、かつて世界を脅かした邪竜ソンブルンの封印が弱まりつつあった。
このストーリーガイドでは、オープニングからエンディングまで物語を追体験する形で解説して行く。(+筆者の主観的感想!)
ただし、ネタバレは物語の進行に合わせて段階的に明かして行くのでご安心を!!
それでは、千年前から続く神竜と邪竜の因縁の物語へと旅立とう!
聖地リトスとフィレネ王国の戦い
エレオス大陸の世界と四つの王国
本作の舞台はエレオス大陸。ここには性格の異なる四つの王国があり、それぞれが独自の文化と王家を持っている。北東に神秘の国イルシオン王国、北西に軍事国家ブロディア王国、南東に平和を愛するフィレネ王国、南西に自由奔放なソルム王国がある。
1000年前、この大陸では邪竜と人類の存亡を賭けた大戦争が起きた。邪竜ソンブルが世界を滅ぼそうと暴れたが、人々は他世界の英雄たちの力を宿す「紋章士(エンブレム)の指輪」を集め、当時の神竜王ルミエルとともに邪竜に立ち向かった。戦いの末、ソンブルは封印され、エレオスには平和が戻ったのである。
大陸の中央には神竜王国の聖地リトスがある。リトスは浮遊島「ソラネル」を中心とした地で、人々は神竜王ルミエルを信仰し、邪竜を封じた功績を称えている。
1000年前の戦いで力を使い果たした神竜ルミエルは、その後長い眠りにつく。そして、大陸ではフィレネ・ブロディア・ソルムの三国が同盟関係を結び平和を維持していましたが、イルシオン王国だけは地理的に遠く外交もなく、邪竜信仰を持つ者が多い特殊な国情でだった。
こうした微妙な緊張関係の中、邪竜復活の兆しが再び現れ始めたところから物語が動き出す。
序章の夢は、おそらくリュール自身が1000年前の最終決戦または今後訪れるであろうソンブルとの対決を夢見たものと考えられる。実際にゲーム終盤で再びあのようなシーンが展開される伏線であり、物語全体のゴールを示唆する演出とも受け取れる。
また、リュールがマルスと当然のようにエンゲージしていたことから、紋章士の力が物語の鍵になることが示唆されている。プレイヤーにとっては「なぜ過去の英雄が指輪に宿り、主人公を助けているのか?」という疑問が生まれ、この先の展開への興味を掻き立てる序章となっている。

シリーズ歴代のキャラが出てくるってストーリーは激熱なんだけど、どういった経緯でその英雄たちの魂が指輪に宿り始めたんだ?(笑)
序章:夢の中の最終決戦


序章の戦場は邪竜ソンブルとの決戦の場と思われる場所。
リュール(プレイヤー)はレベル20という圧倒的な力を持ち、紋章士マルスとの絆も最大に高まった状態でスタートする。(序章限定の特別な設定) 。
基本的な移動や攻撃の操作を確認するチュートリアルをこなしつつ、目前の敵兵を撃破して進軍して行く。

クライマックスではリュールがマルスとエンゲージし強大な力を発揮。紋章士マルスの象徴的な必殺技で敵将らしき者を一撃で倒し、戦闘があっさりと終了する。
緊張感高まる最終局面での勝利シーンのようだが、この段階では物語の詳しい背景説明はない。まさにプレイヤーを一気に物語へ引き込む演出として、序章は展開して行く。
ところが勝利後、突然リュールは意識を手放すかのように倒れ、物語は急展開を迎える。暗転した後、リュールが「はっ、夢か」と目覚める描写が入り、なんと序章の出来事はすべて夢だったことが明かされる。まるで未来の予兆か過去の記憶のような謎めいた夢オチで、物語の本編が始まる。
📝豆知識:紋章士マルスの元ネタ – リュールが最初に心を通わせる紋章士マルスは、シリーズ第1作『暗黒竜と光の剣』の主人公。後の作品で「英雄王」と称される伝説的存在で、本作でも「始まりの紋章士」として扱われている。声優は緑川光さんで、SFC版『紋章の謎』からマルスを演じ続けているお馴染みの声である。
キャラクターと心理描写:夢の中のリュール

夢の中のリュールは記憶喪失の本編とは違い、自信に満ちた戦士として描かれている。マルスとの連携も完璧で、まさに「神竜の英雄」として敵を圧倒した。
これはリュール本来の潜在能力を表すと同時に、プレイヤーの分身であるキャラクターの強さを体験させる狙いがある。しかし同時に、序章のリュールは現実の彼/彼女とはかけ離れた姿でもある。
夢から醒めた後、リュール本人がこの“最後の戦い”について何も覚えていないことから、この序章のリュール像は過去か未来の姿であり、現在のリュールとのギャップが生じている。
序章終了時点でプレイヤーもリュールも困惑しているが、そのギャップこそが物語の謎として興味を引くポイントになっている。
演出意図と考察:プレイヤー視点の驚きと物語のフック
序章の演出意図は、プレイヤーに強烈な印象を与え物語へ没入させることにある。開始早々クライマックスさながらの戦闘を体験させ、一時的とはいえ最強状態の主人公を操作させることで爽快感を味わわせている。
シリーズ経験者にとっては、ニンテンドー3DS『FE覚醒』が冒頭で終章の戦いを描いた手法を彷彿とさせる構成でもあり 、「もしや今回は最初からクライマックス?」という驚きを持って受け止められただろう。
しかし勝利の快感も束の間、一転して「夢オチ」であったことが判明すると、プレイヤーは困惑とともに強い好奇心を掻き立てられる。「今の夢は何だったのか?」「なぜ主人公はこんな夢を?」といった疑問が生まれ、物語の先を知りたいという欲求に繋がる。このミスリードと種明かしによって、物語への興味を一気に高めているのである。
また、夢という形を取ることで、開発側は最終決戦のビジュアルとエンゲージという新システムを序盤から提示することに成功している。序章の終盤でマルスとエンゲージした際の演出は華やかで、「エンゲージ」という本作の目玉要素を強烈に印象付ける。プレイヤーは「エンゲージすればこんなに強くなれるのか」と期待し、本編で再びこの力を使える日を心待ちにすることだろう。
序章全体を通して、「夢」という形で提示された謎が物語のフックになっている。神竜リュールと邪竜ソンブルの最終決戦という核心部分を断片的に見せつつ、詳細は伏せられたまま本編へバトンタッチする構成は巧妙。
プレイヤーはリュールと同じく「今のは一体…?」という状況に置かれ、主人公と一緒に真相を探る旅路に出ることになる。こうして序章は、プレイヤーの高揚感と疑問を同時に生み出しつつ幕を閉じ、本編への期待感を最大限に高める役割を果たした。
第1章:目覚め – 神竜の子の覚醒と戸惑い

長い眠りから目覚めたリュールは、まず自分が置かれた状況を理解するところから物語が展開する。
神秘的な浮島ソラネル(聖地リトスの一角)で1000年もの間眠り続けていたというリュールは、突然の覚醒に戸惑い記憶も失っている。
彼(彼女)を出迎えたのは、代々神竜に仕える竜の守り人の若き双子クランとフラン、そして老騎士ヴァンドレだった。リュールは彼らとの出会いを通じ、自身が「神竜王ルミエルの子」であり、人々から神聖視される存在であることを知る。
1000年の眠りから覚めた主人公

夢から覚めたリュールは、自室の寝台で双子の少年クランと少女フランに起こされる。二人はリュールが目を覚ましたことに大興奮し、「神竜様がお目覚めになった!」と大はしゃぎで部屋を飛び出して行った。
クランとフランは聖地リトスで代々神竜に仕える第33代の竜の守り人であり、長年眠るリュールの世話をしてきた若き守護者である。突然の覚醒に喜ぶあまり、二人は城中に報告へ走って行ってしまい、取り残されたリュールは「自分は誰なのか、ここはどこか?」という状態のまま呆然とする。

すぐにリュールの元へ駆けつけたのが、老騎士ヴァンドレだった。ヴァンドレはクランとフランの上司にあたる第32代竜の守り人であり、1000年の間ずっと眠るリュールを守護してきた忠臣。
彼は目覚めたリュールに安堵しつつ、「リュール様、私はヴァンドレ。長年あなた様をお守りしてきました」と丁寧に自己紹介する。そして「神竜王ルミエル様に、あなたがお目覚めになったことを報告しに参りましょう」と提案する。

リュール自身は記憶喪失のため、自分が「神竜」と呼ばれる存在である理由もわからず困惑する。しかしヴァンドレの話で、自分が神竜王の子であり、1000年もの長き眠りについていたことを知る。

外に出たリュールの目に飛び込んできたのは、聖地リトスの城から臨む美しく広大な光景だった。
あまりの絶景にリュールが驚くと、ヴァンドレは「ここは聖地リトス。神竜王ルミエル様がおわすお城がある地です」と説明する。
その麗しさはリュールにとっても初めて見るもので、彼/彼女は「自分はこんな美しい場所で1000年も眠っていたのか…」と実感が湧かない様子。

俺ってさ、基本的に幼女?というか若い女性キャラって好きにならんのだけど、このフランはいいな!!!(犯罪臭がする…)
異形兵との初戦闘と紋章士マルス

一行(リュール、ヴァンドレ、そして合流したクランとフランの双子)は神竜王ルミエルの待つ城へと向かうが、城へ続く道中、突如として謎の不死の兵(ゾンビのような存在)たちに襲撃される。
それはかつて邪竜が生み出し使役したとされる異形兵(Corrupted)と呼ばれる魔物であり、死者が邪竜の力で動く“生ける屍”である。この時代には存在しないはずの異形兵の襲来に、ヴァンドレたちは色めき立ちます。「まさか邪竜が…?」と不安がよぎるが、今は目の前の危機に対処せねばならない。

ヴァンドレは早速武器を構え、「神竜様、私が敵を迎え撃ちます!」と戦闘態勢に入ろうとした。ところが、肝心のリュールは突然戸惑った表情でこう口にする。
「逃げましょう!」
予想外の言葉にヴァンドレは「えっ?」と固まる。リュールは「敵の正体もわからない以上、無闇に戦うのは得策ではない」ともっともらしい理由を述べ、戦闘を避けようとしたのである。
守り人であるヴァンドレは勇猛に戦う神竜を期待していたため、この消極的な判断に面食らい「主君が戦いから逃げ腰とは…」と内心唖然とした。(多分)
しかし臆病にも見えるリュールの言葉は、一理ある判断でもある。記憶を失った上、初めて見る化け物相手に迂闊な戦闘は避けたい――リュールは至極真っ当な慎重さで状況を見極めようとしたのだった。

ところが、そうこうするうちに先行して様子を見に行っていたクランとフランの双子が敵に囲まれてしまう。
放っておけば大切な仲間が殺されてしまう…追い詰められたリュールは覚悟を決め、「やむを得ません。戦いましょう!」と遂に剣を抜く。ここに主人公初陣の戦闘が幕を開ける。
戦闘チュートリアルが続く序盤ということもあり、まず現れた敵は3体のみ。地形(茂み)を利用して有利に戦うなど基本を確認しつつ、リュールとヴァンドレで協力して敵を倒して行く。リュールは訓練通り剣を振るうが、1000年ぶりの実戦ということもあってか思うように敵を倒せず手間取ってしまう。
一方、まだ操作できないNPCのクランとフランは敵の攻撃を受け続け、クランなどHPが残り1になるほど追い詰められてしまう。
「このままでは双子が危ない!」と焦るリュールだったが、そこへさらなる増援の異形兵が出現する!数の上で圧倒的不利となり、主人公一行は窮地に陥る。


しかしその時、リュールの手に嵌められていた指輪が淡く光り輝き始める。耳元に聞こえる懐かしい声――
リュール、力を貸そう
次の瞬間、指輪から青い髪の青年の霊姿が現れた。紋章士マルスである。リュールは驚きつつもマルスと心を通わせ、叫んだ。
「マルス、エンゲージ!」
紋章士と心身を一体化させることで、リュールは紋章士マルスの力を引き出すことに成功する。エンゲージによってリュールの外見も蒼き鎧をまとった姿に変化し、手にはマルスゆかりの聖剣レイピアが出現。攻撃も俊敏さが増し、一度に二回連続で斬りつけるなど桁外れの戦闘力を発揮する。
先程まで苦戦していた硬い異形兵も、レイピアの刃ならば容易に貫くことができる。リュールは覚醒したかのように次々と敵を撃破し、追い詰められていたクランとフランを救い出すことに成功した。

エンゲージの力で増援も退け、一行はようやく安堵する。しかし「なんとか危機を乗り切った」と思ったのも束の間、辺りには再び無数の異形兵が現れ始めた。
さしものリュール達も数の暴力には抗えず、「これ以上はさすがに…」と絶望が胸をよぎる。その時だった。不意に天から光が降り注ぎ、巨大な白い竜が舞い降りて来た。


白銀の鱗に輝くその神々しい竜は、口から放つ眩いブレス(はかい光線)一撃で、周囲の異形兵を焼き払い一掃していった。

か、、、完全にバハムートのメガフレアや、、、笑

突然の出来事にリュールたちは「敵のドラゴンか!?」と身構えるが、その竜は静かにリュール達の前に降り立ち、その身を人の女性の姿へと変えて行く…。
それは他でもない、神竜王ルミエル本人だったのである。

ルミエルは優しく微笑みながらリュールに歩み寄り、「やっと目覚めたのですね、リュール」と愛おしそうに語りかける。
リュールは目の前の女性が自分の母ルミエルであることを直感的に理解しますが、記憶が無く困惑気味。それでもルミエルは「大丈夫、ゆっくりで良いのですよ」とリュールを抱擁し、長い眠りから覚めた我が子の無事を心から喜んだ。
ただ、この時ルミエルはふとリュールの左右で色の異なる瞳を覗き込み「その瞳、とても綺麗な色ね…」と呟く。リュール本人はその言葉の意図を測りかねるが、ルミエルの表情はどこか複雑だった。
実はこの「瞳の色」は物語上重要な伏線であり、ルミエルは長い眠りの間にリュールの片目が赤から青に変化してしまっていることに気付いていたのである。ともあれ、久方ぶりの親子の再会は感動的なものとなり、ヴァンドレたち守り人も女王の無事とリュール覚醒に安堵してひざまずく。
こうして一行は改めて神竜王ルミエルに付き従い、聖地リトスの城へと入城した。第1章「目覚め」は、リュールが現実世界で初めて戦闘を経験し、自身が人々にとって特別な存在であることを認識する導入の章となりました。
背景設定:神竜を崇める聖地と異形兵の出現
第1章では、エレオス世界の基本的な構図が断片的に描かれている。まずリュールがいた聖地リトスは、大陸中央に位置する神竜たちの王国であり、周囲の人々から神聖視される土地。リトスの統治者である神竜王ルミエルは1000年前の邪竜戦争を終結へ導いた英雄でもあり、現在も神として敬われている。
その直系の子であるリュールもまた「神竜様」と呼ばれ、眠りについている間も敬意をもって扱われて来た。
実際、各国の王族ですら定期的にリュールの眠る神殿を訪問し、その加護を願う風習があったほどだという。クランとフランの双子が生まれる遥か以前から、33代もの守り人が交代でリュールを守り続けてきたという事実からも、神竜信仰が人々にとってどれほど大きな存在かが伺える。
そんな平和な聖地に突然現れた異形兵(Corrupted)の存在は、世界観に不穏な影を落とす。異形兵とは「邪竜の力を受けて動く生ける屍」であり、本来であれば邪竜ソンブルが封印された後は出現しないはずの存在だった。1000年もの間ほとんど目撃されていなかった魔物が、このタイミングで現れたことは、すなわち「邪竜復活の兆し」が現実のものとなりつつあることを意味する。
神竜であるリュールが目覚めたこと、自我なき異形兵が蠢き出したこと――すべては邪竜復活という同じ原因に収束して行く。第1章は、そうした世界の異変の始まりを象徴する章でもあったと言える。
また第1章では、リュールが宿していた紋章士マルスの指輪が重要な役割を果たした。1000年前の戦いの後、指輪は各国に分け与えられたが、一部はルミエルが聖地に保管していた。
マルスの指輪もルミエルからリュールへ託されていたか、もしくはリュール自身が携えていた可能性がある(ゲーム中明言は無いっぽい?が、リュールが目覚めた時点で指輪を所持していた描写から、ルミエルが我が子の守護としてマルスの指輪を持たせていたと推察できる)。
紋章士は普段は指輪の中で眠りについており、適合者の呼びかけで初めて姿を現す。リュールが異形兵に追い詰められた極限状態でマルスが顕現したことは、邪竜の脅威に対し紋章士もまた目覚める時が来たことを示唆している。
実際ルミエルはこの後、他の紋章士達も目覚め始めていること、そして再び指輪の力が必要になることをリュールに伝えることになる(詳細は第2章で語られる)。
キャラクター描写:臆病な神竜と双子の守り人
リュール

第1章では主要キャラクター達の性格が端的に表れた。中でも注目すべきは主人公リュールの人物像。彼/彼女は目覚めて早々記憶喪失というハンデを負い、自分が神竜だという自覚も希薄だった。
そのため、未知の敵に遭遇した際まず「逃げよう」と提案したリュールの姿は、従来のFEシリーズ主人公像(勇敢に立ち向かう英雄)とは一線を画している。
一瞬「腰抜け?」とすら思わせる消極姿勢だったが、これは1000年のブランクと記憶喪失ゆえのリアルな反応と言える。リュール自身、戦う術は身体が覚えていたものの心の準備ができておらず、戦いへの恐怖や戸惑いがあったのだろう。
しかし追い詰められた仲間を見捨てられない優しさも持ち合わせており、いざとなれば自分が傷つくことを厭わず剣を取る勇気も見せた。この「臆病だけれど本当は優しく勇気がある」というリュールの人間臭さは、プレイヤーにとって親しみやすさを感じさせる部分でもある。初陣での躊躇と覚悟は、今後の成長を予感させる重要なエピソードだった。
ヴァンドレ

対照的に、ヴァンドレは終始冷静沈着で騎士らしい振る舞いを見せた。彼は「ジェイガン枠」とも形容される歴戦の老人であり、序盤の頼れる守護役。
若い主人公の未熟さも広い懐で受け止め、危険に際して自ら囮になろうとする場面もあった(ゲーム的には主人公をかばい攻撃を引き受ける役割を担う)。
ヴァンドレは1000年もの間守り人を務めてきた責任感から、リュールに対してやや過保護な面もあるが、リュールが自身の判断で戦うと決めた際にはしっかりそれを支えている。
「主人公を導く初期老騎士」という伝統的ポジションに収まりつつ、時にリュールの予想外の行動に振り回されるコミカルさも持ち合わせ、物語を引き締める役割を果たしている。
クラン&フラン


クランとフランの双子は、第1章ではその元気さと純粋さで場を明るくするマスコット的存在。クランは礼儀正しく生真面目な少年、フランは勝ち気で人懐っこい少女として描かれ、二人ともリュールへの尊敬と愛情をストレートに表現する。
実は二人は『神竜ファンクラブ』を結成しており、クランが会長・フランが副会長を務めるほどリュールの大ファン。1000年眠り続けていたリュールに会ったことがないにも関わらず、文献や伝承を通じて「神竜様」を慕い続けてきた健気さは微笑ましく、初対面で部屋を飛び出すほどテンションMAXだったのも無理はない。
戦闘では不覚を取ってしまったものの、敵に囲まれながらも「リュール様は絶対助けに来てくださる」と信じていた様子もうかがえ、忠誠心と信仰心の高さが伝わって来る。以降もこの双子はリュールを「神竜様!」と慕いながら献身的に支え、物語に潤いとコミカルな掛け合いをもたらしてくれる存在となる。
神竜ルミエル

そして忘れてはならないのが神竜王ルミエル。本章ラストにてドラゴンの姿で登場し、圧倒的な力で我が子を救う姿はまさに“慈愛と強さを兼ね備えた聖なる王”だった。
ルミエルは敵を退けた後、まず仲間よりもリュールの無事を確かめ抱きしめる母親としての一面を見せ、同時に守り人たちには毅然と感謝を述べる女王としての風格を示している。
ルミエルは終始穏やかな笑みを浮かべ、記憶を失ったリュールにも責めることなく優しく接する。彼女の存在はリュールにとって心細い新天地における唯一無二の拠り所となり、第1章時点では「頼れる母」の姿そのもの。しかしその温かさゆえに、後の展開で起こる悲劇が一層際立つことになるのだが、それについては次章で語られる。
プレイヤー視点の考察:勇者ではない主人公像と緻密な演出
第1章で特筆すべきは、主人公リュールの人物像に対する意外性だろう。序章の勇敢な戦士とは打って変わって、第1章でのリュールは戸惑い、逃げ腰になる姿を見せた。このギャップはプレイヤーにとって「主人公なのに戦うのを嫌がるなんて?」という驚きをもって受け止められたはず。
しかし同時に、それは1000年ものブランクと記憶喪失という設定を踏まえれば極めて人間的な反応であり、プレイヤーはかえってリュールに共感しやすくなったとも言える。
むしろいきなり完璧超人として活躍するよりも、弱さや迷いを見せることで「一緒に成長していく存在」として愛着が湧くよう工夫されているように思える。

遊戯王の城之内くんみたいにね!!
また、脇を固めるキャラクター達もプレイヤーに安心感を与える配置となっている。ヴァンドレのような歴戦の忠臣が傍らにいることで、「戦い慣れない主人公を守ってくれる存在」が明確になり、ゲーム的にもストーリー的にも序盤の安定剤となっているはず!!
双子のクラン&フランはその愛らしさと献身ぶりで、シリアスになりすぎない空気を作ってくれる。特に二人がリュールに憧れる様子は微笑ましく、プレイヤーに「この主人公は人から慕われる存在なんだ」と実感させる効果があった。
リュール本人は記憶が無く戸惑っているが、周囲の人々(プレイヤーから見ればNPC)がリュールを大切に思い支えてくれる描写を積み重ねることで、主人公補正とも言える安心感をプレイヤー側も共有できる。
戦闘面では、序盤から異形兵が登場したことにより「敵=邪竜勢力」という図式が提示された。これにより物語上の善悪構造が分かりやすくなり、プレイヤーは「正体不明の盗賊と戦う」といった曖昧さではなく、明確な悪(邪竜の眷属)を倒す使命感を持ちやすくなる。
もっとも、第1章の時点では敵がどこから来た何者かは伏せられており、純粋に「魔物退治」というシンプルな構図に留めている。これも巧妙で、序盤では難しい背景説明を極力減らし、まずは主人公と身近な仲間たちの関係性にフォーカスすることで物語に入り込みやすくしている。
演出的には、ラストでルミエルがドラゴン姿で登場し窮地を救うシーンが大変ドラマチックだった。巨大な竜が現れてブレスで敵を薙ぎ払うカットシーンは爽快感があり、ファンタジー作品らしいスケールの大きさを感じさせる。
同時にそれが主人公の母という事実に、プレイヤーもリュール同様驚かされたことだろう。

俺はかつての恋人だと思ってたからな!!笑
「母親がドラゴンに変身する」という衝撃的なビジュアルは、本作の世界では竜が人と姿を変えられること、さらにはそれほど強大な存在が味方であることを示す重要な情報。
味方陣営の強さを示しつつ、次章以降への安心感を持たせる狙いもあったと考えられる。
しかしその安心感も長くは続かないことを、物語はこの後すぐに示すことになる。リュールが得た「母の庇護のもと安堵できる場所」は、束の間の休息に過ぎなかったのである。
次回、

