花と水の街『ハナダシティ』徹底解説
ハナダシティの地理的位置と街の構造

ハナダシティはカントー地方北東部に位置する、小川に囲まれた水の豊かな街である。街の西にはおつきみやまを越えてきた4番道路が接続しているが、段差の配置によりハナダ側から4番道路へは一方通行となっており、一度ハナダシティに来ると来た道を引き返すことはできない。
南側は5番道路を経てヤマブキシティ方面へ続くが、当初は改札口の警備員に止められて直接通ることはできず、ハナダシティ東側の泥棒に入られた民家を抜ける裏道を通って進む構造になっている(後述) 。
東には9番道路への出口があるが、ここも序盤では細い木(いあいぎりの木)に塞がれており、後に「いあいぎり」のひでんマシンを入手してから通れるようになる。
北には24番道路(通称:ゴールデンボールブリッジ)と25番道路が伸びており、岬の小屋「みさきのこや」(英名:ビルの家)がある。

個人の民家(しかも窃盗に入られた)を介さないと街から出られないって、今冷静に考えるとぶっ飛んでいる(笑)
街の中心部にはポケモンセンターやフレンドリィショップ(道具屋)があり、南西にはハナダジム(ハナダシティジム)が構えている。ハナダジムは水タイプ専門のジムで、屋内プールのような構造のフィールドに足場が浮かぶデザインになっており、水中を思わせる演出が特徴的。
街の南東にはミラクルサイクル(自転車屋)があり、店内には高級自転車がずらりと展示されている。(脅威の1台100万円)
建物の屋根は他の街同様にその街のテーマカラーで彩られており、ハナダシティでは爽やかな水色の屋根が印象的。街の北西端には洞窟の入り口があり、ゲーム終盤に殿堂入りを果たした後でハナダのどうくつと呼ばれるダンジョンに入れるようになる。
この洞窟は「伝説のポケモン」ミュウツーが生息する場所として知られ、行くにはなみのりが必要になるなど特別な条件が課されていた。
このようにハナダシティは、水路に囲まれた地形と相まって「花咲く水の町」とも称される、美しくも神秘的な雰囲気を持った街である。
序盤の難関ジム:カスミとの本格バトル

ハナダシティが主人公にもたらす最大の試練は、なんといってもジムリーダー・カスミとのポケモンバトルだろう。物語序盤で挑むことになるハナダジムは、ニビシティのタケシ戦に続く2つ目のジム戦だが、多くのプレイヤーにとって最初の本格的な壁として記憶されている。
カスミは「おてんば人魚」の異名を持つ水タイプのエキスパートであり 、その手持ちポケモンはヒトデマンと強力な進化形のスターミーである。スターミー(Lv21)の能力値は序盤としては飛び抜けて高く、使用するバブルこうせんはタイプ一致の威力もあって驚異的な破壊力を誇った。
プレイヤーのポケモンのレベルが上回っていてもスターミーのバブルこうせんで瞬殺されることさえ珍しくなく、初見プレイヤーは文字通り洗礼を浴びる形になる。
とくに、最初のパートナーにヒトカゲ(ほのおタイプ)を選んだ場合、このジム戦は非常に厳しい戦いとなった。草やでんきタイプなど有利を取れるポケモンがいないと、スターミーの高いスピードと特殊攻撃に押し切られてしまいがち。
実際、当時のプレイヤーの中には「ヒトカゲを選ぶとカスミで詰む」といった噂が広まったほどで、攻略のためにトキワの森でピカチュウを粘って捕まえたり、マダツボミなど草タイプ技を使えるポケモンを育成する人もいた(それでもバブルこうせん一発で倒されるという声も) 。
このようにハナダジムのカスミ戦は初代ポケモンにおける序盤の難関として語られ、プレイヤーにタイプ相性の重要さと戦略の大切さを思い知らせる場面となった。(ピカチュウでも信じられんほどにキツいが)

筆者は基本的に御三家選択でヒトカゲを選んでいたため、毎回毎回苦戦しておりました(笑)攻略法はレベル差の暴力で!!
カスミに勝利すると、トレーナーにはブルーバッジが授与される。ブルーバッジを手に入れることで、当時はレベル30までの交換ポケモンが言うことを聞くようになり、かつフィールド上で秘伝マシン「いあいぎり」を使用する資格が与えられる(後述するように、この時点ではまだ秘伝マシンそのものは未入手)。
さらにカスミからはごほうびとしてわざマシン11「バブルこうせん」が貰える。
ハナダシティに登場する人物たち
ジムリーダー・カスミとハナダジムの人々

ハナダジムのリーダーであるカスミは、4人姉妹の末っ子で明朗快活な少女。
ゲーム中ではジム内部の水辺ステージで主人公を待ち受けており、対戦前には「みずタイプポケモンで攻めて攻めて……せめまくること!」という自らのバトルポリシーを語る。
カスミに挑戦するまでに、主人公はまずジム内の女性水泳選手(ミズギのお姉さん)や水着を着た男性トレーナー(かいパンやろう)といったジム所属のトレーナー数名との前哨戦をこなす必要がある。
彼らも水タイプポケモンを使うため、ここででんきタイプやくさタイプの技の有効性を学べるようになっていた。もっとも、最終的に待つカスミのスターミーの強さは別格で、前述したように多くのプレイヤーが手こずることになるのだが…。カスミに勝利した後は彼女から晴れてブルーバッジを受け取り、次の目的地へと進むことになる。
ジム以外でハナダシティに関わる人々としては、実はカスミの家族やジムの同僚についてゲーム中で直接言及されることはほとんどない。
彼女の姉たち(サクラ・アヤメ・ボタン)については公式設定では存在するが、初代『赤・緑』ゲーム内には登場せず、アニメ版で詳細に描かれることになる(後述)。
ゲーム『ピカチュウ版』ではジム戦前イベントとしてカスミが「世界の美少女」と自称して登場するシーンが追加されており、アニメの影響が逆輸入された形で彼女のキャラクター性が強調されている。

本当に信じられないくらいの余談なんだけど、最近ポケポケで「カスミ」の⭐︎2をトレードでゲットしました(笑)まさかの中国語!!

民家の人々とロケット団イベント

ハナダシティでもう一つ重要な人物イベントと言えば、民家で発生するロケット団の泥棒事件だろう。街の北東にある一般民家では主人公が到着した時点で何者かに荒らされており、家の前には警察官(おまわりさん)が立っており、警戒を続けている。
この警官は最初、民家の入口を身体で通せんぼする形で中に入れないようにしているため、主人公は直接民家に立ち入ることができない。
しかしカスミ撃破後、さらに北の25番道路でポケモンマニアのマサキと出会いイベントをこなすと状況が一変する。マサキからクチバシティ行きの「ふねのチケット」(サント・アンヌ号の乗船券)を受け取ってハナダシティに戻ってくる頃には、先ほどの警官が入口から少し脇に避けており、民家の中に入れるようになっている。
どうやらマサキのイベントを終えたことでゲーム上のフラグが立ち、警官が動いて道を開ける仕組みになっているようだ。
民家の中に入ると、室内は荒れ放題で家主(中年の男性)が嘆いている。話を聞くと「ロケット団に入られて、大事にしていたわざマシン28(あなをほる)を盗まれた」とのこと。床には穴まで空けられており、犯人は壁の穴から逃げてしまったようだ。

主人公はその穴を通って民家の裏手に出ると、そこに逃走中のロケット団したっぱ(グレン隊員風の黒服男性)が潜んでいるのを発見する。
彼に話しかけるとバトルになり、見事倒すと「しゃあねえ、わざマシンは返すぜ」と観念し、盗んだわざマシン28「あなをほる」を渡して来る。
こうして事件は解決するが、ロケット団員はそのまま逃亡してしまい、家主に盗まれた品を返すかどうかはプレイヤーの判断に委ねられる(実際にはゲーム上、家主に話しかけても何も起こらず、盗品だったあなをほるはそのまま自由に使えてしまう…)。
なお、このイベントの最中に主人公の手持ちアイテムが一杯だと、ロケット団員が「あれ、持ち物がいっぱいだと…これ渡さないと俺逃げられないよ!」と愚痴りながらその場から消えなくなるという会話が聞ける。
いずれにせよ、ハナダシティは物語中でロケット団の悪事に初めて直接触れる街でもあり、単なる水の都の平和なイメージとは裏腹に、こうした事件が発生する緊張感も孕んでいる。
そのほかの街の人々

ハナダシティには他にも主人公に役立つ情報を与えてくれる住人がいる。
ポケモンセンター左隣の家にはポケモン交換おじさんが住んでおり、話しかけるとなんとこちらのニョロゾと自分のルージュラを交換してくれるという提案を受けられる。
ルージュラは通常プレイでは出現しない珍しいポケモンなので、当時この交換で初めて入手したというプレイヤーも多かった。交換でもらったルージュラには「まさこ」というニックネームが付いており、交換NPCの個性がうかがえる場面でもある。
また、ハナダシティにはバッジマニアと呼ばれる老人も暮らしている。彼は各地のジムバッジに並々ならぬ興味を示す人物で、主人公がバッジを集めるとリアクションを返してくれる隠れキャラ的存在である。
彼の家の裏庭には隠しアイテムのふしぎなアメが埋まっているなど、小さな発見要素もあった。さらに街の入口付近にいる少年からは「この先のゴールデンボールブリッジで5人抜きすれば賞品がもらえるらしいよ」といった噂を聞けたりと、北の24番道路に関する情報提供も受けられる。総じてハナダシティの人々は、旅の合間に主人公へ交換や豆知識を提供してくれる存在として機能しており、水の都の賑わいを演出している。

筆者を含め、バッジオヤジの話をろくに聞いたことないプレイヤーは相当数いるはず(笑)
ゲーム進行上のハナダシティの役割
ジム攻略と「いあいぎり」入手への道筋
ハナダシティでカスミからブルーバッジを獲得したことで、物語の次なる目的地は南のクチバシティへと移る。ジム戦後に北のマサキから入手したふねのチケットを使い、クチバシティの港に停泊する豪華客船サント・アンヌ号へ乗り込むのがシナリオの流れ。
サント・アンヌ号では船長から秘伝マシン01「いあいぎり」を譲り受けることができ、これによって初めてフィールド上の細い木を切り払い、行動範囲を広げることが可能となる。
実際、ハナダシティ東口を塞いでいた木もいあいぎりで除去できるようになり、先に進めなかった9番道路方面(岩山トンネル方面)への道が開通する。つまりハナダジム攻略~クチバシシティでのいあいぎり入手までがセットになっており、ハナダシティはゲーム序盤から中盤への橋渡しとなる重要な拠点と言える。
ブルーバッジには前述の通り「いあいぎり」の野生使用許可の他に、「交換ポケモンがLv30まで言うことを聞く」という効果もあり 、以降の冒険で新たな仲間を迎える際に役立つ。ハナダシティで得たものを手に、主人公はクチバジムのマチス戦やその先の冒険へと乗り出していくことになる。
自転車ゲットへの道:ミラクルサイクルと引換券

ハナダシティと聞いて多くのプレイヤーが思い浮かべるのが、自転車イベントではないだろうか。街の南東にある自転車専門店「ミラクルサイクル」では、快適な移動手段である自転車が販売されている。
しかし、その価格はなんと100万円(ゲーム中の通貨単位)と超高額で、主人公の所持金では到底購入できない。実際、ゲーム内の所持金上限が999,999円に設定されており、自転車の100万円は理論上購入不可能というネタ的な価格設定だった。
このためプレイヤーは普通にプレイしていては自転車を入手できず、「どうやって自転車をゲットすればいいんだ?!」と戸惑うことになる。

しかし物語を進めてクチバシティに到達すると、ポケモンだいすきクラブの会長から自転車引換券をもらえるイベントが発生する。引換券さえあれば、ハナダシティのミラクルサイクルでタダで自転車と交換してもらえる。
こうして晴れて主人公は念願のマイ自転車をゲットし、以後の旅をスピーディーに進められるようになる。ハナダシティはこの自転車入手の拠点として機能しており、プレイヤーにとって忘れられない思い出の地となった。
自転車を手に入れた後に再びハナダシティを訪れ、ショップ前で自転車に乗って風を切った時の爽快感は格別だったもの(ゲーム中BGMも専用のサイクリングテーマに切り替わる)。
なお、自転車屋の店主いわく「最近は自転車ブームで在庫がない」とのことで、100万円という値段もあながち冗談ではなかったのかもしれない。
幻のポケモン「ミュウ」をめぐる都市伝説

ハナダシティ周辺には、初代ポケモン当時にある都市伝説が存在した。それは幻のポケモン「ミュウ」にまつわるものである。
ミュウは『ポケットモンスター 赤・緑』の通常プレイでは出現せず、開発段階でも存在が秘匿されていた特別なポケモンだった。
しかし雑誌企画などでその存在が明かされると、子供たちの間では「ゲーム内のどこかにミュウを出現させる裏技がある」という噂が飛び交うようになる。
中でも有名だったのが「サント・アンヌ号から行ける隠しマップ」や「クチバシティのトラックの下にミュウがいる」というデマ。
具体的には、サント・アンヌ号の港からなみのりで沖へ進むと“アジア村”や“南アメリカ”と呼ばれる謎の陸地が現れ、そこでミュウと遭遇できるというものだった。また港に停まっている謎のトラックに「かいりき」を使って動かすと、その下からミュウが出てくるという説もあったという。
当然ながらこれらの裏マップやトラックはデタラメな都市伝説で、実際にはゲーム内にミュウを出現させる正式な方法は存在しない(後に判明したバグ技を除く)
ではなぜハナダシティがミュウの都市伝説と関係があるのかというと、一つには物語序盤~中盤の舞台という点が挙げられる。ミュウの噂が広まった当時、ちょうど多くの子供たちがゲームをプレイしていたのがハナダシティ前後のタイミングであった。
友達同士の情報交換やウワサ話もこの辺りの進行度で盛んに行われ、「実はこの先に裏世界があるらしい」などといった想像が膨らみやすかった。
また、ハナダシティから程近いハナダの洞窟にはミュウのクローンであるミュウツーが隠されていたこともあり、「きっとミュウもどこか近くにいるに違いない」と考える向きもあったのだろう。
実際にはミュウは任天堂の懸賞イベントなどで配布されたごく限られたプレイヤーしか手に入れられない幻中の幻で、当時20名の募集枠に8万通以上の応募が殺到したという記録も残っている。インターネットもなかった時代、子どもたちは雑誌の怪しい投稿や友人のウワサを頼りに、ハナダシティ周辺で夢のポケモン・ミュウに思いを馳せていたのである。

ちなみに筆者の地域で流行ったミュウの都市伝説は、「所持金を1000円ピッタリにしてサファリゾーンの受付に50回話しかけるとミュウが出現する」というものだった(笑)
ハナダシティのBGMと音楽的魅力

ハナダシティの雰囲気を語る上で忘れてはならないのが、ゲーム中で流れるBGM(背景音楽)である。ハナダシティのテーマ曲は、明るく軽快でありながらどこか神秘的なムードも併せ持った名曲として知られている。
作曲者は増田順一氏で、ゲームボーイの限られた音源で水の都の爽やかさを見事に表現した一曲。メロディは澄んだ水がさらさらと流れる様子を想起させるような音使いで、水辺の落ち着きを感じさせてくれる。
ニビシティやマサラタウンの曲がどこか素朴で郷愁的なのに対し、ハナダシティの音楽は少しポップで華やかであり、カントー地方の冒険が本格化していく序章を彩る存在と言えるだろう。
興味深いことに、初代『赤・緑』ではハナダシティとセキチクシティで同じBGMが使われていた。どちらの街も水に縁があり(セキチクシティは湿地帯であり水タイプのジムもある)、この曲調は水辺の情景にマッチするという判断だったのかもしれない。
リメイク版の『ファイアレッド・リーフグリーン』や『ピカブイ(Let’s Go! ピカチュウ・イーブイ)』でも、ハナダシティのテーマは原曲をアレンジした形で収録されており、当時を知るファンには懐かしく、新規プレイヤーには新鮮に響くものとなっている。
特に『ピカブイ』版ではオーケストラ風に生まれ変わり、より一層「水と花の都」の優雅さが表現された。
このハナダシティのテーマ曲は多くのファンから愛されており、ゲーム外でも様々な形で楽曲アレンジが発表されている。公式では「ポケモン サウンドコレクション」やオーケストラコンサートで演奏されたこともあり、ファン有志によるピアノアレンジやリミックスもネット上で数多く公開されている。
例えば、軽やかなピアノで奏でるハナダシティの旋律は原曲の雰囲気を残しつつもどこかノスタルジックで、聴く人に初めて冒険した日の記憶を呼び起こさせる。
水と花のモチーフ:世界観における象徴性
ハナダシティは「水の都」と称されるだけあって、水と密接に結びついたモチーフが街全体にちりばめられている。
まず名前自体が特徴的で、日本語名の「ハナダ」は伝統色の一つ「縹色(はなだいろ)」に由来し、澄んだ水色のことを指している。
縹色はツユクサの花の汁で染めた淡い青色とも言われ、日常では「ハナダ」という言葉に花(はな)の響きも含まれるため、どこか花と清流をイメージさせる美しい地名である。
英語名のCerulean Cityも「セルリアンブルー(澄んだ青色)」から来ており、各国版でも紺碧や空色といった水や空を連想する色名が使われている。こうした色彩名を冠した町々はカントー地方では他にも、マサラタウン(真っ白)、ニビシティ(鈍色=灰色)、ヤマブキシティ(山吹色)など枚挙にいとまがなく、カントーの町名テーマは色で統一されているのが大きな特徴。その中でもハナダシティは、水のように澄んだ青と花のような彩りを合わせ持つ名称であり、まさに水と花の象徴都市と言えるだろう。
街の構造自体も水との関係が深く、町中を流れる水路や、北に向かえば川沿いの道(24番道路)となっている景観は、世界観において「水が豊富な土地」であることを強調している。
ポケモン世界において水は生命や癒やしの象徴でもあり、主人公が冒険の序盤でこの地を訪れることは、一息つけるオアシス的な意味合いもあったのではないだろうか。実際、マサラタウンから荒野や山岳地帯(おつきみやま)を抜けてきた主人公にとって、ハナダシティの水辺と緑は心休まる風景だったに違いない。
一方で、水の穏やかさとは裏腹にハナダの洞窟の存在がこの街を世界観的に特別な位置付けにしている。殿堂入り後にしか立ち入れないこの洞窟は、ミュウツーというシリーズ最強クラスのポケモンが潜む場所であり、ゲームクリア後の裏ボス戦の舞台でもある。
つまりハナダシティは序盤の難関ジムであると同時に、エンディング後には最終試練への入口ともなる二面性を持っている。美しく平和な水の都のすぐそばに、人工ポケモン・ミュウツーが孤独に君臨する闇深い洞窟があるという対比は興味深く、ファンの間では「ハナダの洞窟はかつてミュウツーの実験施設だったのでは?」という考察が生まれたほど。(実際はそんなことはないが…)
フジ博士によるミュウツーの研究がグレンタウンで行われた後、逃げ出したミュウツーが辿り着いたのがハナダの洞窟とも推測されており 、そうした裏設定的な想像力を掻き立てる点でもハナダシティは世界観上特別な意味を持つ街だと言える。
また、ハナダジムのカスミはシリーズを通して水タイプ使いの象徴的存在であり、水ポケモンの魅力を体現するキャラクターである。カスミの名前「霞」も水辺に立ちこめる霞(ミスト)を連想させ、彼女自身が水と密接にリンクしている。
カスミを中心としたハナダシティの描写は、ポケモン世界における水属性のポジションづけをプレイヤーに印象づけ、以降のシリーズでも各地方に水の街・水のジムリーダーが受け継がれていく流れを作った。
例えば、ジョウト地方のアサギシティ(水辺に面した港町)や、ホウエン地方のルネシティ(水上に浮かぶ街)など、各作品で水に関する街やジムが登場するが、その原点にあるのがハナダシティである。
水と花というテーマ性、美しい景観と秘められた謎――ハナダシティはポケットモンスターシリーズにおいて、単なる一地方都市以上の象徴的な意味合いを帯びた存在なのである。
他メディアにおけるハナダシティの描かれ方
アニメ『ポケットモンスター』でのハナダシティ
ゲームだけでなく、アニメシリーズにおいてもハナダシティは重要な舞台として登場する。主人公サトシの旅仲間であるカスミの故郷がハナダシティであり、ハナダジムは彼女と3人の姉(サクラ・タムラ・ボタン)が運営するジムとして描かれた。
無印アニメ第7話「ハナダシティのすいちゅうか(=水中花)」では、サトシがハナダジムのジムリーダーに挑戦するため訪問するが、そこではカスミの姉妹(通称ハナダジムのプリティー(三姉妹))が水中バレエショーの花形として登場する。
彼女たちはバトルよりショービジネスに夢中で、最初サトシに対して「あんたもバッジが欲しいの?しょうがないからあげちゃおうか」と、まともに戦わずバッジを渡そうとするほど呑気だった。
そこへカスミが現れて「それじゃ私が相手になる!」と宣言し、ゲーム同様にサトシ vs カスミのジム戦が繰り広げられる。アニメ版のカスミはトサキントやヒトデマン、スターミーを繰り出し、サトシのピカチュウと激しいバトルを展開した。
しかし戦いの途中でロケット団(ムサシ・コジロウ・ニャース)が乱入し、ジムの水槽を利用してポケモン泥棒を企てるというハプニングが発生する。サトシとカスミは協力してロケット団を撃退し、ジムを守り抜いた。その功績を称えて、カスミの姉たちは正式にカスミからサトシへブルーバッジ(カスケードバッジ)を授与する。
こうしてサトシはジム戦には実質引き分けだったものの、無事にバッジを手に入れることができた。この一連のエピソードは、ゲームとは異なるアニメならではの展開としてファンに強く印象付けられている。
水中ショーの華やかな演出や、カスミ姉妹のコミカルなやり取り、そしてカスミ自身の「ハナダジムも守れないで旅になんて出てられない!」というジムリーダーとしての責任感など、ハナダシティのアニメ描写は非常に賑やかでドラマチックである。
これらのアニメエピソードによって、ハナダシティ=カスミ&華やかな水のステージというイメージが多くの視聴者に刻まれ、ゲーム以上に「花と水の都ハナダ」の魅力が伝えられたと言えるだろう。
最後に
以上、初代『ポケットモンスター 赤・緑』に登場するハナダシティについて、地理や構造、登場人物から音楽や象徴性に至るまで詳しく解説しました!
水色の屋根と清流に囲まれたこの街は、主人公に試練と成長をもたらし、多くの思い出を刻んで来た。
カスミとの熱いバトルやロケット団事件、自転車を手に入れた喜び、そしてミュウに憧れたあの頃の気持ち――ハナダシティはまさに「花咲く水の街」というキャッチコピーに相応しく、ゲーム世界とプレイヤーの心の中で色褪せることのない輝きを放ち続けている。
今後もリメイクや新たなメディアでその姿を見る機会があるかもしれないが、いつまでも変わらない水のせせらぎとともに、ハナダシティはポケモン史に残る象徴的な都市であり続けるだろう。
