【ポケモン赤緑】トキワシティとは?|赤緑の“始まりと終わり”を結ぶ常盤色の街を徹底考察

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常盤色の街「トキワシティ」とは – ポケモン赤・緑における役割と魅力

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地理と街の構造

トキワシティ(英語名: Viridian City)は、カントー地方西部にある小さな街。南の1番道路を通じて主人公の故郷マサラタウンと繋がり、北へ進めばトキワの森を経てニビシティ(最初のジムがある街)に至る。

さらに西の22番道路を進めばポケモンリーグ受付ゲートがあり、カントー地方のチャンピオンロードへと続いている。

地理的にトキワシティは冒険の出発点とゴール地点を結ぶ要衝であり、旅の序盤と終盤の両方で訪れることになる特徴的な街である。

街の規模自体はカントーの他都市と比べると小さめだが、ポケモンリーグ(セキエイ高原)にもっとも近い街でもある。そのため物語の後半では、各地の強豪トレーナーがポケモンリーグ挑戦の途上に立ち寄る場所にもなる。

実際、『ポケットモンスター金・銀』の3年後の世界ではトキワシティに「トレーナーハウス」という交流施設が建設され、リーグに近い街としての立ち位置が強調されている。

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主な施設と構造

トキワシティは旅立ち後に主人公が初めて到達する都市であり、ゲーム進行上重要な施設が一通り揃っている。

  • ポケモンセンター
    • 初めて利用できる回復施設。 手持ちポケモンを無料で回復できる場所で、長旅に欠かせない。赤緑ではここでポケモンセンターの存在を学び、冒険の基本を覚える。
    • アニメ版では特徴的なドーム型の外観で描かれ、視聴者に強い印象を残した。
  • フレンドリィショップ(道具屋)
    • 冒険初期の買い物拠点。 モンスターボールやキズぐすりなど基本アイテムを販売している。
    • 初訪問時には店員からオーキド博士への『おとどけもの』を頼まれ、届けるまでお店は営業停止になる。このおつかいイベントを通じて主人公はポケモン図鑑を入手し、本格的な旅が始まる。
  • トレーナースクール
    • ポケモンバトルの基礎知識を学べる場所。 民家の一つは塾のような造りになっており、黒板を調べると状態異常やトレーナーの心得といった基本情報を得られる。
    • 後のシリーズに登場する「ポケモン塾」や「トレーナーズスクール」の原型とも言える施設。
  • ニックネーム好きの親父
    • ポケモンにあだ名を付けて楽しむ人物が暮らす家。 この家にいる中年男性は自分のオニスズメに「オニチャン」というニックネームを付けている(3年後の『金銀』ではコラッタの「コーチャン」も増えている)。
    • 特にゲーム進行に影響はないが、ポケモンにニックネームを付ける文化を示す遊び心あるNPCである。
  • 南西の池とわざマシン入手ポイント
    • 街の左下には池と細い木に囲まれた区画があり、いあいぎり(またはなみのり)で進入できる。そこに立つ男性に話しかけると、初代~第4世代ではわざマシン「ゆめくい」を貰える。
    • 序盤ではアクセスできず、後に探索要素として機能する。
  • トキワジム
    • 街の北西に位置するポケモンジム。 カントー地方で最後(8番目)に挑戦可能となるジムで、バッジ7個を集めた後に扉が開く。
    • 初訪問時には鍵が掛かっており中に入れない。このジムについては後述の「ゲーム進行上の役割」の項目で詳しく解説。

街並み自体は緑に囲まれた静かな雰囲気で、一般民家も数軒存在する。家々の屋根は街のイメージカラーである緑色で統一されており 、文字通り「常盤(ときわ)色」に彩られた町並みを演出している。

ゲーム内のタウンマップ説明でも「一年中 花が咲く 自然を愛する町」と紹介されており 、草木が茂る長閑なロケーションが強調されている。まさに旅立ちの緊張を和らげてくれるような、穏やかな空気感の街と言える。

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冒険の始まりと終わりを彩る街

トキワシティは主人公にとって最初期と最終盤の双方で重要な意味を持つ街。序盤ではマサラタウンから出発して最初に辿り着く町として、冒険の門出を象徴している。

一方、物語終盤には8個目(最後)のジムバッジを得るため再訪することになり、旅の締めくくりを飾る舞台となる。このように物語の円環構造の中核に位置するのがトキワシティである。

序盤:初めて訪れる都市として

物語序盤、主人公は1番道路を北上してトキワシティに到着する。ここで初めてポケモンセンターとショップの存在を知り、いよいよ「旅が始まった」と実感するプレイヤーも多いだろう。

ところが、街の北側出口には酔っ払いのおじいさんが道に倒れ込んでおり、「ワシの話を聞け!(多分そう言ってる?)」と主人公を引き止めて先に進ませてくれないん(※彼は元凄腕トレーナーだったという設定も語られる )。

このため主人公はいったん引き返し、ショップで依頼された荷物を持ってマサラタウンのオーキド博士のもとへ戻ることになる。おじいさんが道を塞ぐこのコミカルな演出により、ゲーム序盤の目的が示されると同時に物語のチュートリアルが提供されている。

💬「かつて」ってことはトレーナーにも年齢による衰えがあるんだわな(笑)

オーキド博士への届け物イベントを終えて再びトキワシティに戻ってくると、おじいさんは酔いが覚めて道端に立っており、今度は「ポケモンの捕まえ方」を実演で教えてくれる。

初代『赤・緑・青』ではここで野生のビードル捕獲シーンを見ることができた(ピカチュウ版ではコラッタに変更)。彼の捕獲指南は、ゲーム序盤における有名なイベントであり、多くのプレイヤーにとって懐かしい思い出だろう。

💬「えっ!酔っ払いジジイ、モンスターボールを50個も持ってる!羨ましい!!」と思ったのは俺だけじゃないはず。

トキワシティでは序盤にジムを発見できるものの、前述の通り入口が閉ざされており中に入れることができない。「扉には鍵がかかっている…」というメッセージを見て、不思議に思ったプレイヤーも多いはず。

この段階でジムに挑戦できないため、主人公はやむなく次の目的地ニビシティへ向かうことになる。こうしてトキワの森を抜けてたどり着くニビシティで最初のジムリーダー・タケシとの戦いが待っている。タケシは岩石タイプ使いの強敵だが、彼とのバトルを通じてプレイヤーはジム戦の手応えやバッジ獲得の達成感を初めて味わうことになる。

興味深いのは、本来「最初の街」にあるはずのジムがトキワシティでは封印されており、プレイヤーは一旦次の街へ行ってから初ジム戦を経験する点である。これはゲームデザイン上、物語の序盤における盛り上がりを一つ先送りし、後述する物語終盤への伏線としている。

終盤:最後のジムとして再訪

7つのジムバッジを集めカントー各地を巡り終えた主人公は、物語のクライマックス直前に再びトキワシティへ戻って来る。

閉ざされていたトキワジムの扉はいよいよ開かれ、8人目にして最後のジムリーダーに挑む時が訪れる。久々に訪れた街並みやBGMは旅立ち当初の記憶を呼び起こし、プレイヤーに一種の郷愁と高揚感を与える。

最後のバッジをこの馴染みの街で手に入れる」という演出は、ゲームの物語構成として非常にニクい粋な計らいである。

トキワジム内部は他のジムと一線を画す仕掛けが施されている。床にはロケット団アジトでも見られた矢印型の高速移動パネルが敷かれ、挑戦者はクルクルと滑らされながらジム内を進むことになる。

ジムトレーナーも手強く、中にはじめんタイプ専門ジムにもかかわらずかくとうタイプ使いのトレーナーが混じっているなど、一筋縄では行かない。ジム内には珍しく落ちているアイテム(げんきのかけら)もあり、最終ジムならではのダンジョン的な趣向と言えるだろう。

そして何と言っても衝撃的なのが、ジムリーダーの正体がロケット団ボスのサカキであったこと。序盤から各地で暗躍し主人公と対立してきた悪の組織ボスが、実は最後のジムリーダーという立場で待ち受けていた展開は、多くのプレイヤーに驚きをもって迎えられた。

サカキとのジム戦は事実上ロケット団との最終決戦でもあり、彼を打ち破ると感謝の意と共にグリーンバッジ(8個目のバッジ)が手渡される。直後にサカキは「ロケット団解散」を宣言し姿を消してしまい 、物語上の因縁にもここで決着が付く。

このようにトキワシティは、主人公の冒険の序盤と終盤で円環構造的な体験を提供している。初めての旅立ちで訪れた何気ない田舎町が、最終的に最大の試練の場となることで物語に一本芯が通り、プレイヤーに「一周して故郷近くに帰ってきた」ような不思議な感動を与える。

ゲームクリア後に改めて街を歩けば、旅の思い出が去来し、まさに常盤色の名が示すように色褪せない冒険の記憶を感じることだろう。

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登場・関連人物とエピソード

トキワシティおよびその周辺では、物語序盤から終盤にかけて様々なキャラクターとの出会いやイベントが用意されている。

ここでは特に印象的な人物やエピソードをピックアップして簡単に解説していく。

オーキド博士

トキワシティ自体には登場しないが、ショップ店員から依頼されるお使いイベントを通じて彼の存在感が示される。

博士に荷物を届けた際、主人公とライバルにポケモン図鑑を託す重要なシーンが展開し 、以降の冒険の大きな目標(図鑑完成)が提示される。この序盤イベントはプレイヤーにゲームの目的を理解させると同時に、オーキド博士というポケモン研究の権威のキャラクターを印象付けた。

酔っ払いの老人

トキワシティ北出口で主人公の行く手を阻む名物NPC。序盤では泥酔状態で道に寝込み「まちやがれ!ワシのはなしをきけ!」と絡んで来るが、ポケモン図鑑入手後には正気に戻りポケモン捕獲チュートリアルを行ってくれる。

この老人はゲーム史に残るチュートリアルキャラとも言え、初代発売当時から語り草になっている。

なお彼は「昔は名トレーナーだった」らしく、続編の『金銀』でも健在だが年には勝てず弱気な発言も見られる。

ライバル(グリーン)

主人公の幼馴染であるライバルも、実はトキワシティ近辺で何度か顔を合わせる。

物語序盤、トキワシティ到着後に西の22番道路へ寄り道するとライバルとの隠しバトルイベントが発生する。手持ちポケモンが十分育っていないうちに挑むと不意打ちを食らう形となり、負けてしまったプレイヤーも多かったことだろう。(この戦いはスルー可能な任意イベントです)。

また全バッジ取得後、ポケモンリーグを目指して22番道路を進む際にもライバルが現れ、最後の関門として勝負を仕掛けて来る。

この時ライバルは一足先に8個目のバッジを入手済みであることが示唆され、先回りされた悔しさと彼の実力を思い知らされる。ライバルとの競い合いはゲーム全編を通じたテーマであり、トキワシティ周辺でのこれらのバトルは物語に緩急を付ける役割を果たしている。

ジムリーダー・サカキ

トキワジムのリーダーにしてロケット団のボス。終盤まで正体が伏せられており、主人公はシルフカンパニーやポケモンの塔など各地でサカキと戦いつつも、彼がジムリーダーとは気付かないまま物語が進行する。

8つ目のバッジを求めてトキワジムに入ったプレイヤーは、遂に彼が最後のジムリーダーだと知り驚かされることになる。

サカキとのジム戦は緊張感ある名勝負で、勝利後には彼から「これで思い残すことはない」と言わんばかりにロケット団解散宣言が飛び出す。彼はそのままジムリーダーも引退し姿を消してしまうため、以降のシリーズでも消息不明のまま謎めいた人物である(※『サン・ムーン』で久々に公の場に姿を現したが、それも含め謎の多いキャラ)。

サカキは単なる悪役以上に物語全体の鍵を握る存在であり、最後に主人公の前に立ちはだかる姿はまさにラスボス然としている。

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ゲーム進行上の役割と物語の構造

上述したように、トキワシティはゲームデザイン上重要な仕掛けが施された街と言える。ここではその役割を整理し、物語構成面から考察してみよう!

序盤の導線づくり

トキワシティでは、酔っぱらい老人による通行止めとオーキド博士のおつかいイベントが組み合わさり、プレイヤーを一度マサラタウンへ引き返させる構成になっている。

これにより「図鑑入手」「モンスターボール入手」「捕獲チュートリアル」までを自然に消化させ、準備が整った状態で先へ進ませることに成功している。

仮に老人のブロックが無ければプレイヤーはそのままトキワの森へ進んでしまい、肝心の図鑑もモンスターボールも持たないまま先へ行って混乱しただろう。

この巧みな誘導設計により、トキワシティはゲーム序盤のチュートリアルハブとして機能している。

「閉ざされたジム」による伏線

初見プレイヤーにとってトキワジムが閉まっている事実は強い印象を残す。「なぜ入れないのだろう?」「ジムリーダーは不在なのか?」といった疑問が生まれ、それ自体が物語上の小さな謎掛けになっている。

ゲーム中でも町のNPCが「トキワシティのジムリーダーは留守らしい」などと示唆しており、この伏線はプレイヤーの記憶に残り続ける。

そして物語終盤で再訪した際に「そういえば最初の町のジムがまだだった!」と思い出させ、満を持して謎が回収される快感を与える。結果として、ジムリーダー=サカキという種明かしがより劇的なサプライズとなり、物語のカタルシスを高めている。

円環構造とラスボス戦

トキワシティで旅を始め、トキワシティで最後のバッジを得て旅を締めくくる――この構図は物語の円環性(ループ構造)を生み出し、プレイヤーに深い満足感を提供する。

初代ポケモンは各地を巡る冒険譚だが、最終的に主人公は自分の出発点近くに戻ってくる形になる。

ゲームクリア後にマサラタウンへ戻ると、主人公の母親が「やっぱりお家が一番ね」と言う台詞もあった。このように「出発地点への帰還」が描かれることで物語に一区切りが付き、冒険を終えた充実感と郷愁が演出されるのである。

さらに最後の敵がサカキ=ロケット団ボスであったことは、ストーリー上のラスボス戦とジム戦の統合にもなっており、ゲームデザイン的に非常にスマート。

悪の組織との決着とリーグ挑戦前の最終試練を一つにまとめることで、終盤の冗長さを無くし盛り上がりを凝縮している。トキワシティという場がなければ、サカキとの決戦と8つ目のバッジ獲得は別々のイベントになっていたことだろう。

そう考えると、トキワシティは物語構成の妙において欠かせないピースだったと言える。

常盤色が象徴するもの

常盤(ときわ)」とは常緑樹のように永遠に色あせないことを意味する言葉。トキワシティという名前には「緑、永遠の色」というゲーム中のキャッチフレーズが与えられており 、これは街のテーマカラーが緑であるだけでなく、物語全体の円環や不変性をも示唆しているようにも感じられる。

主人公の冒険が一巡しても尚色褪せず心に残り続けること、あるいはカントー地方における冒険の思い出が永遠であることを、常盤色という言葉が暗示しているのかもしれない。

実際、プレイヤーにとってトキワシティのBGMや景色はゲームクリア後も強く記憶に刻まれ、「あの冒険は今も輝いている」というノスタルジーを掻き立てる。


以上のように、トキワシティはゲーム進行上ただの通過点に留まらない重要な物語装置として機能している。

序盤のチュートリアル、中盤以降の伏線、終盤のクライマックス回収と、絶妙な役割配分によってプレイヤーの冒険体験を支えている。

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音楽と街の雰囲気

トキワシティの雰囲気を語る上で欠かせないのが、街で流れるBGM。

初代『赤・緑』においてトキワシティで流れる曲は、実はニビシティ(隣町)のテーマと同一のもので 、作曲者は増田順一氏。この曲は穏やかでどこか牧歌的なメロディーラインを持ち、序盤の旅路における安堵感やこれから始まる冒険への期待感を表現している。

ゲームボーイのピコピコ音源ながら耳に残る名曲で、静かな田舎町であるトキワシティの空気感とマッチしていた。「花咲く自然の町」という設定 を反映するかのように、どことなく優しく温かみのある音色が印象的。

プレイヤーの中には、このトキワ・ニビシティのBGMを聞くと「いよいよ旅が始まったワクワクを思い出す」という人も多いだろう。また一方で、物語終盤に再びこの曲が流れたときには、「ここまで来たんだ」という感慨深さが込み上げて来たりも…。

ゲーム音楽としての完成度はもちろん、プレイヤーの思い出と結びついた感情喚起力の高いBGMと言える。

このテーマ曲は後の作品でも様々にアレンジされて受け継がれています。たとえば『ポケットモンスター 金・銀』ではカントー地方再訪シナリオにおいて、初代曲をゆったりとアレンジしたバージョンが流れる。

赤緑当時よりも落ち着いたテンポに変化しており、どことなく寂しさや懐かしさを感じさせる曲調になっていまた。これは「かつて賑わっていた街が静かになった」という物語設定とも相まって、時間の経過を感じさせる演出となっている。

実際に幼少期に赤緑を遊んだプレイヤーからは「3年後のトキワシティの曲を聞いて無常を感じた」などの感想も見られた。楽面でも常盤色=永続性やノスタルジーが巧みに表現されているわけである。

リメイク作品の『ファイアレッド・リーフグリーン』や『ピカブイ』では、トキワシティのテーマは現代風にリアレンジされつつもしっかり収録されている。特にNintendo Switchの『ピカブイ』では原曲を全編オーケストラ風にアレンジしており 、ストリングスや木管楽器の生演奏による厚みのあるサウンドが楽しめる。

8bit音源のシンプルな旋律が、オーケストラによって壮大かつ優美に生まれ変わり、懐かしさと新鮮さを同時に感じる仕上がりだった。作曲者の増田氏自身も全面的にアレンジに関与しており、「当時表現しきれなかった音の迫力を存分に出した」と語っている。

さらにメディアミックスとして、アニメ版の英語圏サウンドトラックには「Viridian City」というタイトルのポップソングまで存在する(※「2.B.A. Master」というアルバムに収録)。

これはゲームのBGMとは全く異なるオリジナル楽曲だが、「We’re on the road to Viridian City~♪」と明るく歌われる印象的な曲で、海外ファンには馴染み深いものとなっている。日本では公式には紹介されていませんが、こうした形でもトキワシティの名がポケモン文化に刻まれているのは興味深い点だろう。

総じて、トキワシティの音楽はプレイヤーの記憶と深く結びついた重要な要素。静かながら心地よいメロディは街の雰囲気を見事に表現し、時を経ても色褪せない常盤色のようにファンの心に残り続けている。

公式のコンサートやオーケストラCDなどでこの曲が演奏されると、当時を知る観客から大きな拍手が起こることもしばしばで、ポケモンシリーズを象徴する一曲として愛されていることが伺える。

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アニメ作品での扱われ方

トキワシティは初代ゲーム以降、アニメや漫画、リメイク作品など様々なメディアで描かれて来た。それらの中での扱われ方を見ていくと、作品ごとの個性やトキワシティという街の持つ象徴性が浮かび上がって来る。

アニメ『ポケットモンスター』シリーズでも第2話以降にトキワシティが登場する。主人公サトシが深夜に傷ついたピカチュウを抱えて駆け込んだトキワシティのポケモンセンターは、ゲームとは異なり近未来的なドーム型施設として描かれた。

到着早々、ロケット団ことムサシ・コジロウ・ニャースがセンターに乱入しピカチュウ強奪を企てるなど、街自体は静かながら事件の舞台となった。

ピカチュウはサトシの必死の呼びかけに応え大量の仲間ピカチュウ達と協力して放電攻撃を放ち、結果的にロケット団を撃退。この一件でムサシ達はピカチュウを「ただ者ではない特別なポケモン」と認識し、以降サトシを執拗に追いかける因縁が生まれた 。物語序盤のヤマ場としてトキワシティが選ばれた形である。

シリーズ終盤(第63話「トキワジム!さいごのバッジ!」他)では、ゲーム同様サトシたちは最後のジムがあるトキワシティに再訪する。サトシのライバル・シゲル(ゲームのグリーンに相当)は一足先にジムに挑戦したが、ジムリーダーのサカキが操る謎のポケモン(当時未公開だったミュウツー)に完敗して撤退する。

サカキが出張で不在となった後、急遽ジムを任されたのはなんとムサシ・コジロウ・ニャースだった。サトシは彼らロケット団トリオ相手にジム戦を行う羽目になり、ムサシは反則のオンパレード、挙句にはジムごと爆破しようとする始末で大混乱に陥る(最終的にピカチュウの電撃で爆弾は暴発しジムは崩壊)。

このジム爆破オチはアニメ版ならではのギャグとシリアスを交えた展開で、ゲームにはない大胆なアレンジであった。

後にオレンジ諸島編を経てカントーに戻ったAG編(『アドバンスジェネレーション』)では、トキワジムは再建されており四天王のキクコが臨時リーダーに就任していることが判明する。この設定はゲーム『金銀』におけるキクコ案(没案)を取り入れたとも言われ、ファンサービス的な演出だった。

アニメにおいてトキワシティはサトシの冒険の始点と終点であり、同時にロケット団との因縁が深まる場所として描かれている。マサラタウンから徒歩で半日程度という距離感も語られており 、現実の地理感覚を交えつつ旅のリアリティを持たせる工夫も見られた。

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名前と都市構造に込められたメタ的意義

「トキワシティ(常磐市)」という名前や街の構造には、ゲーム内外の視点で見ても興味深い意味合いが読み取れる。最後にそのメタ的な考察を述べて締めくくろう!

まず名前の由来。先述したように「常盤色(常磐色)」とは茶がかった濃い緑色のことで、松の葉のように年中色褪せない緑を指す。

カントー地方の都市名はハナダ(花田色=水色)、ヤマブキ(山吹色=黄色)、グレン(紅蓮=赤)など色に由来する命名がなされていますが、トキワ(常磐)もその例に漏れない。

英語名のViridian City(ビリジアンシティ)もビリジアンという緑色顔料が語源であり 、各国語でも緑に因んだ名前が与えられている(仏語Jadielle=翡翠色、独語Vertania=フランス語のvert=緑に由来、韓国語Sangnok=常緑の意など )。

このように「緑」=「GREEN」はポケットモンスター第1世代において重要なキーカラーであり、日本では緑版(ポケモン緑)が発売され、英語圏でも『Pokemon Green(緑)』に相当する存在としてブルー版ではなく「リーフグリーン」が後にリメイクで登場しました 。トキワシティの名は、そんなシリーズのテーマカラーを体現した街でもある。

常盤色が象徴する「永続性」「不変」「常緑」というキーワードは、ポケモンという作品の持つ普遍的な魅力にも通じる。発売から25年以上経った今でも、初代カントー地方の物語は色褪せず多くの人に語り継がれている。

トキワシティはその物語の始まりと終わりを結ぶ地点であり、ゲーム中での重要性はもちろんメタ的にもプレイヤーの記憶に永遠に残る場所となった。

ゲームのクリア後、主人公はマサラタウンの自宅に戻ることになるが、その道中必ず通るのがトキワシティ。エンディング後に流れるスタッフロールでは各ジムリーダーたちが紹介されるが、サカキもトキワジムリーダーとして最後に登場し、その背後には常盤色の背景があしらわれている。

これら演出の端々からも、「常盤=永遠不変」というメッセージを制作側が意識していたのではないかと想像できる。

また都市構造の観点では、トキワシティは意図的な未完成感を持ってデザインされている点がユニーク。序盤で訪れた段階では老人に阻まれて北へ進めず、ジムにも入れず、西の関所も「ポケモンリーグへの道はバッジが無いと通れない」と門前払いされる。

つまり最初に来た時点では三方すべてが「今は通れません」という行き止まり。そのため一度通り過ぎてしまえば、しばらくの間トキワシティに用はなくなる。

しかし物語が進行するにつれて、かつて行けなかった道が順に開放されて行く。ポケモン図鑑を入手すれば老人が退きトキワの森へ、7つのバッジを得ればジム内部へ、8つのバッジを揃えればポケモンリーグへの関門がオープンする。

最初は未完成だった街が、冒険の進行とともに少しずつ全貌を明らかにしていく構造になっている。このデザインはプレイヤーに常に「あの街にはまだ何かある」と意識させ、適度なモヤモヤを残しながらゲームを進めさせる効果を生んだ。結果、終盤になって「そうだ、トキワシティに戻ろう!」と思わせることに成功している点でゲームデザイン的に秀逸。

さらにメタ的な視点として、トキワシティのモデルになった現実の場所についてファンの間で議論があることも触れておこう。

カントー地方は関東地方がモチーフとされ、例えばマサラタウン=静岡県あたり、トキワシティ=東京都の西の郊外(多摩地域)や神奈川あたりではないか…という説がある。一部では「常磐」という地名から茨城県常磐線沿線かと思いきやカントーの地理的にはそれはずれており、むしろ「常磐=永遠の緑」から富士山麓の常緑樹林をイメージしたのでは、など様々な推測が飛び交っている。

公式に明言はされていないが、トキワシティという名称は東京の「常盤台」や港区の「常盤橋」などから着想を得た可能性も指摘される。しかしこれらはあくまで憶測の域を出ない。

重要なのは、トキワシティというフィクションの街が現実の風景を感じさせるリアリティを持っていること。ゲーム内の看板に書かれた「トキワはみどり えいえんのいろ」というキャッチコピー は、おそらく子どもには難解で深い意味までは理解されなかっただろう。

しかし、遊び終えた後に振り返ると「確かにトキワシティは永遠の緑だった」と腑に落ちる––そんな不思議な説得力が、この街と名前には備わっているように思う。

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最後に

以上、トキワシティについて地理や役割、人物、音楽、象徴性など多角的に考察してきました!

常盤色の街トキワシティは、ポケットモンスター赤・緑という冒険物語の出発点にして終着点であり、ゲームデザインと物語演出が見事に融合した象徴的な場所。

真面目な魅力と遊び心が同居するその姿は、まさにポケモンという作品自体を映し出す鏡と言えるだろう。

トキワの森の深い緑と共に、これからもトキワシティはファンの心に常緑の思い出として残り続けるに違いない。

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