ゲームボーイ時代を代表するカードゲームとして、今なお多くのファンに語り継がれている『遊戯王デュエルモンスターズII 闇界決闘記』。当時、カードショップに行列ができ、ブルーアイズを求めて子どもたちが走り回っていた——そんな熱狂の真っ只中に登場したのが本作。
収録カード数は前作の約2倍、融合や属性相性システムも改良され、デュエリストレベル・キャパシティといった独自の仕組みも追加。まさに「ゲームボーイでどこまで遊戯王を再現できるか?」に挑んだ意欲作だった。
この記事では、ストーリーからゲームシステム、裏話、当時の社会現象まで総まとめで解説して行く。懐かしさと新たな発見を楽しみながら、あの「熱い1999年」へ一緒にタイムスリップしてみよう!
ゲームボーイ『遊戯王デュエルモンスターズⅡ 闇界決闘記』徹底解説

- 発売日:1999年7月8日
- ジャンル:対戦型カードゲーム
- プラットフォーム:ゲームボーイ/ゲームボーイカラー
- 開発:コナミエンターテインメントジャパン(KCEJ)
- 発売:コナミ(KONAMI)
- 価格:4,500円
序章:ゲーム概要 (ジャンル・基本情報・発売日など)

ゲームボーイ用ソフト『遊☆戯☆王デュエルモンスターズII 闇界決闘記』は、漫画・アニメで人気を博した「遊☆戯☆王」の世界をもとにした対戦型カードゲーム。
シリーズ第1作『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』(DM1)の続編にあたり、1999年7月8日にコナミから発売された。ゲームボーイカラー対応のソフト(GBとの共通カートリッジ)で、1人用のキャンペーンモードのほか通信ケーブルを使った2人対戦にも対応している。
本作は、前作からわずか約7か月後という短いスパンでリリースされた。その間に公式カードゲーム(OCG)の発売が開始され、遊戯王カードのブームが本格化していたこともあり、収録カード数は前作約350種から倍増の約720種に拡大されている。
このカード収録数の大幅アップにより、当時原作漫画やOCGで登場したばかりのモンスターも多数ゲーム内に登場し、ファンには嬉しい内容だった。
ジャンルとしては対戦型カードバトルゲームで、プレイヤーはデッキを組んでキャラクターとのデュエル(決闘)を勝ち抜いていく形式。
基本情報をまとめると、発売元はコナミ、開発はKCEジャパン(コナミコンピュータエンタテインメントジャパン)とI.T.L.による共同制作で、メディアは32メガビットROMのバッテリーバックアップ式カートリッジ。当時の定価は4,500円だった。
また、本作のパッケージにはOCGのプロモーションカードが特典として封入されており、全10種の中からランダムで3枚が同梱されています 。これら特典カードには《究極完全態・グレート・モス》や《ホーリー・ナイト・ドラゴン》など希少価値の高いカードが含まれ、後述するように当時コレクター間で高額取引されるほど話題となった。
こうしたカード同梱の戦略も奏功し、本作は後年までに約110万本というミリオンセラーを達成している。
💬筆者もリアルタイムで買ってもらってプレイして、どこへ行くにもゲームボーイカラーを握りしめてこのゲームをやりまくってた(笑)どこへ出かけるにも遊戯王2。飯を食った後にも遊戯王2。寝る間際まで遊戯王2。そして、やりすぎで怒られるまでがセット。それくらいにハマったゲームだった。
第1章:ストーリーと登場キャラクター

登場キャラクター
本作のストーリーは原作漫画でいうところの『決闘者の王国編(デュエリストキングダム編)』までが舞台となっており、プレイヤーは武藤遊戯(または遊戯と同じ立場のデュエリスト)として島でのカードバトル大会に挑む。
ゲーム内はステージ形式で進行し、ステージ1〜3までのデュエリストに勝利を重ねて行き、ラスボスとしては、決闘者の王国編の黒幕であるペガサス・J・クロフォード(インダストリアル・イリュージョン社社長)との対決が用意されている。
ペガサスを倒してゲームクリア…となるかと思いきや、その後もやり込み要素として隠しデュエリストとの対戦が用意されているのが本作の特徴。
| イメージ | 名前 | ステージ | 人物 |
|---|---|---|---|
![]() | 武藤遊戯 | 1 | 主人公。シリーズの顔で、 ストーリーの起点的存在。 |
![]() | 城之内克也 | 1 | 遊戯の親友。 序盤の良きライバル。 |
![]() | 本田ヒロト | 1 | 遊戯の友人。 最も難易度が低いキャラ。 |
![]() | 獏良了 | 1 | 遊戯と同じく闇の人格を持つ。 |
![]() | 梶木漁太 | 2 | 海デッキを使うデュエリスト。 |
![]() | ダイナソー竜崎 | 2 | 恐竜族デッキを使う パワー型デュエリスト。 |
![]() | 海馬モクバ | 2 | ステージ2では最も難易度が低い。 |
![]() | 謎の腹話術師 | 2 | やや異色なデッキを使うデュエリスト。 |
![]() | 迷宮兄弟・迷 | 2 | |
![]() | 迷宮兄弟・宮 | 2 | |
![]() | インセクター羽蛾 | 3 | 昆虫族デッキを使用。 『地雷蜘蛛』を繰り出す。 |
![]() | 孔雀舞 | 3 | 鳥獣族デッキを使用。 『ハーピィ・レディ三姉妹』を繰り出す。 |
![]() | 闇の プレイヤーキラー | 3 | 闇デッキを使用。 『闇魔界の覇王』を繰り出す。 |
![]() | バンデット・キース | 3 | 機械族デッキを使用。 稀に『デビルゾア』を繰り出す。 |
![]() | 海馬瀬人 | 3 | 遊戯のライバル。 『青眼の白龍』や『メテオ・ブラック・ドラゴン』を繰り出す。 |
![]() | シモン・ムーラン | 3 | 本作オリジナルキャラクター。 守備力3000の壁モンスターを繰り出す。 |
![]() | ペガカス・J・クロフォード | 4 | 本作のラスボス。 稀に『青眼の究極竜』を繰り出す。 |
![]() | イシズ・イシュタル・ナオミ | 5 | 本作オリジナルキャラクター。 |
![]() | シャーディー | 5 | 「千年アイテム」を持つ謎の多いキャラクター。 |
![]() | 闇獏良 | 5 | 獏良了の闇の人格。 千年リングを持つ。 |
![]() | 闇遊戯 | 5 | 武藤遊戯の闇の人格。 攻撃力2000超えのカードを頻繁に繰り出す。 |
隠しデュエリストに関する逸話
隠しキャラとして登場するのは、原作よりも先にゲームに登場したオリジナル要素の強い面々。
例えば遊戯の相棒である闇遊戯(もうひとつの人格)や闇獏良(獏良了のもうひとつの人格)が隠しデュエリストとして出現。
更には原作初期に登場した謎の人物シャーディー(千年眼を持つエジプトの審神者)も隠し相手の一人。中でも特筆すべきはイシズ・イシュタル・ナオミという女性デュエリストの登場だろう。
この「イシズ」は当時ゲームオリジナルのキャラクターだったが、実は後に原作漫画(バトルシティ編)でイシズ・イシュタールという名で正式に登場することになる人物。
ゲームスタッフと原作者の高橋和希先生との連携によって生まれたキャラクターであり、ゲームから逆輸入される形で原作・アニメにおいて重要な役割を担うことになった点は、当時のファンにとって大きなサプライズだったと言える。
その他のキャラクター
そのほか物語上のキャラクターとしては、遊戯の友人である真崎杏子や遊戯の祖父・武藤双六も登場。
杏子はデュエルに勝利するとご褒美としてランダムでカード1枚をくれる役割で、双六は極めて低確率ながら勝利後に現れて追加のカードをくれる隠しイベント的存在となっている。
これらサブキャラクターの演出も、原作の世界観を再現しファンサービスを盛り上げる要素として懐かしいところ。
総じて、本作では「決闘者の王国」編の熱戦を追体験できるストーリーと、当時としては豪華なキャラクター陣の競演が魅力となっていた。
第2章:ゲームシステムと前作からの進化点

前作DM1はシンプルなルールで、1ターンにモンスターを1枚ずつ出して攻撃力・守備力の数値比較だけで戦うという、いわば「攻撃力至上主義」のゲームバランスだった。
それに対しDM2では、当時の公式カードゲームに近づけつつゲーム独自の要素も加え、戦略性やコレクション性が大きく強化されている。
以下に前作から進化した主なゲームシステムのポイントをまとめてみた。
カード種類の増加
前述の通り収録カード数が約720種類へと倍増した。これにより《ゲート・ガーディアン》や《ハーピィズペット竜》など原作で活躍した大型モンスターから、後にOCGで強力効果を持つ《メタモルポット》《黒き森のウィッチ》のようなカードまで幅広く登場し(ただし、効果はなくただのバニラカード)、デッキ構築の幅が広がった。
カード枚数増加に伴い、カード一覧(かばん)機能も改良され、前作では使いづらかったページめくりが改善されている。
新カードタイプの追加
トラップカード(罠カード)と儀式カードがシリーズで初めて実装された。
トラップカードは相手の攻撃や行動に対して発動でき、防御や切り返しに有用。
儀式カードは特定の生け贄(条件となるモンスター)を揃えることで強力な儀式モンスターを召喚できる(ただしゲーム内で儀式用カードは入手困難で、システムとしてはやや実用性に欠けました )。
これら新カードの登場により、戦術の幅が広がり単調なパワー勝負からの脱却が図られている。
デュエリストレベル&デッキキャパシティ
本作独自のコストシステムとして、プレイヤーに「デュエリストレベル」とデッキの「キャパシティ値」が導入された。
各カードにはコスト(カードレベル)が設定されており、プレイヤーのデュエリストレベルが低いと高レベルのカードはデッキに入れられない。
さらにデッキ全体でも、カードのコスト合計がデッキキャパシティ上限以内に収まらないと編成できない仕組み。
デュエルに勝利したり通信対戦で経験を積むことでレベルやキャパが上昇し、徐々に強力カードを使えるようになる。
このシステムにより、序盤から最強カードを乱用することができなくなり、デッキ構築に戦略性と成長要素が生まれた。対人戦でも互いのキャパシティ上限値を決めて対戦できるため、不公平なデッキパワー差を調整するルールとしても機能した。
融合システムの改良

前作や他機種版の遊戯王ゲーム同様、モンスター同士を融合させて新たなモンスターを召喚するシステムが存在する。DM2では融合召喚がさらに使いやすく改良された。
具体的には、「1ターンに融合できる回数」や「融合直後の行動制限」といったルールが本作では緩和されており、同じターン内で連続して複数回の融合を行ったり、融合で出したモンスターで即攻撃することも可能。
例えば手札のモンスターを次々と融合素材にし、《サンダー・ドラゴン》→《双頭の雷龍》と連鎖的に融合コンボを決めるような芸当も、本作ならではの爽快感だった(公式OCGではありえない動きだが、それだけにゲームオリジナルの醍醐味と言える)。
なお融合素材の組み合わせパターン自体は攻略本等で研究が進み、当時プレイヤー同士で「この組み合わせで〇〇ができる」と情報交換する楽しみも生まれていた。
召喚魔族(属性)による相性システム
本作ではカードに「黒・白・悪魔・幻想」と「土・風・雷・水・炎・森」という独自の召喚魔族属性が付与され 、属性間に優劣関係が設定された。
有利属性が不利属性に対峙した場合、たとえ攻撃力・守備力で劣っていても一撃で相手モンスターを倒せるという逆転現象が起きる。
例えば黒魔族である《クリボー》(攻撃力300)は、白魔族である《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)》(攻撃力3000)に攻撃された際、本来なら瞬殺されるところが、属性相性の優位により逆にブルーアイズを一撃で撃破してしまう…といった具合。
このシステムのおかげで、純粋な攻撃力勝負では太刀打ちできない強敵にも属性を工夫して対処することが可能になり、戦略性が増した。
最強クラスのブルーアイズがまさかクリボーに負けるなんて!
というのは当時のプレイヤーには衝撃であり、ある種ユーモラスな思い出として語り草にもなっている。
魔法・罠カード使用のルール変更

前作では1ターンに出せる魔法カードが制限されていたが、本作では魔法カード(および新登場の罠カード)を1ターンに何枚でも使用可能となった。
さらに毎ターンのドロー補充も改善され、ターン終了時に手札が必ず5枚になるまで補充される仕様になっている。
これにより、一度に複数のカードを使ってもすぐ次の手番で手札が回復するため、デッキを高速回転させてコンボを狙う戦術が取れるようになった。
ただし、この仕様を利用して《火炎地獄》等のダメージ魔法ばかりを詰め込んだ極端なバーンデッキも可能で、CPU戦では39枚の《火炎地獄》(1枚1000ダメージに調整済)を使ったデッキで楽勝できてしまう等の極端さもある。
もっとも、デッキキャパシティやコストの制限から現実には大量投入が難しく、この点は一応バランスが取られていた。
インターフェースと操作性の改善
ユーザー体験の面でも多くの改良が施されている。例えば、Bボタンによるメニュー機能の追加。前作ではデュエル中にBボタンを押すとカード詳細を見るだけだったが、本作ではポーズメニューが開き、任意のタイミングでターン終了を選択できるようになった。
このおかげで毎ターン必ず攻撃または守備表示変更しなければならなかった前作の奇妙な制約は撤廃され、不要なバトルフェイズをスキップして戦略的にターンを送れるようになった。
また、デュエル勝利後のカード入手画面では、入手カードの番号と名称に加え、そのカードの詳細ステータスまで表示されるように変更されている。
これにより「今、手に入れたカードはどんな効果だろう?」と、いちいちカバンから探して確認するといった手間が省けた。
その他、タイトル画面に「はじめから」「つづきから」項目が追加されてデータ初期化が容易になったり 、戦闘演出が高速化してテンポが良くなったり 、カラー対応になったことでグラフィックが色鮮やかになった点も、地味ながら嬉しい改良点。
総じてDM2ではゲームシステム全般が洗練され、遊びやすさと戦略性が飛躍的に向上したと言える。
通信・連動要素
本作は通信ケーブルによる対戦・カード交換に加え、赤外線通信機能(D-トランス)にも対応している。ゲームボーイカラー本体の赤外線ポートを使い、同じDM2同士や他作品との連動が可能だった。
例えば当時コナミから発売されていたゲームボーイ版『ハンター×ハンター:ハンターの系譜』との間で赤外線通信を行うことで、おまけ要素が解禁される仕掛けが存在した(内容はハンター×ハンター側の隠しシナリオで、カード収集をするミニゲームだったようただ )。
一部ではテレビのリモコンの赤外線信号でも代用できたとの報告もあり、妙なところで話題になった。このように通信・連動要素も盛り込まれていたのは、当時のゲームボーイ作品ならではの試みと言える。
パスワード入力システム
OCGの実物カードに印字されている8桁のカードIDをゲーム内で入力すると、対応するカードを入手できるパスワード機能も新搭載された。
友達同士でカードIDを教え合ったり、雑誌に掲載されたID一覧を見てレアカードを召喚する、といった楽しみ方ができるようになり、コレクション要素が強化されている。
ただしパスワードでカードを入手するたびにデッキキャパシティが50減少するペナルティが課されるため 、何度も多用はできない工夫もなされていた。(次作DM3以降ではこのキャパ消費ペナルティは廃止された)
以上のように、前作DM1と比べてDM2はカード種類・ルール・操作性のあらゆる面でパワーアップを遂げている。
結果、単純なキャラゲーに留まらず「カードゲーム作品」としてもしっかり遊べる内容になったことで、当時のファンからも高く評価された(もっとも、後述するように一部にはまだ偏ったバランスや特殊な仕様も残っており、賛否両論点もありました)。
しかし総じて、遊戯王GBシリーズの中でもDM2は遊び応えと快適さのバランスが取れた良作として記憶しているプレイヤーが多いのではないだろうか。
第3章:開発秘話や制作背景
空前の遊戯王ブーム
『遊戯王DM2 闇界決闘記』の開発舞台裏には、当時急速に拡大していた遊戯王ブームとそれに応じた工夫が垣間見える。
まず、本作の開発期間が前作発売から1年足らずと非常に短期間だったことは注目すべき点である。原作漫画でカードバトル路線が本格化し、1999年2月にコナミがOCG(公式カードゲーム)を発売すると瞬く間に社会現象的な人気となった。
コナミはこの波に乗るべく迅速にゲーム続編の制作を進め、DM2発売に合わせて東京ドームでの大規模大会イベントを開催する計画まで立てていたほどである。
実際、ゲーム中の舞台背景にも東京ドームが登場しており、企画段階からイベント連動を睨んだ作り込みがなされていた。短期間での開発ながら、これだけの新要素を盛り込みイベント展開まで用意したのは、当時の遊戯王人気の凄まじさを物語っている。
制作スタッフにも興味深い点がある。本作では原作者・高橋和希先生が「オリジナルキャラクターデザイン」と「オリジナルモンスターデザイン」としてスタッフロールに名を連ねており 、ゲーム用に描き下ろされた新キャラクター(前述のイシズなど)やモンスター図案にも原作者自ら関与している。
加えて、スペシャルサンクスには当時週刊少年ジャンプの編集者(鳥嶋和彦氏や瓶子吉久氏ら)の名前も挙がっており 、漫画原作サイドとの緊密な協力体制でゲームが制作されたことが伺える。
こうした背景があったからこそ、ゲームオリジナルの要素を原作に逆輸入する(イシズの件)といった大胆な展開も可能になったのだろう。
開発スタッフについて
開発元はコナミコンピュータエンタテインメントジャパン (KCEJ) と株式会社I.T.Lの協力体制だった。プログラム面ではスタッフロールによればプログラマーが山田信洋氏と千田卓理氏の2名(うち山田氏はディレクター・ゲームデザインも兼任)と、意外にも少人数であったことが分かる。
短期間で膨大なカードデータや新システムを実装した影には、開発陣の相当な尽力があったはず。実は同じ頃に発売されたコナミの別作品『ハンター×ハンター:ハンターの系譜』も開発をI.T.L.が担当しており、DM2との赤外線連動など技術的仕掛けも共通する部分が見られる。裏を返せば、これら連動要素は販促やクロスプロモーションの意図もあったのだろう。
OCGカードの連動に関する話

また、ゲームとOCGの連動戦略も興味深い制作背景である。前述の通り、本作では前述のパスワード入力によってOCG実物カードとの橋渡しが図られたが、一方でゲーム内で意図的に入手不可とされたカードも存在した。
インターネットが普及した現代ではパスワードの入手は容易だが、当時は友達や知人に聞いたりするしか知る方法がなかった。
さらには儀式カードについても多くがゲーム中未入手で、《究極竜の儀式》などは攻略本で「Vジャンプの情報を待とう!」と書かれていたほど。これらは推測するに、ゲーム発売と平行してOCG商品を売りたいコナミのマーケティングが反映された仕様と言える。
つまり「欲しいカードはパックや攻略本を買ってね」というわけである。ユーザーから見ればコンプリートできないもどかしさもあったが、その戦略のおかげでOCGとゲームの両方が盛り上がった面もあるだろう。
実際、本作発売直後からOCGの売上は急伸し、ゲームで興味を持った子供たちがカードショップに押し寄せるといった現象も各地で見られたらしい。
💬筆者は当時から青眼の白龍(89631139)と、グレートモス(14141448)のパスワードだけは覚えてる(笑)
企画段階から用意されていた東京ドーム大会については後述するが、結果的にあの事件(東京ドームの混乱)につながったことも含め、DM2の制作背景には「想像以上の大ブームに対する嬉しい悲鳴」があったように思える。
開発者インタビューの詳細な記録は多く残っていないが、当時を振り返るメディア記事では「コナミにとっても予想を超える反響だった」といった関係者コメントが伝えられている。
ゲームとカードの両輪で爆走した遊戯王現象のただ中で、本作DM2はまさに時代を映す一作だったと言えるだろう。
第4章:発売当時の社会的背景とプレイヤー層・社会への影響
1999年前後の「遊戯王」ブームは社会現象級だった。本作が発売された1999年7月時点で、すでに公式カードゲームは累計数億枚規模で売れ、同年4月からテレビ東京系列でアニメ『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』の放送も開始されていた。
小中学生を中心に「デュエル」が流行語になるほどで、休み時間にはカード交換や対戦に興じる子供たちが溢れていたものだ。
💬(そしてそのカードを没収されるという結末もセット)
そのような中発売されたDM2は、ゲームソフトとしても大ヒットし、前述のように110万本を売り上げ当時のゲームボーイソフト売上ランキングでもトップクラスに入った。ゲーム雑誌のクロスレビューでも遊戯王ファンからの支持の高さが伺え、特典カード目当てでゲームを複数購入する猛者も現れた。
高額取引される特典カード

実際「カード欲しさにソフトを何本も買った」という話は当時の掲示板や友人間の会話でも耳にしたりもあったとか。それほど、同梱カードの魅力=コレクター需要は絶大でした。封入プロモカード10種の中でも、《究極完全態・グレート・モス》や《ホーリー・ナイト・ドラゴン》は特に入手困難(封入率が低い)で、発売直後にはカードショップで1枚3万円以上というプレミア価格が付いたことが報じられている。
後にこれらカードは再録されたとはいえ、当時はDM2同梱版のみの限定イラスト・仕様だったため、コレクター垂涎の的だった。
他にも《ハーピィの羽根帚》《死のデッキ破壊ウイルス》といった強力カードが収録され、特に羽根帚はゲーム内でもOCGでも万能の必須カードとして人気を博し、すぐに制限カードに指定されたほど。こうしたゲームと現実のカードの相乗効果によって、子供から大人まで巻き込んだカードゲームブームがさらに加速して行ったのである。
東京ドームイベントでの限定パックが発売中止に

発売当時のプレイヤー層はやはり小・中学生の男子が中心だったが、公式大会では高校生や大人の姿も見られた。とりわけ、本作発売後の1999年8月26日に東京ドームで開催予定だったイベント『決闘者の祭典 in TokyoDome』は、全国から親子連れが詰めかけ大混雑となりました 。
このイベントではDM2を使ったゲーム大会だけでなく、会場限定の記念カードパック(PREMIUM PACK 1999)の販売も予定されていたため大人気となったのだが、集まった来場者数は主催者側の想定を大幅に上回り、現地スタッフの不手際も重なって限定パック販売が急遽中止されてしまった。
パックを買えなかった子供たちや保護者から怒号が飛び交い、一時は暴動寸前の大混乱に陥る事態に発展してしまう。会場には警備員も配置されていたが、収拾がつかず、イベント自体も早めに打ち切られてしまう結果に。
この出来事は翌日の新聞各紙やテレビニュースでも報道され、「遊戯王カード東京ドーム事件」「東京ドームの乱」などと呼ばれるようになる。
急遽コナミは救済策として、当日会場に来ていた証明(パンフレット等)を送れば限定パックを後日通販で購入できるという対応を発表し事態の沈静化を図った。
それでもこの混乱は社会問題として取り上げられ、「子供のカードゲームに大人も熱狂」「レアカードを求め行列」といった時代を象徴するキーワードで語られた。DM2はまさにこの事件の渦中にあったゲームであり、東京ドーム大会では本作を用いたゲームトーナメント自体も予定されていたが、大会は途中で中止となっている。
大会入賞賞品として用意されていた《ファイヤー・ウイング・ペガサス》《メテオ・ブラック・ドラゴン》など極少数の限定カードは幻となり、その後数枚しか存在しないため100万円単位の価格が付く超レアカード化した(後にレプリカが通常配布されたが、オリジナル版の価値は別格 )。
こうした社会的反響を見ると、本作発売当時の熱気が改めて感じられる。
その後、東京ドーム事件を教訓に大規模イベントの運営は見直され、遊戯王の公式大会は地域ごとの小規模開催へシフトして行った。しかしカードゲーム文化はさらに広がり、子供だった当時のプレイヤーが大人になった現在でも遊戯王を懐かしむ声は根強いものがある。
本作DM2はそうした「あの頃」の記憶と結びついたタイトルであり、ゲーム自体も2025年には復刻版ともいえる『遊戯王 アーリーデイズコレクション』に収録され現行ハードでプレイ可能になるなど、再評価の機会が訪れている。
四半世紀を経ても色褪せない人気と話題性を持つ背景には、発売当時に社会へ与えたインパクトの大きさがあると言える。
カードを通じた友達との交流、大会での熱狂、メディアを賑わせたニュース──DM2はそれらすべての中心にいた、まさに1999年という時代を象徴する一本と言える。
第5章:ユーモア・豆知識(バグ、裏技、話題になった要素など)
最後に、本作にまつわるユニークなトリビアや当時話題となった豆知識をいくつかご紹介します。当時を知る方も「そんなことあったなぁ」と懐かしく思っていただけるかもしれない。
双六じいちゃん出現の噂
勝利後にごく稀に現れる武藤双六(遊戯のおじいちゃん)だが、その出現確率はわずか1/256と非常に低いものだった。
攻略本には「出現するソフトとしないソフトがある」とも書かれていたため「自分のカセットはハズレなのでは?」と疑心暗鬼になる子もいたという。
しかし実際にはROMのバージョン違いは存在せず、全てのソフトでランダムに出現する可能性があることが後に判明している。
当時は友達同士で「俺の所はじいちゃん出た!」「えーいいなあ」と盛り上がったものである。なお双六じいちゃんは登場するとカードを1枚余分にくれる嬉しい存在でしたが、そのレア演出を拝めたプレイヤーはかなり幸運だったと言えるだろう。
💬双六じいちゃんはマジでレアすぎて、持ってる友達を神様扱いしてたよ(笑)
“ブルーアイズ40枚デッキ”バグ
非公式かつ非常識(?)な裏技だが、本作にはなんとデッキが《青眼の白龍(ブルーアイズ)》40枚になるという衝撃のバグ技が存在する。
やり方は非常に特殊で、ゲーム開始時に名前入力を終えた直後にカートリッジを本体から引き抜くという、ハード的に危険な操作を伴うもの。
まるで当時の裏技投稿サイト「ワザップ」に載っていそうなデマ技だが、これはなんと本当に成功することが2020年代になって検証の末確認された。
当時も一部で噂にはなっており「大会でそのデッキは禁止になったらしい」など都市伝説めいた囁きがあった。
実際、大会で使われたという記録は無いものの、40枚全て攻撃力3000のブルーアイズというデッキは想像するだけで凶悪(手札5枚全部ブルーアイズ…!)。
ちなみに本作では同種のカードを上限なく何枚でも投入可能ではあったので、海馬瀬人とひたすら戦っていれば作れるデッキでもある。
さすがに通常プレイで狙うものではないが、後年になってから有志が動画付きで検証報告し、多くの古参デュエリストたちを驚かせたというエピソードである。
💬ただ、、、相手のデッキに1枚でも「黒魔族」カードが入ってたら詰む…..。
パスワードノートと交換会
パスワード入力機能の登場により、当時の子供たちはカードIDの情報交換に熱中した。雑誌の付録にパスワード一覧が掲載されたり、自分でノートにレアカードのIDを書き溜めたりしたものである。
また、入手困難なカードほどID入力に伴うキャパシティ減少ペナルティが大きいため 、強力カードを使うにはデュエリストレベル上げが必要…という点も、当時は気付きにくい仕様だった。
そのため「せっかくブラック・マジシャンのパスワード入れたのにデッキに入れられない!」と戸惑う声もあったが、これも含めて良い思い出である。パスワード機能は以降のシリーズでも継承され、遊戯王ゲームの定番要素となって行った。
最後に
以上、『遊戯王デュエルモンスターズII 闇界決闘記』について、ゲーム内容から当時の熱狂まで幅広く振り返ってみました。
遊戯王黎明期の興奮が詰まった本作は、昔プレイした方にはたまらないノスタルジーを掻き立てると共に、今改めて遊んでみても新たな発見や独特のゲーム性が楽しめる作品である。
当時を知らない方にとっても、「ブルーアイズを倒すクリボー」や「カートリッジ抜きバグ」など驚きに満ちた逸話の数々は、レトロゲームの奥深さを感じさせてくれるのではないでしょうか。
今ならNintendo Switchでこのゲームを遊ぶことができます(メルカリで鬼安い)ぜひこの機会に、平成の遊戯王ブームを支えた伝説的ゲームの魅力を再確認してみてください。デュエルスタンバイ!!






















