1987年、スクウェアは社運を賭けた最後の作品として『ファイナルファンタジー』を世に送り出した。
タイトルに『ファイナル(最後の)』と冠したこのゲームは、発売後に大ヒットを記録し、結果的に最後どころか伝説的シリーズの第一歩となるという嬉しい悲鳴に。
物語の舞台は、火・水・風・土の四大元素を司るクリスタルが輝きを失い、世界が闇に覆われつつあるファンタジー世界。
大地は腐敗し、海は荒れ、風は止み、炎は力を失った。人々は絶望に沈むが、古くからの予言だけが一筋の希望を与えていた。
本記事では、伝説的作品『FF1』のストーリーを詳しく紹介して行こう。
ファイナルファンタジーI:ストーリー解説
序章:闇に沈む世界と光の戦士たち

この世、暗黒に染まりし時、四人の光の戦士、現れん
伝説の予言者ルカーンが遺したこの言葉の通り、世界が闇に染まり始めた頃、クリスタルを携えた4人の光の戦士たちが現れる。
それぞれが戦士・モンク・魔道士などの異なる職業に就いた若者たちだが、彼らには固有の名前や語られる過去がない。プレイヤー自身が名付け、自由にパーティを編成できる彼ら4人こそが光の戦士であり、いわばプレイヤー自身の分身と言える。
無言の主人公たちに自分を投影し、想像を膨らませながら物語を体験できる点は、本作の魅力の一つとなっている。
皆さんは『光の戦士』たちになんて名前を付けましたか…??筆者がFF1を初めてプレイしたのは意外と日が浅く、およそ3年ほど前。俺はそれぞれ、自分・中学の友人・高校の友人・恋人の名前を付けました…(笑)
皆さんも当時、仲の良かった同級生や家族の名前を付けて楽しんでいたのではないだろうか…??
そんな光の戦士たちが最初に訪れたのは、コーネリアという王国。ここから、闇に抗い世界を救う彼らの壮大な旅路が始まるのであった。
第1章:コーネリア王国・旅立ちの序章
かつての王国最強騎士ガーランド
光の戦士たちが辿り着いたコーネリア王国は、美しい城と町を擁するこの世界の中心的な国である。
しかし王国は今、不安に包まれていた。コーネリア王女・セーラが何者かに誘拐され、王や人々は悲嘆に暮れていたのである。

犯人は王国を裏切った元宮廷騎士ガーランド。かつては国一番の実力を誇る騎士だったが、何らかの理由で闇に心を染め、王女を連れ去ってしまう。ガーランドは北のカオスの神殿に立て籠もり、人質の姫を盾に王国を脅迫していた。
王の嘆きに心を動かされた光の戦士たちは、自ら姫の救出に名乗り出る。彼らの手には闇に輝きを失ったクリスタルが握られており、それを見た王は伝説の光の戦士の到来を確信した。王は「救出に成功した暁には国をあげて協力しよう」と約束し、こうして4人は姫を救うべくカオス神殿へ向かうことに。
苔むした廃墟と化したカオス神殿の奥深く、闇の騎士ガーランドは待ち構えていた。ガーランドは鎧に身を包み、不敵な笑みを浮かべて光の戦士たちを嘲る。
姫は返さぬ。我が野望の生贄となるのだ!
――かつて高潔だった騎士の面影はなく、その瞳は混沌の闇に染まっていた。光の戦士たちは勇気を奮い起こし、ガーランドとの戦いに挑むのであった。
新米ゆえの危うさを残しつつも、4人は職業ごとの力を駆使して協力し合う。戦士は渾身の一撃で敵に攻撃を与え、白魔道士は仲間に癒しの魔法を施し、黒魔道士は炎の呪文でガーランドに反撃して行く。
激しい戦闘の末、ガーランドはついに膝をつく。
「ま…さか、この私が敗れるとは…」驚愕するガーランドはその場に崩れ落ち、姫は無事救出されたのだ。こうして光の戦士たちは最初の使命を果たし、城へ凱旋する。
クリスタルの輝きを取り戻す旅

コーネリア城では、王と国民たちが英雄の帰還を歓迎しました。セーラ姫は「ありがとうございます、光の戦士たち!」と感激し、礼として『古いリュート』を差し出す。それはコーネリア王家に伝わる宝物で、未来の戦いできっと役立つだろうと姫は微笑む。このリュートが後に重要な意味を持つとは、まだ誰も知らなかった。
姫を救い出したことで王は約束通り協力を約束し、城の北にある大河に橋を架けさせた。これは王国の北方へ旅立つために不可欠な橋。
光の戦士たちが出発の日の朝、その壮大な橋が完成した。王は「勇敢なる光の戦士たちよ、世界を救う旅路に我らの祈りと祝福を贈ろう」と彼らを送り出す。
4人は朝焼けの中、静かに橋を渡り始める。かつて予言で語られた伝説が、今まさに現実となって動き出したのである。
彼らの心には使命への高揚感と不安が入り混じっていた。しかし振り返れば、救出したセーラ姫が城のバルコニーから手を振っている。の戦士たちは小さく頷き、再び前を向いて歩み始めた。

この瞬間、FF1の物語は幕を開け、本当の冒険が始まりまる。
このシーンと共に流れるお馴染みの楽曲『メインテーマ』が本当に心に刺さるんですよね…。昨今の作品でもこのテーマがエンディングに流れて、「あぁ、、、世界観は全く違うけど、これもFFなんだな、、、」と改めて思わせてくれる俺らにとって特別な楽曲である。
第2章:海を渡りエルフの王国へ…土のクリスタルを求めて
雑魚が取り巻く海賊ビッケ

コーネリア北方の橋を越えた先、光の戦士たちは初めて見知らぬ世界へ踏み出した。広大なフィールドを抜け、東の海岸沿いにあるプラボカという港町にたどり着く。
しかし町は海賊に占拠され、住民たちは怯えて閉じこもっていた。ならず者の海賊たちを率いるのは海賊ビッケ。
酔漢のように訛った口調で威張り散らすビッケは、光の戦士たちを見るなり部下たちに「ひひっ、カモが来やがったぜ! やっちまいな!」と襲撃を命じる。ところが鍛え抜かれた4人の敵ではなく、海賊団はあっという間に打ち負かされてしまう。
ビッケは震え上がり、
お、お頭であるこの拙者を見逃してくだされ!代わりにこの船を差し上げやすから!
と命乞いするのであった。

こうして図らずも一行は一隻の小型船を手に入れ、自由に海を航行できるようになる。
後年のシリーズをプレイした後に本作をプレイした筆者は「えっ?!もう船が手に入るの?!」と心底驚いたものである。
(余談:プラボカの町には倒したはずの海賊がその後も酒場で呑気に飲んでいたりしている。倒された後にしれっと日常に戻るNPCの姿に、思わずクスリとさせられる場面である)
何年も眠り続けるエルフの王子

船出した光の戦士たちは、大海原を南へ進んで行く。やがて深い森に囲まれたエルフたちの国、エルフの王国に到着する。長命なエルフ族が治めるこの国もまた、暗い影に覆われていたのだ。
若きエルフの王子が不可解な呪いによって長い眠りから目覚めなくなっているというのである。城を訪れた4人は、嘆くエルフの大臣や民から事情を聞く。エルフ王子にかけられた眠りの呪いを解くには伝説の薬『目覚めの薬』が必要なのだが、それを調合できる魔女マトーヤの『水晶の眼』が何者かに奪われてしまったため、薬を作れない状況だったのだ。
そして水晶眼を奪った黒幕こそ、ダークエルフの王アストスだという。
アストスは闇の魔力を操る邪悪な妖精王で、エルフ王国を混乱に陥れた張本人だった。更に聞けば、アストスは北西の廃墟西の城に潜み、配下の魔物を使って周辺の人間やエルフを苦しめているとのこと。光の戦士たちは眠れる王子を救うべく、アストス打倒を決意する。
水晶眼の持ち主である魔女マトーヤは、コーネリア北の洞窟に独りで暮らす気難しい人物。4人が訪ねると、マトーヤは、
あー見えん見えん! 私の水晶の眼がないと何も作れんし何も見えん!
と苛立っていあ。魔法の大釜や怪しい薬瓶が並ぶ洞窟内で、彼女の使い魔であるホウキだけが「キキキ…」と怪しく動き回っている。
マトーヤの洞窟にいるホウキたちは不思議な呪文「とくれせんたぼーび」と呟くが、これは逆から読むと『Bボタン セレクト』。ファミコン版FF1でワールドマップ表示の隠しコマンドを示した開発陣の遊び心あるメッセージが込められていた。
西の城へ向かった一行は、朽ちた城内で弱り切った人間の王に出会う。王は「王冠を魔物に奪われてしまった…どうか取り返してはもらえまいか」と懇願する。
不審に思いつつも、光の戦士たちは城の奥深くに隠された財宝王冠を取り戻すために、近隣の沼地の洞窟へ赴く。
この洞窟に生息するグリーンスライムというおバカさんに筆者は大変苦労させられました…。HPが低い・異次元の守備力・魔法防御力が鬼低いという効率的な経験値稼ぎを阻害する害悪モンスターである。
暗くじめじめした洞窟を踏破し、魔物の群れを退けて宝箱から王冠を入手した4人が西の城へ戻ると、王は嘲笑とともに正体を現す。
強力な魔法駆使するダークエルフ・アストス

なんとその王こそがアストスだったのである!
愚か者め、これでエルフの王子も目覚めぬままだ!
鋭い耳を持ち青白い美貌のダークエルフが高らかに宣言すると、強力な闇の魔法で襲いかかって来る。
アストスは老練な黒魔道士でもあり、即死の魔法『デス』等を繰り出してくる。苦戦の末、光の戦士たちは知恵と力を振り絞ってアストスを撃破。彼の野望は潰え、同時に盗まれていた水晶の眼も取り戻すことに成功。

再びエルフの城に戻った彼らは、眠る王子の枕元で目覚めの薬を一滴垂らした。すると長い眠りから解放された王子は静かに目を開ける。
あなた方が私を…光の戦士たちよ、礼を言います。
優雅に起き上がった若き王子は4人に感謝し、褒美として王家の秘宝である『神秘の鍵』を授ける。
この魔法の鍵は、各地の古い扉を開くことができる特別な鍵。実はコーネリア城や西の城にも、この鍵でしか開かない宝物庫があり、中には冒険に役立つ貴重な武具や道具が眠っていた。(ドラゴンクエストの『盗賊のカギ』みたいなやつ)
光の戦士たちは世界各地でこの鍵を用いて宝を手に入れ、さらに旅の準備を整えて行く。その中でも『ニトロの火薬』は重要な品だった。コーネリア城の宝物庫で発見した強力な火薬は、大工事にも使える代物である。
海の水路工事を担うドワーフたち

火薬を携えて次に訪れたのは、ドワーフ族が暮らす南のドワーフの洞窟。陽気で頑丈なドワーフたちは坑道を掘り進めて暮らしているが、海への水路工事が難航していた。
そこで光の戦士たちは、持ち込んだニトロの火薬をドワーフ族の技師ネリクに提供する。ネリクは、
これがあれば岩盤など一爆破よ!
と目を輝かせ、仲間と共にトンネルの壁面に火薬を仕掛ける…。そして轟音と共に大爆発が起こると、岩壁が粉々に吹き飛び、海へ通じる大運河が開通したのだ。かくして、これまで隔てられていた外洋へのルートが拓かれた。
ドワーフたちは誇らしげにヒゲを揺らし、「お前たちの勇気と親切に感謝する!ラリホ!」と独特の挨拶で見送ってくれる。光の戦士たちは新たに開いた運河を抜け、さらに広い世界へ船を進めて行く。
メルモンドに蔓延る不審な影

やがて彼らが辿り着いたのは、土の大陸にある寂れた町メルモンド。そこはまるで死の町だった。大地は不気味にひび割れ、草木は枯れ果て、人々の顔には生気がないのだ。
話を聞くと、
大地が腐り始め、このままでは作物も育たず国が滅ぶ
と嘆いていた。なんでも、近郊の土の洞窟から現れた吸血鬼が土のクリスタルの力を奪い、土地を枯らしているというのです。光の戦士たちはメルモンドの人々を救うため、アースの洞窟へ向かうのであった。


洞窟の中は瘴気が立ち込め、不死のモンスターが蠢いていた。最深部で待ち構えていたのは禍々しいバンパイア。バンパイアはマヒ攻撃で戦士たちを苦しめてくる…と書きたいのだが、あまりの弱さに拍子抜けしたプレイヤーも多いのではないだろうか…。
しかし聖なる力を持つ魔法と剣技によって、ついにバンパイアは滅び去る。ところが、バンパイアを倒しても大地の腐敗は止まらない。不審に思った一行が探索を続けると、地下深くへ通じる石版で封印された扉を発見する。どうやら真の原因は更に奥底に潜んでいるようだ。石版を開く術が無かった彼らは、一度洞窟を後にする。

行き詰まった光の戦士たちだったが、各地を旅する中で出会った賢者サーダから助言を得る。サーダは土の洞窟のさらに下層に邪悪な存在を感じ取っており、「これを使いなさい」と一本の『土の杖』を授ける。
その杖こそが石版の封印を打ち破る鍵なのである。また、戦士たちは土の洞窟で手に入れていたスタールビーを、洞窟近くの岩山に棲む巨人に差し出して道を開けてもらうことにも成功。かくして万全の準備を整え、再び土の洞窟の奥深くへ挑む。
土の杖の力で石版を砕き、地下4階、5階へと降りていったその先で――彼らはついにこの大地を蝕む元凶と対峙する。
土のカオス・リッチ

現れたのは強大なアンデッドの魔人リッチ。腐敗したローブに身を包み、骸骨のような顔貌から凶悪な光を放つ土のクリスタルの守護者である。
リッチは太古より眠っていた土のカオス(四体のカオスの一体)であり、今まさに闇の力で復活を遂げたところであった。
我に挑む愚か者どもよ、永遠の闇に封じてくれよう!
と不気味に響く声と共に、戦いが始まる。リッチは強力無比な雷や氷の呪文を次々と唱え、光の戦士たちを苦しめた。
聖なる魔法でアンデッドの力を弱め、一瞬の隙を突いて渾身の刃を打ち込んで行く。長い死闘の末、リッチは断末魔の悲鳴とともに崩れ去り、闇に覆われていた土のクリスタルが眩い光を取り戻す。
土のクリスタルの輝きが蘇った瞬間、メルモンドの大地にも変化が訪れる。腐敗が止まり、大地からは再び緑が芽生え始めたのだ。町の人々は奇跡に湧き、「光の戦士たちが土の大地を救ってくれた!」と拍手喝采。
一方、土のクリスタルから放たれた光は天高く昇り、どこか遠くの空で共鳴するように輝いて消えて行く。まるで別のクリスタルたちが呼応しているかのように――しかし残る火・水・風のクリスタルは未だ闇のまま。世界を救うには、残る3つの光を取り戻さねばならない。
次回、『』

