モンスターハンターシリーズと言えば、巨大なモンスターを狩るハンターの活躍を描くハンティングアクションとして知られている。
しかし、2016年10月8日に発売された『モンスターハンター ストーリーズ』(略称MHST)は従来とは全く違うジャンルに挑戦した。
本作は「ハンター」ではなくモンスターと絆を結んで共に戦う“モンスターライダー”を主人公としたRPGで、カプコンとマーベラスが開発を担当し、プロデューサーは辻本良三氏。発売はニンテンドー3DS向けだったが、その後スマートフォン版やリマスターが登場し、2024年にはNintendo Switch/PS4/PC向けにリリースされた。
この記事では、本作の概要やストーリー、ゲームシステム、制作スタッフ・開発秘話、そして発売後の評価や反響を掘り下げて行く。ネタバレを含む内容なのでご注意を。
- 発売日:2016年10月8日
- 対応機種:ニンテンドー3DS/Nintendo Switch/PlayStaion 4
- ジャンル:RPG
- 開発:カプコン/マーベラス
- 発売:カプコン
- シリーズ:「モンスターハンターストーリーズ」シリーズ
作品概要
モンスターハンターシリーズ初のRPGである本作は、より幅広い世代にシリーズの世界観を伝えることを目指して企画された。
これまでのアクションゲームでは伝えきれなかった設定や物語をRPGという形式で描きたいという思いから、辻本氏と藤岡氏が構想を練り、大黒氏をディレクターに迎えて開発がスタート。モンスターに乗って冒険できる“もう一つのモンハン”として生まれたのである。
ゲームの世界観とテーマ

物語の舞台は「ハンター」と「ライダー」という相反する価値観が併存する世界。ハンターはモンスターを狩って暮らしているが、ライダーはモンスターと絆を結び、共に生活しながら「オトモン」として育てる。
ライダーが持つ「絆石」を通じてモンスターは秘められた能力に目覚め、背中に乗って移動したり特別な力を発揮したりできる。この「絆」が本作全体のテーマであり、タイトルの“ストーリーズ”には仲間との物語が幾つも紡がれるRPGならではの意味が込められている。
物語には“黒の凶気(黒の狂気)”と呼ばれる謎の災厄が登場する。世界各地でモンスターを凶暴化させ、自然を破壊するこの災厄と対峙することが主人公たちの目的となる。
モンハン本編にも登場するリオレウスやジンオウガなどお馴染みのモンスターが多数登場しつつ、RPGならではの王道ストーリーが展開する。
ストーリー(ネタバレあり)

物語は緑豊かな高地の村「ハクム村」から始まる。主人公は幼なじみのリリア、シュヴァルと森でタマゴを探して遊んでいるとき、輝くモンスターの卵を見つける。
遊び半分で「絆あわせごっこ」をしていたところ、本物のリオレウス(レウス)が孵化してしまう。絆石を持たないのにモンスターを孵したことで村人たちは驚くが、そこへ謎の災厄「黒の凶気」が襲来し、村に住む人々やモンスターに甚大な被害をもたらした。主人公や友人たちの心にも大きな傷が残り、レウスも重傷を負って姿を消す。
一年後、主人公は正式なライダーになるための試練を受ける。絆石を授かった主人公は冒険に出る決意を固めるが、親友のシュヴァルは家族を失った悲しみから別の道を選び、リリアも書士隊として別の土地へ旅立って行く。主人公は謎のアイルー・ナビルーと出会い、新たな相棒として旅に出ることを決意する。
主要キャラクター
| キャラクター | 概要 |
|---|---|
| 主人公(男の子/女の子) | 田村睦心さんほかが声を担当。緑豊かな高地で生まれ育った好奇心旺盛な新米ライダー。プレイヤーが性別や外見を自由にカスタマイズできる。外の世界への憧れから旅立ち、仲間と共に成長していく。 |
| リリア | 髙橋ミナミさんが声を担当。主人公の幼なじみで明るく優しいしっかり者。外の世界に憧れており、途中で書士隊として新天地へ旅立つが、その後も主人公を支える。 |
| シュヴァル | 逢坂良太さんが声を担当。主人公の幼なじみで心優しい少年。家族を失った悲しみから復讐に走り一時敵対するが、絆の力によって救われる。 |
| ナビルー | M・A・Oさんが声を担当。主人公と共に旅をする謎のアイルーで、物語のマスコット的存在。お調子者だが博識で、ドーナツが大好物。実は改造されたアイルー「ナンバーズ5号」であり失われた過去を抱える。 |
| レウス(隻眼のリオレウス) | 主人公が偶然孵化させたリオレウス。黒の凶気に侵されながらも主人公への絆で正気を保つ。物語中盤で再会し、もう一人の主人公と言える活躍を見せる。 |
| アユリア | クアン村出身のライダーで、ベリオロスのオトモン「ヒョウガ」と旅をする少女。ツンデレな性格が人気で、続編『モンスターハンターストーリーズ2』にも登場。 |
| マネルガー博士 | 科学者。禁断の実験により黒の凶気を生み出した黒幕で、ナビルーを改造した張本人。最後は主人公たちに敗れる。 |
ゲームシステム
オトモンを育てるRPG

本作の大きな特徴は、モンスターを「オトモン」として仲間にできる点。巣からタマゴを採取し孵化させることでオトモンが手に入り、ライダーは絆石を介してモンスターと心を通わせる。同じ種類のオトモンでも「絆遺伝子」が異なり、個体差があるのがポイント。
育成面で重要なのが伝承の儀。これは別のオトモンから遺伝子を伝承し、新たな能力を目覚めさせるシステムで、自分だけのオトモンを育てることができる。
カプコンの開発秘話によると、大黒健二ディレクターは遺伝子配列とビンゴゲームの仕組みを掛け合わせることで直感的に理解できるシステムを実現し、ライトユーザーでも楽しめるよう工夫したと語っている。
キャラクターカスタマイズと装備

プレイヤーは主人公の性別や髪型・顔立ち・名前などを自由に設定でき、冒険を自分らしい姿で楽しめる。冒険の相棒ナビルーの衣装も着せ替えが可能で、外見的な遊び心が詰まっている。
装備品はモンハン本編でお馴染みの武器・防具が多数登場し、素材を集めて生産・強化するシステムも健在。剣士系やガンナー系の装備を選べるほか、オトモンのライドアクションに合わせて探索時の移動も快適になる。
クエストとフィールド探索

本作にはストーリー進行を助けるサブクエストや、生産用のクエストが用意されており、アイテム集めや武具の制作を行える。オトモン探検隊やすれちがい通信などを利用して素材やタマゴを入手する要素もあり、育成の幅が広がる。
フィールドは広大で、オトモンごとに異なるライドアクション(岩を壊す・川を泳ぐ・空を飛ぶなど)を駆使して探索する。この探索要素が冒険心を刺激し、単なる移動がアドベンチャーとして楽しめるようになっている。
戦闘システム:三すくみと絆技

戦闘はターン制コマンドバトルで、パワー・テクニック・スピードの三すくみが基本。相手の攻撃傾向を読み、相性の良い攻撃を選ぶことで真っ向勝負に勝ち、絆ゲージを溜めて行く。オトモンとのダブルアクションや部位破壊要素もあり、モンハン本編の駆け引きをRPGに落とし込んだシステムと評価されている。
絆ゲージが最大になると、ライダーはオトモンに乗る「ライドオン」状態になり、一発逆転の必殺技「絆技」を繰り出せる。
例えばリオレウスの「スカイハイフォール」は空から奇襲して全てを焼き払う大技であり、ジンオウガの「クロスハイボルト」は超帯電状態から隕石のように突撃するなど、モンスターごとに迫力ある演出が用意されている。
この絆技こそ、ライダーとオトモンの信頼関係を象徴する要素で、バトルに爽快感とドラマを与えている。
バトルの便利機能と対戦

ゲーム内のバトルはテンポ良く進行できるよう工夫されている。フィールドでモンスターに触れるとバトルが始まり、Xボタンを押すと戦闘の再生速度を2倍速や3倍速に切り替えられるなど、テンポを自分好みに調整できる。
また絆技で戦闘を締めくくると高い評価が得られる仕組みになっており、最後の一撃にも演出面でこだわれる。
ストーリーを進めると解禁される対戦アリーナでは、育てたオトモンを使って他のプレイヤーと対戦することができる。対戦ルールにはレベルを揃えて公平に戦う「フラット」、制限なしで最強の育成をぶつけ合う「ガチンコ」、一本先取で勝敗が決まる「一本勝負」などがあり、自分のプレイスタイルに合わせて楽しめる。
勝利するとタマゴのカケラを3つ、敗北でも1つの報酬が手に入り、対戦後にはライダーカードの交換やフレンド登録も可能。
通信と探索要素
3DS版ではインターネット通信を使ったオンライン対戦のほか、すれちがい通信にも対応している。すれちがい通信を利用すると「ライダーカード」や「すれちがいダンジョン」を交換でき、知らないプレイヤーとの出会いが冒険を広げる。
自分のパーティに入れていないオトモンを派遣して素材や経験値を集めてくれるオトモン探検隊もあり、効率よく育成を進められる。
ゲーム内には数多くのサブクエストや武具素材を集める生産クエストが用意され、クエストボードから気軽に受注できる。クエストは単調な素材集めだけでなく、特定モンスターの討伐や納品など多彩で、寄り道の楽しさを提供している。
絆遺伝子の奥深さ
オトモン育成の核である「絆遺伝子」と「伝承の儀」は、遺伝子配列とビンゴゲームの仕組みを掛け合わせた独特のシステムで、同じモンスターでも遺伝子の並び方によって性能が大きく変化する。
9つの遺伝子スロットを縦・横・斜めに揃えることでビンゴボーナスが発生し、同じ属性や3すくみアイコンを揃えると攻撃力やHPが大きく上昇するのが面白いところ。
大黒ディレクターはこのシステムがライトユーザーにとっては直感的で分かりやすく、ヘビーユーザーにとっては無限のやり込み要素を生み出すと語っている。
登場モンスターとオトモン

ストーリーズには、シリーズ本編からおなじみのモンスターたちが多数登場する。その数は野生モンスターだけでも100種類以上が登場し、ほとんどすべてをオトモンとして仲間にできる。
種類は大きく飛竜種・鳥竜種・海竜種・両生種・牙竜種・草食種・獣竜種・牙獣種・古龍種などに分類され、各種ごとに個性豊かな特性とライドアクション、絆技を持っている。
ここでは代表的なモンスターの一部を紹介。
- リオレウス(火竜)
- 天空に君臨する“空の王者”。高い飛行能力を持ち、ライドアクションでは自由に空を飛んでフィールドを移動できる。絆技「スカイハイフォール」は空から奇襲し全てを焼き払う迫力の技。
- リオレイア(雌火竜)
- 地上を制する“陸の女王”。毒の棘がついた尻尾や炎を駆使して獲物を狩る。ライドアクションで巣穴探知ができ、絆技「フレイムシェイバー」はサマーソルトキックを含む連続攻撃。
- ティガレックス(轟竜)
- 猛り吼える絶対強者。発達した四肢による突進と強力な爪と顎が武器で、ライドアクションはツタ登り。絆技「ティガインパクト」は崖から飛び立ち大地を叩き割る一撃。
- ナルガクルガ(迅竜)
- 圧倒的なスピードを誇り、気配を消して獲物に忍び寄る迅竜。ライドアクションでは隠密移動が可能で、他のモンスターに見つからずに移動できる。絆技「スパイラルエッジ」は目にもとまらぬ速さで相手を切り刻む。
- ジンオウガ(雷狼竜)
- 雷光虫を自在に操る牙竜種。ジャンプ力を活かしたライドアクションで崖を飛び越えられ、絆技「クロスハイボルト」は超帯電状態から空中へ飛び隕石のように突撃する。
- ラギアクルス(海竜)
- 広大な海の食物連鎖の頂点に立ち、雷撃で敵を襲う海竜。ライドアクションで水上移動ができ、水辺を自由に進めるのが魅力。絆技「キングストローム」は渦と雷撃で敵を制圧する。
モンスターハンターを象徴する古龍種もオトモンとして登場する。
雷光を操る神獣キリンや、爆炎を撒き散らすテオ・テスカトル、風を自在に操るクシャルダオラなどがその代表で、それぞれ強力な絆技を持つ。古龍種は育成の難易度は高いものの、そのぶん特別な能力を秘めており、プレイヤーの目標となる存在。
こうしたモンスターたちは、オトモンとして冒険やバトルに同行するだけでなく、フィールド探索時のライドアクションで移動手段を広げてくれる頼もしい相棒である。
お気に入りのモンスターを見つけ、絆遺伝子の組み合わせで自分だけの最強オトモンを育てることが、本作の大きな魅力となっている。
制作スタッフと開発秘話
主要スタッフ
- プロデューサー:辻本良三(つじもと りょうぞう)
- 世界観ディレクター:藤岡要(ふじおか かなめ)
- ナンバリングシリーズのディレクターを務めた人物で、本作では物語や世界観の監修を担当。アクションとRPGのバランスについて、守る部分と変える部分のバランスを取ることが重要だと語っている。
- ディレクター:大黒健二(だいこく けんじ)
- 『ロストプラネット』シリーズなどで開発経験を持つ。本作では初のRPGディレクターを任され、モンスターを仲間にするシステムや育成要素を中心に設計した。
- アートディレクター:川野隆裕(かわの たかひろ)
- アニメ調の絵作りが得意なデザイナーで、従来のリアル寄りなモンスターをデフォルメし、親しみやすいデザインに仕上げた。特にリオレウスの赤い色味を「従来作と違う“赤”なのに、ちゃんとリオレウスだと分かる」と評された。
開発秘話:RPG版モンハン誕生の舞台裏

プロジェクトの始まりは2013年9月。シリーズプロデューサーの辻本氏が大黒氏に「幅広い世代が楽しめるモンハンを作ってほしい」と依頼したのがきっかけだった。
従来のモンハンは複雑な操作を要求するため低年齢層には敷居が高い。そこで辻本氏や藤岡氏が考えたのが“モンハンの世界観を活かしたRPG”で、さらに大黒氏自身が「モンスターを仲間にするシステムを盛り込みたい」と提案する。この企画書が二人のビジョンと一致し、大黒氏がディレクターとして正式に参加することになった。
開発当初、大黒氏は開発メンバーに若手リーダーを積極的に起用し、経験を積ませることを重視した。
またオトモンのデザインは、川野アートディレクターが従来のモンスターをアニメ調にデフォルメする際「モンハンらしさを損なわないカラーリング」が難しかったと語っている。ナビルーのデザインも試行錯誤が重ねられ、「かわいいとは言えない丸顔」が決定案となったが、癖のあるデザインこそ魅力だという判断から採用された。
ゲームシステムの要である「絆遺伝子」と「伝承の儀」は当初“世界観を崩すのではないか”という懸念もあったが、藤岡ディレクターは「問題ない。むしろ遊びに深みを持たせる」と背中を押し、通信対戦の面白さも引き出す結果となった。
制作陣はRPGならではの物語性を意識しつつ、モンハンの魅力であるモンスターの個性や冒険の臨場感を活かすことに注力した。
開発終盤には絆技をはじめとする派手なモーションや雄大なフィールド、豊かな自然表現が完成し、「新しいモンスターハンターを作る」という目標に到達したと振り返っている。
評価と反響
メディアによる評価

発売当時、各ゲームメディアは本作を好意的に評価した。
週刊ファミ通のレビューでは、主人公がハンターではなく“ライダー”である点を評価し、「モンスターをオトモンにして絆を深めていく展開が楽しい」「王道的な物語も親しみやすい」と評されている。
別のレビュアーは「モンハンの世界がRPGとしてしっかり構築されている」「3すくみのバトルは奥深く、絆遺伝子による育成要素も遊びごたえがある」と褒め、ロード時間の長さをやや指摘しつつも総合評価8〜9点を付けた。ファミ通の平均評価は8.7と高く、本編とは異なる楽しさを持つ作品として認知された。
カプコンの開発秘話でも「発売後は王道を貫くストーリーの完成度や爽快な戦闘システム、奥が深く中毒性の高い育成要素によって評判が好転した」と述べられており、メディアの評価と一致する。
プレイヤーの反応と売上
本作は当初、そのアニメ風キャラクターとRPG化により「本家とは別物では?」と懐疑的な声もった。しかし発売後は、王道ストーリーと独自の戦闘システムが好評を博し、幅広い層から支持された。
初週の国内販売本数は14万本で週販1位を獲得。その後2017年までの売上は約32万本と報じられているが、2024年のリマスター版やスマートフォン版の登場により新規ユーザーが増え、シリーズの知名度も向上した。
ファミ通の記事によればアニメ『モンスターハンターストーリーズ RIDE ON』の放送やリマスター版の発売が相乗効果となり、幅広い年代に訴求することに成功したと述べている。
アニメ版とメディア展開

2016年10月から2018年4月までTVアニメ『モンスターハンターストーリーズ RIDE ON』が放送された。
アニメは人とモンスターが共存する世界で少年リュート(ゲームでは主人公)とオトモンが成長する姿を描き、デイヴィッドプロダクションがアニメーション制作を担当。アニメ放送によって子供を中心に認知度が広がり、ゲームへの興味を持つきっかけとなった。
続編『モンスターハンターストーリーズ2 〜破滅の翼〜』(2021)や2026年発売予定の『モンスターハンターストーリーズ3 〜運命の双竜〜』などシリーズ展開も続いており、ストーリーズシリーズはモンハンの新たな柱として定着しつつある。
あとがき
『モンスターハンターストーリーズ』は、ハンティングアクションで知られるモンハンをRPGへと大胆にアレンジした意欲作である。
ハンターではなくライダーという視点で描かれる物語は、人とモンスターの共存や仲間との絆といったテーマを優しく伝えてくれる。
三すくみのバトルや絆技、遺伝子継承による育成などゲームシステムもシンプルながら奥深く、ライトユーザーでもモンハンの世界を楽しめるよう工夫されている。
開発スタッフの熱意と挑戦心が詰まったこの作品は、発売から10年を迎えようとする現在でも色褪せない。2024年のリマスター版やアニメ放送のおかげで、初めて触れるプレイヤーも増えている。
これからシリーズを遊ぶ方には、ぜひ第1作である本作からプレイしてほしいと思う。
