1996年に発売されたゲームボーイ用ソフト『ポケットモンスター赤・緑』。
当時子どもだった私たちは、夢中でポケモンを捕まえ、育て、トレーナーたちと猿のようにバトルをしていた。それから歳月が経ち大人になった今でも、初代ポケモンのキャラクターたちは色褪せない思い出となっている。
この記事では、『赤・緑』に登場するすべての主要キャラクターについて、ゲーム内での役割や名セリフ、裏設定や都市伝説的な情報、そしてファンの間で語り草になっている小ネタを交えながら詳しく振り返ってみよう!
懐かしさに浸りつつ、時にクスッと笑えるユーモアも添えてお届けします。それでは、冒険の始まりです!
『ポケットモンスター赤・緑』|主要キャラクター徹底解説
主人公 – サイレントながら伝説の少年

本作の主人公。ゲーム中では自分の名前を付けて操作する11歳の少年トレーナーであり、公式には『レッド』と呼ばれることが多いキャラクター。
彼は『ドラゴンクエスト』の主人公のような一切セリフを発しないサイレント主人公だが、その無口さがかえってプレイヤー自身を投影する存在として愛されている。
物語はマサラタウンから始まり、オーキド博士に「そこに3匹、ポケモンがいるじゃろう!」と語りかけられて最初のポケモンを選ぶ場面からスタートする。この「3匹のポケモン」とはもちろんフシギダネ・ヒトカゲ・ゼニガメの御三家ポケモンたち。
オーキド博士の名台詞とともに、冒険への胸躍る第一歩を踏み出したのは、多くのプレイヤーにとって忘れられない瞬間だろう。
主人公レッドの軌跡は、各地のジムバッジを集めてポケモンリーグを制覇する王道ストーリー。彼自身は喋らないものの、旅の途中で様々な出会いや試練を経てぐんぐん成長して行く。幼心に「自分が物語の主人公なんだ」という没入感を味わえたのも、レッドという無個性の主人公像のおかげだった。
エンディングではチャンピオンの座に輝き、図鑑完成の偉業に対してオーキド博士から「これはポケモンの歴史に残る偉大な仕事じゃー!」とうるさいくらいの最大級の賛辞を贈られる。
実はゲーム内データには、殿堂入り後や図鑑完成後にオーキド博士とバトルする構想が残されており、博士の手持ちポケモンデータまで存在していた。
ケンタロスやギャラドスを擁するガチンコな強力メンバーで、どうやらライバルの手持ちと似せた本気パーティ🔥だったようだ。残念ながらこのイベントは没になったが、「オーキド博士と戦える!?」という都市伝説として当時大きな話題になった。(データを残しておくくらいなら実装すりゃ良かったのに…)
裏設定や後のシリーズ展開に目を向けると、主人公レッドはその後の作品にも伝説的存在として登場する。
『金・銀』ではシロガネ山の頂上に沈黙を守ったまま立ちはだかり、プレイヤー(金銀の主人公)の最強の挑戦相手となって立ちはだかる。
言葉ひとつ発さず、BGMもない中で始まるこのバトルは鳥肌もので、「もしかして彼は既に幽霊なのでは?👻」なんて都市伝説を生むほど(※後年の公式作品で生存が描かれ、この幽霊説は否定された….)。
ストイックに頂点を極めたレッドの姿は、多くのファンにとって憧れであり、今なお語り草。口数は少なくとも行動で示す主人公レッド――彼こそがポケモントレーナーのロールモデルであり、我々の分身そのものなのである。
ライバル – オーキドの孫坊ちゃま、天敵にして好敵手

主人公の冒険に常にしつこく付きまとうのがライバルの存在。
デフォルト名は「グリーン」(海外版ではブルー)だが、プレイヤーが自由に名前を付けられるため、子ども心に思わず変なあだ名を付けてしまった人も多いのではないだろうか?もしくは一番の仲の良い友達の名前を付けたり…??
グリーンについては「原点にして頂点!初代ライバル『グリーン』とは?」で詳しく解説しております。

ジムリーダーたち – 個性豊かな8つの強敵
カントー各地にある8つのジムでは、『ジムリーダー』と呼ばれる強力なトレーナーたちが主人公の挑戦を待ち受けている。彼らはそれぞれ特定タイプのポケモンを使いこなし、バッジを賭けた真剣勝負を繰り広げることになる。
ここではニビシティのタケシからグレンじまのカツラまで、7人のジムリーダー(※8人目のジムリーダーは後述するロケット団ボス、サカキ)のキャラクター像を振り返ろう!
子どもだった当時は勝つのに必死だったが、大人になった今だからこそ語れる小ネタや裏話も併せてご紹介!
タケシ – 「岩」のごとき硬派少年

最初のジムリーダーであるタケシは、岩タイプ使いの少年。(アニメとかでも全く少年には見えないが、確かまだ10代の少年)
肩書きは「つよくて かたい いしの おとこ」で、その名の通り硬派で実直な性格が特徴。【いわタイプ】のエキスパートである彼は防御重視の戦法を得意としており、使ってくるイシツブテやイワークもまさに硬いポケモンたちである。
ゲーム版『赤・緑』でのタケシの姿はなんと上半身ハダカにジーンズという出で立ちで、ウニのようなとがった髪型と糸目がトレードマーク。子ども心に「服着てない!ワイルドなおじさんだ…」と妙に印象に残った人もいるでしょう(のちの作品やアニメ版ではちゃんとシャツを着ていますのでご安心を)。
タケシ戦といえば、フシギダネやゼニガメを選んでいれば楽勝でも、ヒトカゲを選んだ場合はいきなり苦戦を強いられる難関だった。ひのこが効かず泣かされたトレーナーも多かったのではないでしょうか。
タケシ本人はバトル前にかなり熱いセリフを吐く。
負けるとわかってて戦うか!ポケモントレーナーの性(さが)だな。いいだろう!かかってこい!
――負けると分かっていても戦う。それがポケモントレーナーの性(さが)だというこの言葉、今聞くと痺れる。子供の頃には難しい言葉の意味は分からずとも、その勢いと雰囲気に圧倒されたものである。
「挑戦するのは1万光年早い」なんて暴言を吐くジムのしたっぱトレーナーもいたが、その後「しまった!1万光年は……時間じゃない!…距離だ!」と忍法・手のひら返しまで含めて、ニビジムは序盤から強烈なインパクトを残してくれた。
4回連続で挑戦者に負けるとジムリーダーの資格を剥奪されるなんて設定(小説版より)もあるそうで、初戦で主人公に敗れたタケシはその後内心ヒヤヒヤだった…かもしれない。
余談だが、タケシはポケモンブリーダーになる夢を持っているという裏設定がある。アニメ版ではその夢が強調され、多くの弟妹を抱え家族思いな面倒見の良い兄貴肌として描かれた。
ゲーム中でも『ファイアレッド・リーフグリーン』の情報端末「フェイムチェッカー」でその片鱗を知ることができる。
更に『Let’s Go!ピカチュウ・イーブイ』では他のジムリーダーとの交流を大切にしており、お土産片手にタマムシシティを訪れる場面も。ストイックで硬派な岩男と思いきや、意外と社交的でお茶目な一面もあるようだ。
勝負後に見せる爽やかな笑顔と、「ポケモンリーグに挑むといい」と背中を押してくれる態度は、最初のジムリーダーとしてプレイヤーを励ます頼もしい兄貴像そのものだったと言える。
カスミ – 世界で一番可愛い?「水」の天才少女

2つ目のジム、ハナダシティのカスミは水タイプ使いの美少女トレーナー。自称「世界で一番可愛い女の子」なんて発言も飛び出す彼女だが、バトルの腕前はマジで本物。
高素早さかつ強力なポケモンを繰り出し、序盤の壁として主人公を苦しめた。特にエースのスターミーが使う強力な「バブルこうせん」はトラウマ級の破壊力。
当時ヒトカゲを選んでいた子は容赦なく叩きのめされ、バブルこうせんで涙目にさせられたものである。カスミ戦で初めて「レベル上げ」の大切さを学んだというプレイヤーも多いことだろう。
カスミは勝気で負けず嫌いな勝気なおてんば娘として描かれている。アニメ版ではサトシの旅仲間としてツンデレぶりを発揮したが、ゲームの初代では基本的にジム内で待ち構えているだけ。
ただ、バトル前の会話では
ポケモン育てるにもポリシーがある奴だけがプロになれるの
と語り、彼女なりの流儀を持っていることが窺える。子供の頃は「ポリシー?なにそれ美味いんか?😋」と孫悟空状態だったが、大人になって噛みしめると彼女の言葉はなかなか深い。
ゲーム中では触れられないが、後の作品や資料によれば4人姉妹の末っ子である設定もあり、強がりな一面の裏に甘えん坊な少女らしさも垣間見える。
カスミ自身は「おてんば人魚」を自称するだけあって水泳が得意で、アニメでは華麗に水中バトルを繰り広げました。ゲームでも後年の『金・銀』ではデート中(!)のところを主人公に見つかるというイベントもあったりと、少し大人びた姿を見せている。
そんな彼女も初代ではまだ10代前半でしょうか、等身大の少女らしさとトレーナーとしての才能を併せ持つ魅力的なキャラクターだった。負けた時の「あたしのポケモンが…そんな!」という悔しそうな表情も印象的で、勝利の嬉しさと同時に「ちょっと悪いことしちゃったかな」なんて思った記憶が蘇る。
マチス – イナズマアメリカン!「電気」パワー全開

3番目のジムは港町クチバシティにあるジム。
ここのリーダー・マチスは電気タイプ使いで、その二つ名は「イナズマ アメリカン」!そう、異色のアメリカ人キャラとして登場した人物である。本編中でも「サージ中尉」という英語名が与えられ、周囲から“マチス少佐”と呼ばれる元軍人という経歴を持つ。
当時、日本の子供たちにとってアメリカ人の軍人が敵として出てくるのは新鮮で、「ポケモン世界にもアメリカがあるのか!?🇺🇸」なんて驚きを覚えたものだ。
マチスのキャラクターは豪胆でパワフル。金髪を逆立てた巨漢で、迷彩服に身を包んだ姿は子供心にちょっと怖かった記憶がある。
彼がジムで待ち受ける部屋に入るためには、あの有名なゴミ箱スイッチのパズルを解かねばならない。「ゴミ箱を調べてスイッチを2つ連続で当てろ!」という難解な仕掛けに苦労させられ、「ぶっぶー!」のメッセージに何度絶望したことか…。
ようやく辿り着いた先で対峙するマチス少佐は、ピカチュウやライチュウを駆使したスピード勝負を仕掛けて来る。アニメ版では「10万ボルトだ、ライチュウ!」と派手にやられたサトシが印象的だったが、ゲームでもライチュウの「10まんボルト」→「でんこうせっか」のコンボは凶悪だった。
エリカ – おしとやかな和風美女と「草」ポケモン

4つ目のジム、タマムシシティのエリカは草タイプ使いの女性キャラ。「別に…」で一世を風靡した彼女とは別の人です。
着物姿が美しいお嬢様で、お香の焚かれた和風のジムでプレイヤーを迎えてくれる。エリカはおっとりした性格で、「~ですわ」口調の典雅なお嬢様。
しかし侮るなかれ、くさタイプの使い手としてどく状態やねむり状態を駆使した巧みなバトルを展開する。彼女のラフレシアやウツボットに催眠や毒を盛られて苦戦したトレーナーも多かったことだろう。特に当時はどくけしやねむけざましを十分持っておらず、じわじわと削られる戦法に苛立ちを感じたものある。
エリカはタマムシデパートの経営者の娘という設定があるらしく、非常に育ちが良いことが窺える。ゲーム中ではジム内の女の子達が「エリカ様は素敵」「でも居眠りしちゃうこともあるの」と噂していた。(マジで寝てた…)
実際、アニメ版ではバトル中に居眠りしてサトシを怒らせるコミカルなシーンもあったようななかったような、、、(?)
彼女は香水づくりが趣味であり、タマムシシティのフラワーショップやエステサロンとも関わりがあるらしい。これもアニメでエリカが香水屋を営んでいたエピソードに通じる設定である。
タマムシジムは女性トレーナーしかおらず、男の子禁制。入口でオジサンが、
ここは天国じゃ……..
とヨダレ垂らしていた。しかし主人公(プレイヤー)はすんなり潜入できてしまう。実は小説版では主人公が女装して忍び込むというエピソードまであったとか。
エリカの印象的な台詞としては、敗北時に
まぁ、なんということでしょう…あなたに負けてしまうなんて…
とお淑やかに驚く姿が胸に刺さった記憶あり。他のリーダーが結構負けを悔しがる中、彼女は最後まで上品さを崩さないのが逆に爽快だったのを覚えている。
彼女からもらえるレインボーバッジは「虹」の名の通りカントー制覇への折り返し地点。エリカとの戦いは、ゲーム中盤のハイライトとして鮮明に記憶に残っている。
キョウ – 忍びの道を往く「どく」使い

5番目のジムリーダーはキョウ。セキチクシティにあるこのジムは忍者屋敷のような仕掛けが施され、見えない透明の壁迷路に悩まされたトレーナーも多いだろう。(何周しても覚えられん…)
キョウは毒タイプ使いで、手裏剣のように持ったボールとマント姿が印象的な中年忍者(ピンクの忍装束はなかなかインパクト大)。
彼の使うポケモンはマタドガスやベトベトンなどどくタイプが中心で、どくの強烈な継続ダメージ攻撃でじわじわ削ってくる戦法が特徴。ベトベトンの硬さに苦戦し、「どくどく」でこちらのポケモンが次々倒れていく恐怖を覚えた方もいることだろう。
キョウ自身は、「我が忍術、華麗に舞う!」的な渋いセリフを吐くクールなキャラ。普通にカッコいいけど、厨二病感も否めない…。残念ながら初代では彼の名セリフはあまり脚光を浴びていないが、『金・銀』では彼がポケモンリーグ四天王に昇格し、代わりに娘のアンズがセキチクジムを継いでいるという展開があった。
キョウは毒と忍者というユニークな組み合わせで、後のシリーズにも何人か登場する忍者キャラの元祖と言える。彼のモデルは伊賀や甲賀の忍者…。(英名はKogaらしい)
子供たちに「忍者=毒」のイメージを刷り込んだ功罪は大きいかもしれません。でも確かに忍者といえば、毒霧や毒団子のイメージがある。
キョウとのバトルで忘れられないのは、マタドガスのじばくのインパクト。この頃にはパーティの誰かしらが「あなをほる」を習得しているので、穴を掘ってる間に自爆で退場なんて光景もよく見たのではなかろうか??
しかしそれも忍の戦術、真剣勝負の世界では当たり前なのかもしれません。キョウを倒してピンクのピカピカバッジ(ピンク色なのが毒々しい?)を手に入れた時は、本当にホッとしたのを覚えています。「ふっ…見事でござる」とでも言いたげな彼の寡黙な佇まいが、妙に格好良く思えたのは俺だけではないはず。
ナツメ – 超能力を操る「エスパー」少女

6番目のジム、ヤマブキシティのナツメはエスパータイプ使い。超能力を操る美少女で、無口で神秘的な雰囲気を持っている。
ヤマブキジムではワープパネルだらけの迷路を突破しなければならず、当時の子供たちはノートにマップを書いて攻略したり、画面酔いしそうになりながら何度も瞬間移動したもの。
そんな苦労を経てたどり着いたナツメは、強敵中の強敵だった。エスパータイプは初代では弱点が少なく(むし技くらいしか効果抜群がなく、しかも強力なむし技はスピアーのダブルニードルくらい)、フーディンやユンゲラーの超火力エスパー技に手も足も出なかったトレーナーも多いことだろう。ナツメ戦の難易度は高く、彼女のフーディンの「サイコキネシス」で次々とポケモンが溶けていく様に戦慄した記憶がある。
ナツメにはちょっとした裏設定や小ネタが存在する。例えば公式イラストではムチを手に持っており、「なぜ超能力者がムチ?」と不思議に思ったり。。。実はこれ、開発初期の頃にポケモントレーナーがポケモンを調教するイメージでムチを持たせていた名残だとか。
アニメ版ではナツメは自分の超能力でサトシを人形に閉じ込めてしまおうとするとホラーな展開が登場し、視聴者を震え上がらせた。ゲームにはそこまではないが、ヤマブキジム内のトレーナーが「ナツメ様に挑むとは命知らずな…」と忠告してきたり、「エスパーは脳に直接…」と怖いことを言ってきたりと、どこか不気味な雰囲気を漂わせている。
ナツメ本人は寡黙で、
私の超能力、見せてあげる…
的な静かな闘志を燃やすキャラ。バトル後、彼女は「…負けを認めます。バッジを受け取って」と淡々と話し、恨み言ひとつ言わない。冷静沈着で感情を表に出さない彼女だが、実はこの勝負で主人公との対話を経て少し心を開いたのか、その後のシリーズでは性格が柔らかくなっていたりもする。
四天王カリンの名言「強いポケモン、弱いポケモン…」に代表されるように、エスパー1強だった初代のバランスは後に是正されましたが、当時はまさにナツメ無双。子供たちは「エスパータイプずるい!😡💢」と口を揃えたものである。それだけに彼女を倒した時の達成感はひとしおだった。ヤマブキバッジを手にした瞬間、ようやく「次はあと2つ…!」とゴールが見えてきたことを実感したものだ。
カツラ – 「炎」のクイズ王オヤジ

7番目のジムリーダーはグレン島(グレンタウン)のカツラ。炎タイプ使いの科学者風オッサン。白衣にサングラスという出で立ちで、一見すると研究者か博士のようですが、頭にはしっかりハゲ散らかしたような炎の輪が…(そんなものありません。ツルッツルののハゲです)。
カツラのジムは一風変わっていて、ポケモンクイズに答えることでトレーナー戦を回避できるシステムだった。しかし間違えると容赦なくジムトレーナーとのバトルになるため、みんな必死にカンで答えていたのではないだろうか。
そんなユニークなジムを切り盛りするカツラは、陽気で人の良いおじいちゃん然としたキャラ。一方で炎のプロフェッショナルとしての腕は確かで、ギャロップやウインディといった強力な炎ポケモンを操る。中でもギャロップの「ほのおのうず」攻撃で抜け出せずじわじわHPを削られ、苦い思い出が蘇るトレーナーもいることだろう。(先手を取られたらオワリ)
カツラ本人のキャラとしては、非常に陽気でノリが良い印象。アニメ版では、”カツラ”を被り、サングラスを掛けてダジャレを飛ばすお茶目な一面も描かれた。
さあ、残すバッジはあと1つ――。しかし、最後のジムリーダーは一筋縄ではいかない人物でした。それは後の章で、、、
四天王とチャンピオン – ポケモンリーグの死闘と栄光
8つのジムバッジを揃えた主人公に立ちはだかるのが、ポケモンリーグ本戦の四天王とチャンピオン。四天王はその名の通り4人の最強クラスのトレーナーたちで、チャンピオンは彼らを打ち破った者だけが挑める最終戦の相手。
初代ポケモンでは、一人倒すごとに続けて休みなく次の強敵が現れる連戦方式(回復などはできるが、外に出れない)で、多くのプレイヤーを震え上がらせた。
ここでは四天王のメンバーとチャンピオン戦(=ライバル戦)のドラマを振り返る。
カンナ – 冷静「氷」結クイーン

四天王一人目のカンナは、こおりタイプを主体とするトレーナー。赤いロングヘアにメガネ姿という知的な女性で、冷静沈着かつエロスな雰囲気を漂わせている。
使用ポケモンはジュゴン・パルシェン・ラプラスなどのみず・こおりタイプが中心で、いずれも氷の力を持つ手強い相手だった。特にラプラスとジュゴンの耐久力と火力には苦戦したプレイヤーが多いはず。
カンナはセリフこそ地味だが「私に勝てたら次に進みなさい」といった毅然とした態度が印象的だった。道中の島「ナナシマ」(FRLG追加要素)では彼女の出身地や幼少期エピソードが語られ、氷ポケモンと出会った経緯が描かれている。
ポケモンぬいぐるみコレクターという一面も持ち合わせているらしい…手持ちのラプラスへの愛情も深い。カンナとのバトルが始まった瞬間、「いよいよ四天王戦が始まった…!」と手に汗握ったものである。彼女を突破できれば次へ進めるという安心感と、「まだあと3人もいるのか…🤮」という絶望感が入り混じったあの心境、今でも忘れられない。
シバ – 「格闘」一直線!筋肉ファイター

続く二人目の四天王はシバ。褐色の肉体を誇る格闘タイプの達人。上半身裸に空手ズボンという姿からして、「絶対強い」オーラが出まくっていたが、蓋を開けてみると…(😲?!)
シバの使うポケモンは、カイリキー・エビワラー・サワムラーなどのかくとうタイプがメインだが、なぜかイワークが2匹混ざっている。
子ども心に「なんで格闘使いなのにイワーク?」と不思議だったが、後で知ったところによるとポケモンの種類の都合上、格闘タイプだけでは手持ちが足りなかったための苦肉の策だったとか?(可哀想なシバ…)。ニョロボンとかオコリザルがおりますやん……..
シバのキャラクターは熱血そのもので、バトル前には「ウー!ハー!」という気合いの入ったセリフ(というか咆哮)を放つ。まさに闘魂注入オトコ。「お前自身が戦うんか?」という疑問が過ったほどである。
当時の俺は彼の屈強ぶりに圧倒され、「負けたら叩きのめされるんじゃ…」なんて余計な心配までしてしまいた。(もちろんゲームなのでそんなことはありませんが…)。
キクコ – 老いたりとは言わせない、「ゴースト?」使い婆ちゃん

三人目に登場するのはキクコ。紫の着物(?)を纏った老婆で、ゴーストタイプ(どく)使いの達人。
初代当時、ゴーストタイプのポケモンはゲンガー系統しか存在しなかったため、彼女の手持ちもゲンガー(しかも2体!)やゴルバット・アーボックなど毒混じりの構成になっている。
とはいえ、その実力は侮れません。ゲンガーの「ナイトヘッド」「さいみんじゅつ」や、アーボックのいやらしい「へびにらみ」攻撃に苦しめられた記憶が蘇る。中でもゲンガーの催眠術→ゆめくいコンボは凶悪で、「眠らされる前に倒せ!」と祈りながら戦ったものである。
キクコは登場時に意味深なセリフを語る。「オーキドは戦いを捨てて研究ばかりしている腰抜けだよ」といった趣旨の発言をしており、どうやら若い頃にオーキド博士と知り合いだった様子がうかがえる。
このように、実は奥深い背景を持つキクコ婆さんだが、子供の頃の私には「なんか怖い幽霊ババアだ…」という印象しかなかった。口調も怖いし、BGMはシオンタウンのものだし…。
ワタル – 天空を統べる「ドラゴン」マスター

四天王最後の一人にして最強の実力者、ワタル。赤い長髪にマントといういでたちで、当時から圧倒的カリスマ性を放っていた。俺の友達全員がワタルファンだった…
彼はドラゴンタイプ使いを名乗っているが、初代でドラゴンタイプのポケモンはカイリュー系統しか存在せず、手持ちもカイリュー・ギャラドス・プテラ、そして2体のハクリュー(カイリューの進化前)が中心だった。
それでも十二分に強力で、まず先鋒のギャラドスの異様な硬さと「はかいこうせん」の破壊力に面食らい、続くハクリューたちの「でんじは」で足止めを食らい、最後の切り札カイリューの本来覚えるはずのない「バリアー」(改造厨)でパワフルな立ち回りを披露。
ワタルのカイリューは当時レベル62という異常なまでの高レベルで、「はかいこうせん」の一撃は多くの子供たちの手持ちを次々と薙ぎ倒して来た。
筆者も初めて挑んだときはカイリューの前に為す術なく全滅し、「ここまで来て負けるなんて!またカンナからかよぉぉぉぉぉ😹」と半泣きになったものである。ワタル戦はまさにポケモンリーグの山場であり、BGMも相まって手に汗握る白熱バトルとして語り継がれている。
ワタル本人はバトル前に
俺のポケモンはドラゴンだ。伝説のポケモンのように強くて神秘的だ
と自信満々に語り、その言葉に嘘偽りはなかった。ドラゴンタイプはロマンの塊で、当時のプレイヤーも「いつかカイリューを育ててみたい!」と、目を輝かせながら思ったものである。実際にはミニリュウを育てる大変さ(レベル55でようやくカイリュー進化!)に多くが挫折したわけだが…。
ところが、ワタルを倒したその先に、『まだ真のチャンピオンが残っている』という展開が初代最大のサプライズであった。ワタルを打ち破った瞬間、子供だった俺たちは「やった!四天王に勝った!これで終わりだ!」と喜んだ。
しかし彼は言うのです。「信じられない…でも、君は四天王を倒した。しかしチャンピオンは既に誕生している」と。そう、最後の相手はワタルではなく、ほんの少し前に四天王を突破した者がいると明かされるのである。その相手こそ――我らが宿敵ライバル(グリーン)だったのである。
ロケット団 – ボスと幹部としたっぱ、悪の組織の愛すべき悪党たち
ポケモン赤・緑の物語を語る上で欠かせないのが、悪の組織ロケット団の存在である。各地で悪事を働き、主人公に倒される憎まれ役だが、そのコミカルさや存在感から愛すべき悪役として今なお人気がある。
ボス・サカキ – 冷酷非道な野望の男、その正体は…?

ロケット団を陰で操るボス・サカキ。
スーツ姿に鋭い眼光、「甲子園球児かよ」と突っ込みたくなる綺麗な坊主頭…。一見ただの紳士風ながら、その正体は「世界中のポケモンを悪だくみに使いまくって金儲けをする」野心家であった。
また、トキワジムのジムリーダーとして君臨。最後のジムリーダーとして、主人公の前に立ちはだかる。
サカキについては「悪のカリスマ・サカキを語り尽くす|ロケット団ボスの素顔と名セリフたち」で詳しく解説しております。
ロケット団員たち – 名前すらない「やられ役」の名セリフと憎めないしたっぱ

ロケット団にはサカキ以外に目立った幹部クラスの存在は、初代『赤・緑』の時点では明確に描かれていなかった(『金・銀』以降で幹部が登場)。
しかし各地で出会うロケット団員(したっぱ)たちこそが、我々プレイヤーに強い印象を残したキャラクターたちである。
彼らは黒い服にRのマークをつけたいでたちで統一され、町や洞窟、企業ビルにまで出没して悪事を働いていた。そんな悪党たちですが、そのセリフ回しやポンコツぶりがコミカルで、倒すたびになんとも言えない愉快な気持ちになったものである。
例えば、ハナダシティ北の『ゴールデンボールブリッジ』。5人抜きのチャレンジを達成した主人公に対し、最後に登場する男が「この橋は人呼んでゴールデンボールブリッジ」などと説明しつつ、『きんのたま』をくれる。
そして次の瞬間、彼の正体がロケット団員だと判明!
(ロケット団に)入りなよ。入らないの? 入れよ! …断るって顔してんな。
と威圧的に勧誘してくる。こちらが断ると「それなら…!無理矢理入れてやる!」と襲いかかってくるという流れ。
結局ボコボコにすると、「ちぇっ」と舌打ちして諦めるのだが、この一連の茶番劇は当時爆笑モノであった。子供心に「悪の組織なのにどこか間が抜けてる」と感じた瞬間である。
また、タマムシシティのゲームコーナーではロケット団アジトへの入り口を守る団員が登場。ポスター前に立つ彼に話しかけると「あやしいやつめ!」とバトルになり、勝つと「ボスにしられたら たいへんだ!」と呟いて逃げ出す。
その後に残るのは壁のスイッチ。このお決まりの展開にはワクワクしました。そして有名なのが、地下4階でエレベーターの鍵を持つ団員。倒すと「このへんにはカギが…ん?あ!エレベータのカギをおとしてしまった!」と自ら大声でドジをカミングアウトし、目の前でカギを落とすのある。プレイヤーは悠々とそのカギを拾って先に進めるというわけ。ここも子供ながら「間抜けすぎる…」と笑ったポイントであった。
ロケット団員たちの迷言も数多く存在する。シオンタウンのポケモンタワーでガラガラを殺した極悪非道の張本人たちですが、したっぱの一人は主人公に負けると「ポケモンが…ゆうれいに…?」と怯えだしたりして滑稽であった。
シルフカンパニーでも「ロケットだんは不滅だ!」と豪語して逃げたり、果ては「俺はロケット団の4兄弟の三男だ!」なんて突然の兄弟設定をカミングアウトする団員までいた。
ゲームクリア後になって振り返ると、彼らのお陰で物語が格段に盛り上がっていたことに気付く。単なるザコ敵ではなく、憎めない悪役として愛される所以である。
また、ロケット団は初代の段階では他地方にも進出していた可能性が示唆されている。例えば『金・銀』ではラジオを使ってサカキ復帰を呼びかけたり、リメイク『FRLG』ではセキエイ高原で四天王カンナに妨害されたりと暗躍の幅が広がっている。また開発秘話では、「ロケット団は実は続編で復活する構想もあった」との噂もあったが、真相は定かではない。
思い出に残るサブキャラクターたち – 脇役こそ光る!?
本作には、主要キャラ以外にも物語を彩った印象的なモブキャラ(脇役)が数多く存在する。彼らはジムリーダーやライバルのように物語の中核ではないものの、そのユニークな台詞やエピソードでプレイヤーに強い印象を残した。ここでは、そんな懐かしのモブ達をいくつかピックアップして紹介して行く。
どれも「ああ、こんな人いたいた!」と頷いてしまうこと間違いなしである!
オーキド博士 – ポケモン研究の権威、冒険の大黒柱

まずは主人公を冒険へと送り出したオーキド博士である。
マサラタウンに住むポケモン博士で、プレイヤーに最初のポケモンとポケモン図鑑を託してくれる恩人。
彼の名言「そこに3匹、ポケモンがいるじゃろう!」から全てが始まり、「これはポケモンの歴史に残る偉大な仕事じゃー!」という図鑑完成時の称賛で締めくくられる――いわばストーリーテラー的存在だった。
オーキド博士については「オーキド博士とは? 初代ポケモンの“博士”を徹底解説|人物像・設定・裏話」で詳しく解説しております。
コイキング売りオヤジ – 詐欺まがいの商売で大儲け?

本作には”最も忘れられないモブキャラ“が一人いる。
おつきみやま入口のポケモンセンターにいた『コイキング売りのオヤジ』だ。旅の序盤、手持ちがまだ貧弱な時期に
ぼっちゃん、あ・な・た・だけに…いいお話がありまして。秘密のポケモン、コイキングがなんとたったの500円!どうだい 買うかね?
と甘い言葉で持ちかけて来る。子供心に「なんてお得なんだ!」と飛びついたトレーナーも多かったはず。「キング」というワードが入った名前だし、「こいつは間違いなく強い!!!!」と胸を躍らせたお子様プレイヤーは筆者だけじゃないはず。
しかし、ステータス画面を開くと、なんともひ弱そうな鳴き声と共に、とぼけた顔をしたデカい鯉の姿が飛び込んでくる。
更に追い打ちでオヤジは、
そうそう、ポケモンの返品はお断りだからな。
とニヤリ。見事に騙されたと気付いたプレイヤーはショックを受けつつも、「やられた~!」と悔し笑いしたことでしょう。
手に入れたコイキングは当然レベル5のヒン弱ポケモン、バトルでは全く役に立たないため、育てるかボックス送りにするかで悩んだ人もいるでしょう…。
このコイキング詐欺師のオヤジはシリーズ恒例になっており、『金銀』でもNPCが話題に上げていたり、『ブラック・ホワイト』などでも登場する。(同一人物かは不明だが、同じセリフで500円コイキングを売りつけてくる)。
子供の頃は「大人は信用ならねぇ!」と社会勉強(?)になった出来事でしたが、よくよく考えると彼の商売相手って子供ですよね…。なんとも業の深いオヤジですが、進化させれば最強クラスのギャラドスになるコイキングを安価で提供しているとも言えます。そう思うと、もしかしたら彼なりの善意…なわけないか!
フジ老人 – カントー地方で最も闇深い人物?

シオンタウンのフジ老人も外せない。
ポケモンタワーでロケット団から救出すると、
ありがとう…このポケモンの笛を持ってお行き
とキーアイテムの『ポケモンのふえ』をくれる。彼の優しさに触れ、「世の中捨てたもんじゃないな」とホロリとした人もいるでだろう。
実はフジ老人の正体は『ミュウツーを創ったフジ博士と同一人物』と公式で判明。つまり彼は元ロケット団の科学者でもあったというわけ。
「シオンで慰霊ボランティアをしていたのもその罪滅ぼし…」と考えると、ものすごく深みのあるキャラである。子供の頃はただの親切なおじいさんと思っていた人物が、実は物語の鍵を握る存在だったとは、大人になってから知って驚愕した要素の一つ。
酔っぱらいオヤジ – 行く道を塞ぐ迷惑なヤツ
トキワシティの酔っぱらいオヤジも忘れてはいけない。
街の出口を塞いで寝転がっていたあのオヤジ。ゲーム序盤で主人公を引き留め、「じじいが道を塞いでて通れねぇ!!!」と有名だった。
後に彼はポケモンを捕まえる方法を教えてくれるチュートリアル担当となるのだが、衝撃なのは彼が
ああ…二日酔いで寝てただけじゃ!頭が痛い…
と語ること。そう、彼は酔っぱらって道端で寝ていたのです!海外版ではこれが「コーヒーを飲んでなかったせい」とソフトな表現に変更されたが、当時日本キッズは普通に「酔っ払い」という概念に触れていたわけである…何ともゆるい時代だったなぁ。
このオヤジ、捕獲指南を終えると「あとはモンスターボールを○○個あげよう」と言いそうなものですが、何もくれずに終わり。正直「え、それだけ?」と思ったよね(笑)。しかし彼のおかげでポケモン捕獲の基礎を学べたのも事実、感謝しておこう!
ポケモン大好きクラブ会長:話長すぎおじさん

次にポケモン大好きクラブの会長(クチバシティ)。
彼の存在もかなり強烈だった。民家に入るといきなり「うちの可愛いギャロップちゃんはね…」と自慢話が始まり、延々と止まらない。
文章送りを連打するも全然終わらず、「長ぇ!」とイライラしたプレイヤーも多いはず。しかしこの苦行に耐え抜いたご褒美に「自転車引換券」をくれるのである。
なんと100万円(ゲーム中の所持金上限より高額)の自転車がタダでもらえる大盤振る舞い! 会長の自慢話は、「うちのギャロップは可愛くて仕方ない、抱いて寝てる」などやや暴走気味だったが、子供の頃は「おじさん気持ち悪っ」と思いつつも自転車券ほしさに必死で聞いたものである。
この会長、後のシリーズでは愛車マニアになっていたりと色々キャラが変遷するが、初代ではポケモンオタクの鑑みたいな存在だった。
最後に
以上、『ポケモン赤・緑』に登場する主要キャラクターと印象的な人々を、ユーモアと豆知識たっぷりに振り返ってみました。
主人公とライバルの熱いドラマ、個性豊かなジムリーダー達、四天王・チャンピオンとの死闘、悪役ロケット団のコミカルさ、そして脇を固めるモブ達の忘れ難い言動…。挙げ出せばキリがないほど初代ポケモンは魅力的なキャラで溢れており、それが我々にとって色褪せない“青春の1ページ”となっている。
ゲームボーイの小さな画面に宿った大きな冒険。大人になった今プレイし直してみても、新たな発見や当時気づかなかったジョークに出会ってクスリと笑えるだろう。
そして、あの頃感じたワクワクや悔しさ、嬉しさがきっと蘇ってくるはず。
「ポケモン、ゲットだぜ!」とドヤ顔で叫んでいた少年少女だった私たちも、いつしか立派な大人。
それでも、ポケモンたちと彼らを取り巻くキャラクター達への愛着は少しも変わっていない。むしろ年月を経て一層深まったとさえ言える。
この記事を読んで懐かしい気持ちになった方は、ぜひまたカントー地方に旅立って欲しい。当時の記憶を肴に友人と語り合うのも良し、子供に自慢しながら初代あるあるを教えるのも良し。ポケモン赤・緑のキャラクターたちは、いつでも皆さんをマサラタウンから冒険に誘ってくれることだろう。
さあ、ポケットにモンスター(とゲームボーイ)を詰め込んで、もう一度「あの日」に帰ってみませんか?

