2019年の春、カードゲーム『遊☆戯☆王』のファンにとって久しぶりの家庭用ゲームとなる『遊戯王デュエルモンスターズ レガシー・オブ・ザ・デュエリスト』(以下「LotD」)がNintendo Switch向けに発表された。
過去のアニメシリーズをまとめて遊べるストーリーモードや、当時としては9,000枚以上のカードを収録し140人以上のキャラクターが参戦することがウリだと報じられ、期待は高まっていた。
しかし発売直前、この期待に水を差す騒動が起こる。公式が告知していた内容と実際の収録内容が食い違い、多くのプレイヤーがSNSで怒りの声を上げ、ついには返金対応へと発展したのである。
本記事では、この「LotD炎上・返金騒動」を時系列で追いながら、何が問題だったのか、なぜこれほどまでに炎上したのかを掘り下げて行く。
発売直前までの期待と事前情報
公式の宣伝内容
『LotD』は、遊戯王のデジタルゲームとしては久々に最新ルールを搭載したタイトルと紹介された。
公式サイトや雑誌『Vジャンプ』などでは「遊戯王OCGと同等のデュエルが楽しめる」「デッキビルドパック『ヒドゥン・サモナーズ』までのカードを収録」といった文言が掲載されていた。
ここでいうOCG(オフィシャルカードゲーム)は日本国内で発売されているカードゲーム版遊戯王のことで、日本語名やカードプール、禁止制限リストがTCG(英語版)と異なる。
公式の情報を信じた国内プレイヤーたちは、スマホアプリ「デュエルリンクス」とは違うフルサイズのデュエルができること、紙のカードと同じように最新カードが使えることに期待を寄せ、ニンテンドーeショップであらかじめダウンロード(事前購入)を行って発売日を待った。
OCGとTCGの違い
騒動の核心を理解するために、OCGとTCGの違いを簡単に説明しておこう。
OCGは日本国内向けのカードゲームで、カード名は日本語で表記される。対してTCG(Trading Card Game)は主に北米やヨーロッパ向けに展開される英語版で、発売時期や収録内容、禁止・制限ルールに差がある。
例えば、日本のOCGで使えるカードでもTCGでは未収録だったり、逆にTCGだけが先行収録されたカードもあり、同じデッキを組むことができない。このため、同じ「遊戯王」でもOCGとTCGではほぼ別物と言っていいほど環境が異なる。
発覚した「収録内容の誤表記」
突然の告知

発売2日前の2019年4月23日、LotD公式Twitterは突如として「本作は海外版の遊戯王TCG準拠で収録されている。日本語の遊戯王OCGとは収録内容が若干異なります」と投稿。
このツイートが公開される直前、公式サイトから「OCG準拠」「ヒドゥン・サモナーズまで収録」といった文言がひっそりと削除され、代わりに「TCG準拠で収録されていることが明記」されたのである。
発売直前までOCG準拠だと思っていたプレイヤーにとって、これは衝撃的な事実だった。
「幻影騎士団ラスティ・バルディッシュは収録されています。あなたの好きなカードは何ですか?」という軽い口調のツイートとは裏腹に、カード名・ルール・禁止制限リストまで異なるTCG版がベースであることを事前に知らせなかったことが炎上の火種になった。
プレイヤー側の反応
SNSでは「詐欺ではないか」「金返せ」「優良誤認ではないか」という声が相次いだ。
先ほど説明したように、OCGとTCGではカードプールやルールが大きく異なるため、「OCGが遊べる」と思って予約購入した人々は全く別物を掴まされたと感じたのである。
YouTube等のコメントでは「発売日の前日になって『実はTCGでした』ってなんですか」と呆れる声が上がり、LotDは「単なるクソゲーではなく、説明していたものと違うものを売ろうとした詐欺案件」とまで評された。
LotDがダウンロード専用ソフトであるため、中古へ売却して損失を減らすこともできなかった点も怒りに油を注いだ。
コナミの謝罪と返金対応

お詫び文の公開
炎上の波を受け、2019年4月24日には商品公式サイトに「収録カード誤表記のお詫び」が掲載された。公式は「本商品の収録カードに関しまして誤表記がございました」と認め、あらかじめダウンロードで購入していた人への対応を検討すると表明している。
この謝罪はLotD公式Twitterでもシェアされ、サポート窓口にも問い合わせが殺到したことが伝えられました。
異例の返金措置
Nintendo Switchのダウンロードソフトは通常、購入後の返金が認められていない。しかし今回の騒動では、コナミは異例の措置を取る。
LotDは海外版ベースであることへの批判を受け、2019年4月24日までに「あらかじめダウンロード」を行った人を対象に返金を希望する場合は受け付けると発表。返金受付期間は2019年5月17日(金)17時までとされ、公式サイトに問い合わせフォームが用意された。
これは当時としては異例の対応であり、某記事では「ちゃんと返金対応するのな、KONAMIらしくない」と驚く声が紹介されている。
掲示板やSNSでは、この返金案内に対してさまざまな反応があった。あるユーザーは「発売と同時にそのアナウンスをしていないのに制限を付けたらそれでまた消費者庁案件だぞ」と指摘し、別のユーザーは「返金に応じ受付期間多めに取ったのは英断だった」と評価していた。
一方で「全額返金か、アプデで色々直す気は無いってことだな キャンセルしようかな」と不安を抱く声もあり、返金騒動がコミュニティに大きな影響を与えたことが伺える。

ちなみに筆者も予約購入したんだけど、特に気にすることもなく発売日当日に普通に遊んでました(笑)
なぜ炎上がここまで広がったのか
説明不足と信頼の失墜

今回の騒動では、発売直前までOCG準拠であるかのように宣伝していたことと、発覚のタイミングがあまりに遅かったことが問題の核心である。
自らもLotDにガッカリしたと語るブログでは、「もし本当に発売日前日に誤表記に気づいたのだとしても、それは公式がOCGとTCGの違いも分かっていなかったことになり、どちらにせよどうしようもない企業態度」だと辛辣に批判している。
また、OCGとTCGの差異はマニアにとって常識である一方、ライトユーザーやシリーズ未経験者にはほとんど知られていない。OCG準拠と思って予約し、いざプレイしてみるとカード名が英語で馴染みのないカードばかり――この落差が炎上を招いた側面もある。
某記事でも「遊戯王プレイヤーからすれば両者はそっくりな別ゲーであると認識されている」と指摘されており、単なる表記違いでは済まない深い溝があった。
ダウンロード専用ソフトのリスク
LotDはパッケージ版が存在せずダウンロード販売専用だった。この形態は中古に売りに出すことができないため、購入後にゲーム内容が期待と違った場合のリスクがプレイヤー側に偏る。
ダウンロード専用ソフトであることも炎上の後押しとなり、ユーザーはより強く返金を求めた。
『忘れられたおもちゃ部屋』の筆者も「売れもしない商品を定価で売りつけられた」と憤り、返金対応を当然だと述べている。
ゲーム内容の評価とアップデート状況
良かった点

騒動の渦中でも、LotD自体に一定の魅力があったのも事実。
某記事の筆者は、ゲームを実際にプレイして感じた良い点として「いきなりガチの六武が組める」「今までのストーリーのおさらいをするには充分なテキスト量」を挙げている。
特定のデッキを作るためのカードが揃いやすく、膨大なテキスト量で歴代シリーズの物語をまとめて追体験できる点はシリーズ初心者にとって魅力的だろう。自分の好きなテーマデッキをすぐに組める楽しさは、デュエルリンクスとは異なる体験だった。
不満点と未改善部分

一方で不満点も多く、某記事では「ボイスなし」「演出が地味」「ムービースキップ不可」「UIが不便」「ストーリーモードの敵が理不尽に強い」といった問題が挙げられている。
某ブログでは、「AIの頭が悪くテンポが悪い」「フリーズが起こる」「誤字脱字が非常に多い」といった技術的な粗さも指摘されており、ゲームとしての完成度の低さも批判の的となった。
こうした欠点を修正するアップデートはほとんど行われず、返金対応が終わるまでに大きな改善は見られなかった。掲示板では「アプデで色々直す気は無いってことだな」「アプデでゲーム全体を倍速にするモード追加してくれればいいのに」といった声があり、今後のアップデートを期待して返金をためらったユーザーもいたようだ。
しかし結果的に、大規模な更新や有料DLCなどのテコ入れは行われず、騒動はプレイヤーの失望とともに収束して行った。

個人的には一人で黙々とカードを集めて、色んなデッキを試して、、、って感じでめちゃくちゃ好きなゲームです!
その後の遊戯王ゲームと教訓
LotDの炎上を受けて、ファンの間では「もう遊戯王のゲームは予約購入しない」といった慎重論が広がりました。その一方で、2021年には『遊戯王マスターデュエル』が無料タイトルとしてリリースされ、遊戯王のデジタルシーンは新たな盛り上がりを見せる。
マスターデュエルは基本プレイ無料で、OCG準拠のデュエルが可能であり、LotDで批判された「TCG準拠」問題をクリアした。LotD炎上は、情報の正確な共有とユーザーとの信頼関係がどれほど大切かをコナミに再認識させたと言えるだろう。
ユーザー側にとっても教訓はある。ダウンロード専用ソフトは返品が難しいため、予約購入をする際は内容を慎重に確認し、場合によっては発売後の評判を待つことも必要。開発側はもちろん、購入者も情報を鵜呑みにしすぎないことが大切だと感じた。

とは言え、公式アナウンスなんだから疑いから入ることってまずないよな!?笑
おわりに
『遊戯王レガシーオブザデュエリスト:リンク・エボリューション』の炎上騒動は、「OCGとTCGの違いを軽視した宣伝」「発売直前の突然の告知」「ダウンロード専用ソフトのリスク」といった要素が重なって起こった。
結果として、コナミは異例の返金対応を行う事態にまで発展しました。炎上後、LotDは配信停止と返金を経て静かに姿を消したが、この出来事は今も「炎上による返金騒動」として語り継がれている。
この記事が、当時の経緯を知らない方にも分かりやすく、そしてシリーズファンにはあの時の記憶を思い出してもらえるきっかけになれば幸いである。
遊戯王というコンテンツがこれからも多くの人に愛され続けるよう、制作側にはユーザーとの信頼関係を大切にした作品づくりを期待したいと思う。
